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読書の前に

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記事一覧

法人は個人を守らない話 芦原妃名子氏の死について

法人は個人を守らない話 芦原妃名子氏の死について

▼マンガ家の芦原妃名子(あしはらひなこ)氏が2024年1月29日、亡くなったことが報道された。そのニュースを携帯電話で見た時、思わず声を上げてしまった。それまでの経緯も、携帯電話で見ていたからだ。

▼芦原氏は『セクシー田中さん』(小学館)というマンガの原作者であり、先日、日本テレビが2023年10月期の枠でドラマ化した。

▼以下、インターネット内で目にした、価値ある発言を、時系列でメモした。

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SNSと金儲けと編集者と

SNSと金儲けと編集者と

▼2024年1月1日に起きた能登半島の大地震をめぐるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の惨状について。

断続的に旧Twitter(ツイッター、現X(エックス))を見ていたが、ゴミ情報や害悪が急増している。デマの拡散がひどい。災害時にはデマが増える、という法則は正しいと実感した。

▼この状況は、これから災害が起きるたびに、どんどんひどくなるだろう。SNSで人生の時間を無駄遣いしない

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「アマゾン」の「あとで買う」機能がとても便利な話

「アマゾン」の「あとで買う」機能がとても便利な話

▼新刊本を買う時、アマゾンの「あとで買う」機能はとても便利だ。「あとで買う」の一覧が、たとえ100冊を超えても、筆者のデスクトップで閲覧すると、1列に8冊の表紙が並び、次々と眺めることができて、とても一覧性が高い。

▼アマゾンの「この商品を見た後に買っているのは?」機能なども、思いもよらない本が出てきて、面白い。それらのなかで、気になったものを「カート」に入れて、「あとで買う」ボタンを押せば、あ

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日本人は大麻についてよく知らない件(その3)

日本人は大麻についてよく知らない件(その3)

▼大麻について、「精神科治療学」2020年1月号が特集していた。その紹介を続ける。

同誌はバリバリの専門誌だが、前回メモした、その1、その2を読めば、理解不能なことが書いてあるわけではないことがわかる。

要するに、薬物依存の治療の専門家が、「私たちは大麻について知らないことが多い」と明言しているのだ。

▼知らない、ということを知るところから問題の認識が始まるのは、この世を賢く生きていくための

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「神保町ブックフェスティバル」の代わりに小規模のフリマが行われる件

「神保町ブックフェスティバル」の代わりに小規模のフリマが行われる件

▼1カ月以上前、なじみの神保町の古書店主から「今年は神田古本まつりは中止です」と聞かされ、「神保町ブックフェスティバルも中止です」と追い打ちをかけられ、ガッカリしていた。

▼しかし、神保町ブックフェスティバルのほうは、皆無ではなさそうだ。白水社が声をあげた。

「新文化」の2020年10月19日配信の記事から。

〈白水社が2日間にわたる「神保町ブックフリマ」の出展社を募っている。「神保町ブック

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クールジャパンと言うならば(1) 「北斎」を見つけたのは日本人ではない件

▼2020年の前半はコロナ・パンデミック一色で終わった。2020年の後半も、同じだろう。

2021年は、どうだろう。

▼昨年末に出版された、とても価値ある仕事なのに、世情のせいであまり注目されなかった一冊の翻訳書がある。

その本とともに、関連本を2冊、紹介する。

▼まず1冊目。エドモン・ド・ゴンクール著『北斎 十八世紀の日本美術』隠岐由紀子訳、東洋文庫

▼「クールジャパン」という言葉でー

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17歳の藤井聡太氏がいきなり二冠になるかもしれない件

17歳の藤井聡太氏がいきなり二冠になるかもしれない件

▼将棋棋士の藤井聡太氏が、棋聖戦に続き、王位戦でも挑戦者に名乗りを上げた。

〈将棋の藤井七段が王位戦リーグ最終戦に勝利 挑戦者決定戦へ進出〉(東京新聞2020年6月14日 07時09分)

〈将棋の第六十一期王位戦(東京新聞主催)の紅白リーグ最終戦が十三日、東京都渋谷区の将棋会館で六局一斉に指され、白組は藤井聡太七段(17)=写真(右)=が、紅組は永瀬拓矢二冠(27)=同(左)、叡王・王座=がい

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「うわさ」と「インフォデミック」との違いを考える(3)

「うわさ」と「インフォデミック」との違いを考える(3)

▼「情報+伝染」の新語である「インフォデミック」とは具体的に何か。

単なる「うわさ」との違いを踏まえて、松田美佐氏いわく、インフォデミックとは、

1)〈何が「信頼できる情報」なのか、それ自体が争われるような事態〉

であり、

2)〈「信頼できる情報」に対する不信感が増大する状況〉

であり、

3)〈必要な情報が届かないのではなく、届いたとしても、一部の人々には信頼されないという問題なのだ〉

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マスク考(3)~「生活様式」にご用心

マスク考(3)~「生活様式」にご用心

▼前号で、2020年6月1日付の読売新聞に載った斎藤環氏の「コロナ・ピューリタニズム」論を紹介したが、たまたま同じ紙面の下にも、似たテーマのコラムが載っていた。齋藤希史(まれし)氏(東京大教授、中国文学)の連載「翻訳語事情」。

一語ずつ、翻訳語の歴史を解説する、なかなか面白い連載で、この日の翻訳語は

【style▶様式】

〈型にはめようとした歴史 思う〉という見出し。

〈気になるのは、生活

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「アイデンティティー政治」は白人至上主義者の十八番である件

「アイデンティティー政治」は白人至上主義者の十八番である件

▼コロナ・パンデミックの影響で、アメリカでは、トランプ大統領がホワイトハウスの地下壕に一時避難する事態になっている。ウイルスが直接の原因ではない。黒人差別に抗議するデモが大きくなったためだ。

▼まず、概況記事を二つ。

一つは2020年6月1日配信の共同通信。

〈米抗議デモ、各地で暴徒化 首都など40都市で夜間外出禁止〉

〈米中西部ミネソタ州ミネアポリス近郊で黒人男性のジョージ・フロイドさん

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海外ではSNSを殺人の道具として活用している件

海外ではSNSを殺人の道具として活用している件

▼1週間ほど前、「ショー・マスト【ノット】ゴー・オン:日本の「リアリティー・ショー」はタレントを守らない件」と題して、テレビ局はタレントを守らない件をメモした。

▼SNSの誹謗中傷を止める方策は必要だが、誹謗中傷が無くなることはない。取締りをどれだけ厳しくしても、決して無くならない。

そんななかで、「商品」を誹謗中傷の矢面に立たせる、日本のテレビ局の「危機意識の周回遅れ」に疑問を呈する内容だっ

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「丸善」御茶の水店の無料小冊子が面白かった件

「丸善」御茶の水店の無料小冊子が面白かった件

▼先日、「丸善」のお茶の水店に行ったら、入口のレイアウトが変わっていたのと、JR「御茶ノ水」駅の聖橋口(ひじりばしぐち)の位置が変わっていたのでびっくりした。

もう一つ、びっくりしたことがある。入口に置いてあった「最近読んだ本」という無料の小冊子だ。2020年5月号。8ページ立てで、おもに文芸書の感想や内容紹介がまとめてあるのだが、そのなかで、高野和明氏の傑作『ジェノサイド』が、見開き2ページを

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アメリカのあちこちに「反マスク法」という法律がある件(3)

アメリカのあちこちに「反マスク法」という法律がある件(3)

▼アメリカで、どれだけ経っても黒人差別がなくならないのは、人類学的な理由がある、という話について、もう少し続ける。

興味のある人は、前号、前々号もどうぞ。

▼さて、トッド氏の『移民の運命』では、イングランドから輸入された家族システムや、プロテスタントの教義が、アメリカの差異主義と骨絡(ほねがら)みである、という仮説が示される。

いちいち辿(たど)るのは面倒なので、トッド氏本人が簡単に4つの項

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アメリカのあちこちに「反マスク法」という法律がある件(2)

アメリカのあちこちに「反マスク法」という法律がある件(2)

▼先週の金曜日(2020年5月15日)、下高井戸の駅前で中国製のマスクが「50枚入り1500円」で売っていた。

もともと「50枚入り3000円」のものを、タイムセールということで半額にしていたのだが、タイムセールはしばらく続いていた。この数カ月で、マスクの値段が乱高下している。

▼アメリカのあちこちに「反マスク法」という法律がある、というコラムから、トッド氏の『移民の運命』を思い出した話の続き

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