1回きりの人生なら好きなことをしたいじゃん。という人がいる。

非常にいいと思う。ぜひそうしたい。

好きなことっていろいろあるだろう。おいしいもの食べるとか行ってみたところに行くとか、会いたい人に会うとか、やりたかったことするとか。でもその好きなこともそればっかりだったら飽きてくる。

ケーキが好きだからってケーキばかり食べてられない。たまにはラーメンだって食べたくなる。

好きなことだってやり続けていたら飽きてくるのだ。

だから、何度もやるチャンスのないこと、1回きりのことくらいは好きな様にやりたいと思う。

最大に1回きりとは何だろうか、1度しかなくてもうできないことは何だろうかと考えたら多分「死ぬこと」なんだろうと思う。選べるのであれば、死に方は自分で選びたい。

単純に考えてみると、幸せ度が100あるとして、好きなことを20回やると1回の幸せは「5」になる。でも1回だけやるとその幸せの「100」すべてを享受できるのだ。

季節の中で10月が一番好きだ。空が高く、空気が冷たく、住宅街を歩くとキンモクセイの香りがする。こんなに落ち着ける季節はほかにないだろう。

夏が一番嫌いがだ。夏というか暑いのが嫌いだ。外は落ち着かないしイライラして短気になってしまう。その一番嫌いな暑さに来るのが10月だった。そのギャップにやられた。1番嫌いからの1番好き。しかも快適さってのは体感しないと思い出せない。10月が良いっていうのは覚えているけど、どんなに良かったのかまでは思い出せない。

10月の快適さはあるとき急にやってくる。電車を降りて「あぁ、あの暑いところに出るのか」と駅を出る。が、そこに待っているのはいままでと打って変わって非常に過ごしやすい空気だった。

一気に幸福度が上がる。

あぁあのつらい日々はこの瞬間のためだったのか、とさえ思う。

そんな大好きな10月。どうせ死んでしまうならそんな10月がいい。

好きなことして生きていくのは難しいけど、好きな季節に死ぬ位は選びたい。

できれば孫に囲まれて、穏やかに死んでいきたい。

死ぬまでにやることリストに追加しよう。

終わり