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『「いいね!」戦争』を読む(14) 「確証バイアス」は脳の最悪の衝動の件

▼「インターネットと戦争と生活」について考えさせられる名著『「いいね!」戦争』の第5章「マシンの「声」 真実の報道とバイラルの闘い」は、人間の「」をめぐるネット戦略の中間報告になっている。

▼2019年7月8日現在で、まだカスタマーレビューは0件。0件のまま半月も経つと、なんだか面白くなってきた。

▼前回は、記事が真実であるかどうかは重要ではなく、「なじみがあるかどうか」で判断が分かれる、という、言われてみればそうかもしれないが、衝撃の研究を紹介した。

▼きょうは、これも有名になった術語「確証バイアス」について。一言で要約されている。

人は自分が正しいと思いたがり、間違っているとわかるのを嫌がるのだ。〉(200頁)

ということを、1960年代にイギリスの心理学者が「確証バイアス」と命名して、さらに、心理学者たちは〈相手が間違っていることを示して確証バイアスに反証しようとするのは得てして問題を悪化させることを発見した〉(201頁)。

つまり、最近よく見かけるようになった、〈相手が間違っているという事実を説明すればするほど、相手はますます自分の意見に執着する〉(同頁)という現象である。

▼この「確証バイアス」が広がる論理を、本書は的確に要約している。前回紹介した箇所は、いわば「同類性が広がる論理」だった。今回は、「確証バイアスが広がる論理」として読むことができる。

一部の人にとっては、それのどこが悪いのか、という話なのだが、社会が壊れては困る人にとっては、深刻な問題が進行中だ。筆者も社会が壊れては困る人の一人である。適宜改行。

〈インターネットは脳の最悪の衝動を煽り、それを無数の人間に広めて、このプロセスを過熱させる。

ソーシャルメディアはユーザーを、彼らの見解の一つ一つが広くシェアされるように思える世界にいざなう。

ほかの人間も自分と同じだと思わせる。

いったんグループができれば、同類性の力によって結びつきはさらに緊密になる。(中略)

 インターネットが同類性に拍車を掛け、それが確証バイアスと相まって、市民社会はずたずたに引き裂かれかねない。

各グループが、自分たちのメンバーだけが真実を知っていて、ほかはみんな無知か、それどころか邪悪だとさえ思い込むようになる。

脆弱な国家では、手に負えない状況になりかねない。〉(同頁)

▼シンガー&ブルックス両氏が、この「確証バイアス」の暴力の例として引き合いに出すのは、「アラブの春」の「民主化運動」が、たちまちのうちに「独裁主義に悪用」されてしまった歴史だ。ジョージ・ワシントン大学公共外交・グローバルコミュニケーション研究所が2016年に発表した研究から。

〈(アラブの春の)初期の蜂起後の6300万近いツイッターとフェイスブックの投稿を詳しく調べると、ある傾向が明らかになった。〉(201-202頁)

▼ここらへんで1200字になったので、続きは次号以降。(つづく)

(2019年7月10日)

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