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芸人は、芸が身を助ける件

▼最近話題になっている、日本の芸人の「反社会的勢力」とのつながりについて。

吉本芸人「闇営業」 反社会的勢力かどうか、見極め難しく〉(毎日新聞2019年6月27日)

〈宮迫博之さんらが「闇営業」で処分された問題では、振り込め詐欺グループがパーティーを主催した。中心人物は、表向きは企業経営者を名乗っていたとみられる。反社会的勢力かどうか見極めるのは難しく、警察関係者は「芸能人自身のコンプライアンス(法令順守)意識を高めてもらう必要がある」と指摘する。

 捜査関係者などによると、暴力団員らは有名芸能人を誕生日会や酒席などに呼ぶことで、力を誇示したり自慢したりする狙いがあるという。一方、芸能人側は飲食などの接待を受けたり、仕事につながる人脈を紹介してもらったりするケースもあり、持ちつ持たれつの関係になってしまう危険性が高い。〉

▼先輩芸人が後輩芸人を守らないのがよくない、とか、

吉本の若手のギャラが安すぎる、とか、

「闇営業」をスクープしたメディアは「反社」に金払ったのか、とか、

「闇営業」という言い方がおかしい、とか、

昔は「直(ちょく)」と言っていた、とか、

いろいろな話が思い浮かぶが、筆者は3つのテーマがあると思う。

▼一つ、人としての問題。「お金をもらっていない」というウソを言ったことについて。

▼二つ、「公序良俗」の問題。反社会的勢力とつながりがあったということについて。

▼三つ、芸人であるということ。

▼一つめ。宮迫氏は、最初は「お金をもらっていない」と言っていたが、それがウソだったことがわかった。これは、人としての信頼を失くす。正直に「お金はもらった。でも、振り込め詐欺グループとは知らなった」と言えばよかった。もっとも、「知らなかった」かどうかわからないが。

▼二つめ。振り込め詐欺グループとのつきあいにせよ、ヤクザとのつきあいにせよ、芸人が「公序良俗」に反したら、ものすごい非難の嵐が押し寄せる。

「週刊現代」の2019年7月6日号を読むと、「山口組三代目 田岡一雄の時代」という特集が載っている。

写真が貴重だ。

▼田岡一雄氏と交流のあった人物としては、高倉健氏、美空ひばり氏、力道山氏、勝新太郎氏、鶴田浩二氏、榎本健一氏、田端義夫氏などが有名だ。

田岡氏の葬儀に寄せられた献花には、写真を一目見てはっきりわかる人だけで、以下の人物が名前を連ねている。

田畑義夫氏、三橋美智也氏、村田英雄氏。

北島三郎氏、フランク永井氏。

千昌夫氏、堺正章氏、津田耕次氏。

細川たかし氏、西城秀樹氏、郷ひろみ氏。

都はるみ氏、松山恵子氏、渚ゆう子氏。

小林幸子氏、ジュディ・オング氏、川中(川中美幸氏か?)

片岡秀太郎、高田美和両氏、石野真子氏、高田みずえ氏。

西郷輝彦氏、待田京介氏、品川隆二氏。

▼山口組三代目の葬儀に、これらの錚々(そうそう)たる献花がズラリと並んだのは、1981年。昭和56年のことである。これらの人名の載った写真を眺めていると、たかが40年ほどで、あとかたもなく変化する「公序良俗」という言葉の中身が、いかに流動的な、「いいかげん」なものかがよくわかる。

ここまでで1200字を超えてしまった。

▼三つ。芸人は、芸が命であり、芸が身を助ける。

雨上がり決死隊の両氏には、あの全盛期の抜群に面白いコントの、新ネタを考えてほしい。

公序良俗に反しても、人としてひどいウソをついても、芸人は、そのネタが面白ければ、メシが食える。

ネタが面白ければ、人は寄席に来る。

芸人を助けるのは、芸だけではないが、芸ができない人は、芸人ではない。

(2019年7月8日)

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