「民営化」の成れの果てがわかりやすい件 「かんぽ生命」の不正契約

▼「かんぽ生命」が、質量ともにとんでもない不正契約の山を築いていた件で、2019年7月12日付の毎日新聞社説が簡潔にまとめていた。

〈かんぽ生命の不正契約 全ての保険調査が必要だ〉

〈「郵便局なら安心」と考えた顧客は裏切られた思いだろう。日本郵政傘下のかんぽ生命保険と日本郵便が顧客に不利益を与えた不正契約が9万件超にのぼることが判明した。

 保険の乗り換え時に保険料を二重取りしたり、経済合理性のない不利な契約に変更させたりした例が2万8000件近くあった。

 局員から乗り換えを勧められ、旧契約を解約したものの、健康状態などを理由に新契約に入れず、無保険状態になった例も1万8000件超あった。顧客に不利益な契約に乗り換えさせる行為は保険業法違反だ。〉

▼郵便局だから、安心。この先入見につけ込み、局員たちは暴走したようだ。

〈これまで判明した不正は、2014年4月からの5年分にとどまり、全容解明はこれからだ。かんぽ生命は外部有識者による調査の対象範囲を明らかにしていないが、顧客の不安を解消するには、疑いのある全ての保険をチェックする必要がある。

 不正の最大の原因は、かんぽ生命から保険販売を委託された日本郵便のノルマ至上主義だ。年間約3600億円の委託手数料を維持するため、全国約2万の郵便局で新規契約獲得を競わせていた。

 成績優秀者に手当をはずむ一方、成績不振者には研修や顧客の少ない地域への配置換えなどの「ペナルティー」を科していた例もある。

 悪質な保険料の二重取りが横行した背景には、旧契約解除を新契約加入から半年以上遅らせれば、「乗り換え」でなく、手当が多い「新規契約」として扱う評価基準があった。

▼上記のような競争を煽(あお)れば、この体たらくに陥(おちい)るのも必然だろう。とくに〈旧契約解除を新契約加入から半年以上遅らせれば、「乗り換え」でなく、手当が多い「新規契約」として扱う評価基準があった。〉という事実には驚いた。不正をしたほうが、局員の「手当」が増えるわけだ。これでは、わざわざ「不正をしなさいよ」と指示しているようなものではないだろうか。

▼「民営化」には良いところと悪いところがあって、今回は悪いところがモロ出しになってしまった。報道を読むかぎり、良いところであるはずの「サービス向上」のかけらも見当たらない。

年間約3600億円の委託手数料を維持するため、全国約2万の郵便局で新規契約獲得を競わせていた。〉という一文が載っている新聞の紙背に、気が遠くなるような数の不正が隠れているような感じがする。

2014年以降の分でこの惨状だから、郵便局の民営化から10年も経たずに、この「成れの果て」感に行き着いていたことになる。

小泉政権下、国家として「新自由主義」という思想に舵を切った行き着く先が、まかり間違えばどういうものになるのか、一つの形を、誰にでもわかるように示してくれたという意味で、とても価値のある不正だった。

(2019年7月19日)

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