見出し画像

左利きの心臓外科医はとっても苦労しているかもしれないという話

左利きは結構苦労してるかもしれない


 左利きの人は天才とか、計算肌とか言われますが、実際は事故死が圧倒的に多すぎて(右利きの5.3倍)平均寿命が短かっかったりします。命にかかわらない所でも、ご飯を食べるときに隣の人とぶつかったり、改札でSuica出そうと思ったらめちゃくちゃ通しにくかったりして大変ですよね。


  19世紀後半のイタリアで「犯罪学の父」とまで言われたロンブローゾ博士には、『犯罪者には左利きが多い』とまで言われて当時の左利きはさぞ生きるのがつらい世の中だったでしょう。

 かくいう私も左利きなので、Suica×改札君の悪意と、勉強するといつも手が真っ黒になったり、習字の時間は苦虫を噛み潰したような顔をしていました(笑)




左利きの心臓外科医が使う器具、ほとんど右利き用ですよって話。


 今回紹介するのは
Left-handed surgical instruments – a guide for cardiac surgeonsという論文。2016年の論文ですから、比較的新しい論文。

 こちら、左利きの心臓外科医、研修医、補助看護師へ、右利き用器具使用の問題提起と解決法の提示を行っています。まあ文章でみても伝わりにくい所、以下図をご覧ください。

上記は、手術用のハサミの様子ですが、手術用ハサミも普通のハサミと同様、左利きだとかかる力が逆方向なので、左利きの人が持つと、そのハサミの持つ切れ味を十分に発揮する事が出来ません。力を入れるとハサミが開く側に力が入って、うまくモノを切れないんです。


 Needle holders(持針器)についても言及されています。
文字通り、針を保持したまま、縫合や結紮(固定を行うこと)に使う器具なんですが、これもハサミと同様に留め金という、クリップのように保持する部分の位置が逆で、とても使いにくいご様子。



大変なのは、練習が必要な研修医や、掛け持ちの医師。そして・・・患者??

 当然左利き用の器具は、右利き用の器具より高いので、余分なコストがかかります。病院掛け持ちの医師などの為にわざわざ左利きの器具を用意しないところも多く存在しているようで、自腹で買ったり、訓練機関が買ったりしていると論文にはあります。

 また、研修医によっては右利き用の機器しか使えないという状況もザラでしょう。さらに、感染予防の為、機材の持ち込みを禁止するような医療機関も多いとのこと。

 →これはUKの記事でしたが、日本も似たり寄ったりの状況なのでは・・・??知ってる人いたら詳しく教えてほしいです!

 解決策として、『左と右用の機材を切り替えながら使うのでなく、どちらか一方の手を使って訓練すること』などが提案されています。


もちろん、環境が許せば左利き用器具を使うのが一番とありますが!


 さてみなさん、お気づきでしょうが、これが意味するのは、
我々や、我々の家族、大事な友人が、左利きの医師に、不慣れな右利き用の器具で心臓の血管を切ったりとめたりすることは十分あるよ。ということです。(大衆扇動っぽいですが)


 実際には十分な訓練により、多くの医師が右利き用の機材を上手く扱えるようになるのでしょう。私も楽器を演奏しますが、右利き用の楽器しか使ったことはありませんし、右利きの人に利き腕のせいで技術で劣ることはないと思います。

ですから、十分に卓越したスキルを持っている医師の場合は何ら問題ありません。

 一方で、楽器の演奏で人が死ぬことはありませんが、心臓外科手術では人が死ぬことはあります。したがって、機材のようなもので少しでもそのようなリスクが下がるのなら、設備投資をしても良い所ではないかと、個人的には思っています。


 日本の医療機関の状況はわからない上に、とくに告発的な意図でこの記事を書いている訳でもありません。単純に、左利きの外科医さんがいたらフォローしていきたいなぁという思いです。


 左利きでめちゃくちゃ知識豊富な医師の方もいると思うんですが、しっかり投資することで能力を思い切り発揮できるのにもかかわらず、日の当たらない場所だからこそ、無理をして能力を上手く発揮できていない方がいる方がいるのではないかな??と思って記事を書きました。


 こういった医師の抱える細かなフォローもしていけると、我々が患者になった時も嬉しいですし、医師もより余計な負担少なく医療に専念できる所なのでは?と思います。


左利き用手術機材の提供は、
・人材が不足している外科の病院
・訓練始めの研修医
・働き盛りの腕の確かな掛け持ち外科医
いろんなニーズがありそうです。

機会さえあれば、みんなでフォローしていきたいですね♪

引用
Burdett, Clare, et al. "Left-handed surgical instruments–a guide for cardiac surgeons." Journal of cardiothoracic surgery 11.1 (2016): 135.

この記事が参加している募集

買ってよかったもの

私の記事は、ほとんどが無料です。 それは、情報を皆さんに正しく、広く知っていただくため。 質の高い情報発信を続けていけるよう、 サポートで応援をお願いします。