動画クリエイターのための法律講座  第1章 はじめに

1 動画をつくる権利

 日本においてインターネットがはじまったのは1984年です。そして、2000年前後から一般人の間にもインターネットが普及しはじめました。今では、多くの方がPCやスマートフォンを通じて、インターネットを日々利用しながら暮らしています。
 実は動画はインターネットがはじまる前から視聴されていました。それは、みなさんおなじみのTV番組です。日本でTV放送がはじまったのは1953年です。それ以来、私たちはTV番組を通じて動画に慣れ親しんできました。
 今は、TV放送会社でなくても、個人で手軽に動画をつくることができる時代です。実際にも、たくさんの方が日々動画をつくって公開しています。それでは、動画をつくって公開することは、法律で認められていることなのでしょうか。
 実は、動画をつくることやつくった動画を公開することは憲法上の保障を受けます。次の条文をみてください。

日本国憲法
(集会・結社・表現の自由、通信の秘密)
第21条1項 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

 つまり、動画をつくることやつくった動画を公開することは表現活動の一つであって、憲法の表現の自由によって保障されているのです。ただし、憲法が保障するのは基本的には「国(国家権力)によって邪魔されませんよ」ということであって、他の人から邪魔されませんよといったことを内容としているわけではありません。
 ほかにも、つくった動画には著作権が発生します。これにより、たとえば自分の動画を無断転載された場合には、転載者に対して損害賠償等の請求をすることができます。

2 どんな動画でもいいの?

 動画をつくる権利についてお話をしましたが、どんな動画でもいいというわけではありません。私たちの権利は「公共の福祉」に反しない限りで認められているのです。

日本国憲法
(自由・権利の保持の責任とその濫用の禁止)
第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
(個人の尊重・幸福追求権・公共の福祉)
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 少々わかりづらいですね。たとえば、他人を誹謗中傷する動画をつくると、名誉毀損罪(刑法230条1項)となって刑務所に入らなければならなくなることもあります。そうすると、他人を誹謗中傷する動画をつくれないので、自由に動画をつくる権利を国によって侵害されているとお考えになるかもしれません。しかし、名誉権というものも権利として認められているので、表現の自由といえども他人の名誉を侵害してはいけないのです。大ざっぱにいえば、「他人の権利を侵害しない範囲で自由にしていいですよ」というルールを「公共の福祉」と呼んでいます。
 大事なのでもう一度言いますが、私たちの権利は「公共の福祉」に反しない限りで認められています。私たちがつくる動画が他人の権利を侵害するものであってはならないのです。

3 この本の目的

 公開した動画が他人の権利を侵害するような場合、様々な法的リスクにさらされます。刑事責任を問われ刑務所に入らなければならなくなることもあれば、民事責任を問われ多額ののお金を支払わなければならなくこともあります。そればかりではなく、法律違反の事実が知れ渡ることによって炎上し、最悪の場合、活動の休止や停止に追い込まれることもあります。
 この本は、動画クリエイターが気をつけるべき法律を解説することで、各クリエイターが上記のような法的リスクを未然に回避し、よりよい動画コンテンツを生み出していただくための一助となることを目的としています。より多くの動画クリエイターがこの本を手にとり、動画をつくる際に役立てていただければ幸いです。

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久保田康介

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