のすたるじー

ノスタルジーが僕らをお金から解放する。

 給料がもっと上がればいいのに、副業が上手くいけばいいのに、お金がもっと欲しいのに。

 みなさん、お金について考えすぎじゃないですか?

 例えば以前、↑のnoteを書きました。

 私たちの給料が上がったとしても、大して幸せにはなれません。むしろ、稼ぎが増えれば増えるほど仕事の時間は増え、休暇の時間が減るので、給料を上げることにあまり意味はありません。

 しかし、私たちはお金が欲しいですよね。お金があったところで、幸せになれるかどうかはわからないにしても、お金があれば『もっと幸せになれるはずだ』という考えを捨てきれるわけじゃありません。

 では、私たちがお金のことを考えすぎてしまうときどうするべきか?

 その答えがノスタルジーという感情の中にあります。


ノスタルジーという美しくはかなき感情とは。

 ノスタルジー:仏語 / ノスタルジア:英語 / 郷愁=日本語

 ノスタルジーとは、時間的に過去の時期や場所、できごとに対する「懐かしい」という感情です。実家や故郷、懐かしの局、古い友人や学校などに接した時に「懐かしいな~」と思うことは誰にでもあります。それがノスタルジーです。

 1688年に概念が確立した時には心の病に位置づけられる感情でしたが、研究が進み19世紀を迎えるときには、慣用句として普通に用いられる言葉になりました。

 ノスタルジーを感じている人は、反社会的行動を減少させ、ボランティアや慈善団体への寄付などを促進することが分かっています。

 ノスタルジーは社会的繋がりを感じさせ、幸せを感じさせる効果がある為、その分お金を使ってモノやサービスを買う必要は無くなる。んじゃ、ノスタルジーによってお金への欲求が減るんじゃね?と研究チームは考え、様々な実験を行いました。


独裁者ゲーム:ノスタルジーは守銭奴になるのを防ぐ

 独裁者ゲームとは、次のようなものです。

1000円をAさんとBさんとで分ける。Aさんは、1000円をどう分けるか一人で決めて、Bさんに分ける。以上。というゲームだ。たとえBさんが拒否しても、Aさんは、自分が決めただけの額を受け取れる。Bさんには、なんの権限もないのだ。匿名で後に出会わないことになっているので、恨みをはらすこともできない。もし、Aさんが合理的な判断をするなら、もちろんBさんに1円も渡さず、1000円をまるどりするのが正しい。ところが、実験をしてみると、Aさんは、平均して、20%の200円をBさんに渡す。
 *https://rakuchin.at.webry.info/201008/article_3.html より

 研究チームは、参加者にノスタルジーを感じてもらった場合、渡すお金の量が増えるのではないか?と考え、64人の参加者を集め独裁者ゲームを行いました。

ノスタルジーを感じた人は、

手持ちのお金を42.6%もあげることにしたのです。

 独裁者ゲームは参加者に絶対の権利があります。お金を多く集めた方が勝ちなんです。1円もあげないのが理屈では正しい。でも嫌われたくないから2~3割を上げちゃう。その気持ちはわかります。でも、『半分近くお金を渡す』っていうのは異常です。

 この実験から、ノスタルジーを感じることで『お金を渡す事への抵抗感が相当減る』ということが分かります。


ノスタルジーは金欲を下げる

 さらに、研究者たちはノスタルジーがお金を渡す事への抵抗感を下げることだけでなく、お金自体が重要な物であるという感覚を減らすのではないか?と考えました。

 100人の参加者を集め、過去のノスタルジー経験について書きだしてもらってノスタルジーの感情を高めてもらった人と普通の人に対して、

「お金はわたしが大切にしていることです」
「人生を最大限に楽しむにはお金が必要です」
「率直に言ってお金を持つことはそれほど重要ではありません」

などの質問をして、金欲をスコア化しました。

ノスタルジーを感じた人は感じなかった人に比べて、

お金への欲求が83%に抑えられました。

 とはいえ、アンケートから分かることなんてたかが知れていると思うかもしれません。もっと直接的に私たちのお金への欲望を示す必要があります。その方法がコインサイズ法です。


コインサイズ法:お金の過大評価を回避するノスタルジー

 コインサイズ法とは、実際にコインを絵にかいてもらってそのサイズを測る方法です。

 貧しい人々はお金を重要だと感じている為、コインサイズは大きく書き、裕福な人ではコインサイズを小さく書くことが分かっています。

 今までの実験から、ノスタルジーを感じた人は金欲が下がるはずですから、コインサイズを小さく書くはずです。研究チームは56人の学生を集めて実験を行いました。

ノスタルジーを感じた人達の書いたコインのサイズは

 50セントコイン:12%小さくなった

 1ドルコイン  :11%小さくなった

 やはり仮説通り、コインのサイズはノスタルジーを感じた人では小さくなりました。

 したがって、研究チームはノスタルジーが金欲を低下させると結論付けています。ノスタルジーには社会的繋がりを感じさせる効果がある為、それによって私たちは充実感を感じます。充実感を感じた時、お金は必ずしも重要ではなくなる。それによって金欲が減るのだと考えられています。


ノスタルジーはとっても大切な感情だった。

 お金は大切です。お金があれば必要なものを簡単に、早く、たくさん手に入れることが出来ます。でも、それは私たちが一人で生きていくときに重要というだけの話です。

 身近な友人や家族がいれば、その人達のサポートを受け、その人たちをサポートすることが出来ます。それによって私たちは充分幸せを感じることが出来るのです。

 社会的な繋がりを感じさせる最たる感情。それがノスタルジーです。ノスタルジーは私たちが一人ではないことを思い出させてくれます。

「人生がお金だけではないこと」

を忘れてしまった時は、ノスタルジーに浸りましょう。


ノスタルジーへの上手な浸り方。

1.音楽

 音楽好きな人には朗報です。10~20代、自分が好きだったあのアーティストの楽曲を聞いたり、ライブを見たりしましょう。それだけでノスタルジーが引き出されることが証明されています。

2.故郷

 お手軽ではないかもしれませんが、故郷から離れている人は実家や思い出の場所に行くことが一番ノスタルジーを想起させるのに効率的です。

3.記述法

 どこでもだれでもできる方法です。5~10分の間で時間を決めて、懐かしい記憶をとにかくたくさん書き出す事を行いましょう。

4.視覚法

 手元にアルバムや過去の写真があれば、それを見返しましょう。10分以上見れば、懐かしの記憶に浸れること間違いなしです。

5.旧来の友人に会う

 昔話に華を咲かせましょう。友人と仲良く話すことは社会的つながりを感じる為の本質的な方法です。一人でできないのでハードルは一番高いかもしれませんが、大きな効果を期待できます。

自分が何のために生きているのか。分からない時の道しるべになるのがノスタルジーという感情です。

皆さんも上手く利用してくださいね!


引用

Lasaleta, Jannine D., Constantine Sedikides, and Kathleen D. Vohs. "Nostalgia weakens the desire for money." Journal of Consumer Research 41.3 (2014): 713-729.

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