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アニメの「キャラ」が「現実」を反映している件

▼アニメは、こどもの現実を必死に追いかけ、「いま」を映し出そうとする。

2019年3月30日付の東京新聞夕刊1面トップは、

〈キャラ みんな違って、いい〉

〈褐色肌プリキュア・セサミに自閉症少女/子どもの多様性育む〉

という見出しが目を引いた。今川綾音記者。

▼これは、以前メモした〈「男の子だってお姫様になれる!」ーー東京新聞の特集に子ども文化を学ぶ〉と同じ系列のニュースだ。

▼今回の記事は、日本のアニメ業界と絵本業界、アメリカのテレビ業界の動向のスケッチになっている。適宜改行。

まず、2004年に放送開始したアニメ「プリキュア」から2つの事例。

〈今年二月に始まった新シリーズ「スター☆トゥインクルプリキュア」では、外国人の父と日本人の母の間に生まれた褐色の肌の中学生・天宮(あまみや)えれながプリキュアの一人に加わった。テニスの大坂なおみ選手を思わせる運動神経抜群で笑顔が魅力的なキャラだ。〉

▼もうひとつ、こちらのほうが個人的には驚きだった。

〈前作「HUG(はぐ)っと!プリキュア」では、シリーズで初めて男の子のプリキュアが起用され、「男の子だってお姫様になれる!」のせりふが話題になった。〉

▼このセリフに希望を持った視聴者がいると思う。男の子の名前は若宮アンリで、「キュアアンフィニ」に変身する。ちなみに、「HUG(はぐ)っと!プリキュア」は「育児」がテーマで、ブラック企業も登場することで話題になった。

〈国内でも外国にルーツのある子どもが増えている。LGBTなど性的少数者の子への配慮が叫ばれ、女の子らしい服装などジェンダー(社会的性差)にとらわれない育児も注目されている。

今作を制作したABCアニメーション(東京)の田中昂(あきら)プロデューサーは「今の子どもたちが置かれた環境に近いものを描くことが、共感につながる」と狙いを説明する。〉

▼日本の絵本業界では「ろってちゃん」。

〈車椅子の女の子・ろってが主役の「ろってちゃん」(福音館書店)が三年前に約十五年ぶりに復刊。

ろってがボール遊びの仲間に入ろうとすると、友だちは嫌な顔。しかし、素早く動く彼女にみんな感心するようになるストーリーだ。

作者の故ディック・ブルーナさんは、片方の耳が曲がったウサギなど、障害者や見た目の違うキャラクターを多く描いている。〉

▼いっぽうアメリカの「セサミストリート」には、4歳の自閉症の女の子ジュリアちゃんが登場した。

〈人気キャラクターのビッグバードが、話しかけても返事をしないジュリアに戸惑っていると、「ジュリアは自閉症なんだよ。何か聞かれてもすぐには答えられないことがあるんだよ」と仲間が教える場面が印象的だった。〉

▼これらの動向については、「小さい頃は「いろんな人がいるんだ」と知ることが大事」「テレビ番組や絵本で自分と異なる特徴がある子に接することで違和感は低下し、周囲に障害がある人がいても特別視しないようになる」(筑波大学医学医療系教授の徳田克己氏)というコメントが的確だ。

「こども」の常識は、やがて「大人」の常識になるだろう。これらのニュースは、あすの株価には何の影響も与えないが、もしかしたら20年後の株価に多大な影響を与えるかもしれない。どれも素晴らしい企画だと思うし、それらをスケッチするこうした記事は貴重だ。

(2019年4月4日)

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