「保守」いろいろ――沖縄から見える日本

▼先月印象に残った記事の一つに、沖縄県知事在任中に亡くなった翁長雄志氏の息子の、翁長雄治氏へのインタビューがある。現職の那覇市議。2018年12月5日付朝日新聞から。

〈――なぜ、ネトウヨは保守の翁長さんを叩いたのでしょうか。

 米軍基地に反対する人はすべてネトウヨの敵です。でも、ネトウヨは自分の地元に米軍基地ができるのは嫌。おかしいでしょ。ただ、それはネトウヨだけじゃない。保守の人たちも、国を守るために日米安保は大切と言いながら、なぜ本土で基地を受け入れないのかと父が問うたら、みんな黙る。結局、これが本土の保守。

▼故・翁長雄志氏は、かつて沖縄の自民党県連の幹事長をしていた人である。いわば保守の中の保守ともいえる。その人が、普天間にある米軍基地の辺野古移設に反対するようになった経緯を、政治に関心のある本土の人間は、よくよく知らねばならないと思う。

翁長雄治氏の言葉を読むと、「保守」にもピンからキリまであることがわかる。

▼先月、日本政府は、名護市辺野古の沿岸に、アメリカ軍の海兵隊の新しい基地を造るために埋め立て土砂を投入した。2018年12月15日付の琉球新報社説を読むと、この政府の政治判断がどういう文脈に位置づけられているのかがわかる。

〈辺野古へ土砂投入/第4の「琉球処分」強行だ〉

〈歴史的に見れば、軍隊で脅して琉球王国をつぶし、沖縄を「南の関門」と位置付けた1879年の琉球併合(「琉球処分」)とも重なる。日本から切り離し米国統治下に置いた1952年のサンフランシスコ講和条約発効、県民の意に反し広大な米軍基地が残ったままの日本復帰はそれぞれ第2、第3の「琉球処分」と呼ばれてきた。今回は、いわば第4の「琉球処分」の強行である。 歴史から見えるのは、政府が沖縄の人々の意思を尊重せず、「国益」や国策の名の下で沖縄を国防の道具にする手法、いわゆる植民地主義だ。〉

▼ここでいう植民地主義の宗主(そうしゅ)国は日本だ。かつて沖縄は日本ではなかった。「水戸黄門」は沖縄では成り立たない。マスメディアが集中的に取り上げないから気づいていない人が多いが、日本はここ数年、「平成」の時代が終わるに際して、「国家の統合の危機」を迎えている。沖縄から「日本」を見ると、「日本」の素顔が浮き彫りになる。

(2019年1月3日)

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