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僕はおまえが、すきゾ!(27)

凄まじい雨音で、目が覚めた。寝ぼけ眼の僕に、階下から母の僕を呼ぶ声が朧気ながら聞こえて来た。もう朝ではなく昼間に近い時間だった。僕は今日の古賀さんの画策したダブルデートのお陰で、午前3:00程まで起きていたんだっけ。
階段を上がる足音がして、部屋のドアが
開いた。
「優作君たち、来てるわよ!」母はまだベッドで横たえている僕に向かって、大声で言った。
寝ている時も付けっぱなしのカシオの腕時計は、午前10時半を示していた。
「ちょっと待って貰ってて!」
僕は急いでベッドから跳ね起き、ボタンシャツの寝間着をボタンを外さずに器用に脱ぎ、ズボンをスルリと脱ぎ、佐々木さんの選んでくれた黒のTシャツを着て、ジーパンを履いた。
「今、起きたのかよ」
開いた部屋のドアのところには、優作が立っていた。その後ろには、古賀さんが優作の後ろに隠れるようにして、立っていた。僕はジーパンのチャックを素早く上げて、怒鳴った。
「げ、玄関で待ってろよ!」
ああ、すまんと優作は気持ちの入っていない声で謝った。
古賀さんの後ろには、もう一人の女性が立っていた。
古賀さんの友達の油科さんだった。油科さんは申し訳なさそうにペコリと僕にお辞儀をした。
それから10分後、僕達は傘を差して、玄関の外に出ていた。
色とりどりの傘が四つ咲いていた。
「車じゃないのかよ」
「ああ、今日、親父、急に出掛ける用事が出来てさ」
優作はまた心の込もっていない声で、僕に謝った。
「今日は、映画辞めて、お前の家で遊ぼうよ」
高校時代、優作と二人で僕の家でよく遊んだ事を思い出した。
優作は、僕に聞くより先に、古賀さんに同意を求めた。
「な、いいだろ?な?」その後に僕に半ば強制的な物言いで、前のめりに僕に迫った。僕はこの雨の中、歩き回るのが嫌と言う気持ちが先行して、不本意ながら、優作の提案を飲んだ。

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