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終戦記念日の新聞を読む2019(4)毎日新聞「余禄」~アジアから見た日本

「終戦記念日のコラムを読む」は、(1)では特攻した少年と親の物語、(2)では原爆被爆者の一言、いわば「虫の目」で見た戦争を、(3)では気候変動などの「鳥の目」で見た戦争や国家を、取り上げた。

▼今号で取り上げるコラムは、気候変動などと比べたら「低空飛行の鳥」の目で見た戦争かもしれない。

▼「戦争を知らない人間は、半分は子供である」という有名な言葉は、大岡昇平がフィリピン戦線の日本軍を描いた傑作『野火』に出てくる。2019年8月15日付の神戸新聞「正平調」が引用していた。

▼「アジアから見た日本」がどんな国だったのか、毎日新聞「余禄」が簡潔に描いている。適宜改行。

〈戦時中、日本は占領したビルマ(今のミャンマー)で独立運動家バーモウを元首に親日政権を作った。この独立と同盟条約締結にあたり枢密院(すうみついん)で東条英機(とうじょう・ひでき)首相が答弁している

『ビルマ』国は嬰児(えいじ)なり。一から十まで我方の指導の下にあり。……本条約が形式上対等となり居(お)るは『ビルマ』国を抱き込む手なり。……表向きは何処迄(どこまで)も対等とし、自尊心を傷つけざる様計(はから)いたるものなり」。いやはや、みもふたもない物言いとはこのことか

ではバーモウはどう見ていたのか。「日本の軍人たちほど他国人を理解するとか、他国人に自分らの考え方を理解させるとかいう能力を完全に欠如している人々はいない……すべてを日本人の視野においてしか見ることができない

戦後の回想だが、赤ん坊扱いされた方がよほど相手を見ていたようだ〉

▼こうした話は、知っている人はよく知っているが、知らない人は、まったく自分の知的関心の守備範囲にかすりもしないものだ。

アジア、という言葉が占める範囲は広い。たとえば、サッカーのワールドカップアジア予選に参加している国と地域をみてみよう。()内はFIFAでの順位。便宜上、オセアニアの国も入っているが。

まず、1位はイランである。

1: イラン (21)
2: 日本 (26)
3: 韓国 (37)
4: オーストラリア (41)
5: カタール (55)
6: アラブ首長国連邦 (67)
7: サウジアラビア (72)
8: 中国 (74)
9: イラク (76)
10: シリア (83)
11: ウズベキスタン (85)
12: レバノン (86)
13: オマーン (86)
14: キルギス (95)
15: ヨルダン (97)
16: ベトナム (98)
17: パレスチナ (99)
18: インド (101)
19: バーレーン (111)
20: タイ (114)
21: タジキスタン (120)
22: 北朝鮮 (121)
23: フィリピン (124)
24: チャイニーズタイペイ (125)
25: トルクメニスタン (136)
26: ミャンマー (140)
27: 香港 (141)
28: イエメン (146)
29: アフガニスタン (149)
30: モルディブ (151)
31: クウェート (156)
32: インドネシア (159)
33: シンガポール (160)
34: ネパール (161)

35: マレーシア (168)
36: カンボジア (173)
37: マカオ (183)
38: ラオス (184)
39: ブータン (186)
40: モンゴル (187)

41: バングラデシュ (188)
42: グアム (193)
43: ブルネイ (194)
44: 東ティモール (195)
45: パキスタン (200)
46: スリランカ (202)

▼アジアはじつに広範囲にわたることがわかる。

それぞれの国が、かつて戦争において日本とどのような関係にあったのか。「過去」と「今」と「未来」を知るために、新聞で取り上げる価値がある。(つづく)

(2019年8月19日)

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