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脚本『佐賀の夜の夢』

   SAGAアリーナ県民ミュージカル 旗揚げ公演台本

 佐賀の夜の夢

原作:ウイリアム・シェイクスピア
脚本:谷口文章

「佐賀の夜の夢」登場人物


■鍋島直正・・・佐賀藩第10代藩主。17歳で藩主になり、藩政改革を行い、佐賀藩を日本で1.2を争う科学技術の先進的な藩に作り上げる。佐賀の八賢人の一人。妻は、徳川家斉の娘盛姫。

■古川松根・・・鍋島直正が生まれる前年に、直正校と同じ江戸の佐賀藩邸で生まれた。そのため、直正とは幼少期よりの遊び相手であり、直正が心を許し本音を語ることができる唯一の家臣。直正が病死したときは、松根も後を追って殉死した。

■盛姫・・・第十一代徳川将軍、徳川家斉の娘。実は鍋島直正より3歳年上だが、劇中ではそこは伏せてある。決して不美人ではないと思われるが、盛姫の写真や肖像画が資料にないと言うことは、美人でもなかったのでは?と推察される。気位は高いが、直正にぞっこんな姫様。気位が高いため、切れると豪快になる一面もある。

■徳川家斉・・・徳川家第十一代将軍。娘を愛し、忍びの頭である服部半蔵の直属の上司でもある。五十四歳。

■服部半蔵・・・忍びの頭。妖怪世界とも通じており、妖怪の頭「ぬらりひょん」とは互いに同盟関係にある。年齢不詳四十歳くらいか。

■ぬらりひょん・・・妖怪の頭。妻に雪女を持つ。あらゆる妖術を使う。劇中では、自分の姿を消したり、水晶玉を使って様子を見たり、結界を張って城下から出られなくしたり、月明かりを消したりするなどマルチに妖術を使う。服部半蔵とは、相互の利益を与える関係なので、仲がよい。年齢不詳見た目は五十~六十代か?

■雪女・・・ぬらりひょんの妻であるが、養子に迎えた中国の化け猫「金華猫(きんかびょう)に入れあげており、そのことが夫のぬらりひょんの機嫌を悪くし、夫婦仲はよくない。ぬらりひょんの妖術によって、人間の副島種臣を一時的に好きになってしまう。雪の精を付き人にしている。その後ぬらりひょんとは、金華猫の結婚を機に和解する。年齢不詳見た目は二十代半ば~三十代後半か?

■ミヤ・・・佐賀の化け猫妖怪の末裔。今は佐賀の化け猫アイドルとして活躍している。ご先祖様がやったことがあることを見込まれ、鍋島直正に取り憑き、直正を骨抜きにした後、盛姫に直正の心を向けさせる役目をおうが、逆に直正を好きになってしまい、直正と駆け落ちしてしまう。最後は、同じ化け猫族の金華猫と結ばれ、結婚する。実年齢は400歳だが、見た目は十代後半から二十代。

■金華猫(きんかびょう)・・・中国から来た化け猫族。これと言った妖術を使わないが、見た目は若い。十代~二十代。中国語しか話せないが同じ猫族のミヤとは話ができる。

■パッカ・・・いたずら大好きなカッパの妖精。劇中の一番のキーマン。可愛らしくもありちょっぴりおドジ。愛されキャラ。すばしっこく、人の目には見えない。中性的で十歳未満から十代の見た目。

■雪の精・・・雪女の付き人。歌や踊りで、雪女や雪女の客人を楽しませる。

■枝吉神陽・・・佐賀藩士の先生。殿の結婚式の余興では、ビリ太の先生を演じる。

■大隈重信・・・佐賀藩士。一番年下だが、頭がよい。殿の結婚式の余興では、何をやらせてもだめな、ビリ太を演じる。

■副島種臣・・・佐賀藩士。頭がよい。殿の結婚式の余興では、何をやらせてもだめなビリ太を助ける「どえらいもん」演じる。パッカのいたずらで、雪女から一時愛されてしまう。

■大木喬任・・・佐賀藩士。一番けんかが強い。殿の結婚式の余興では、ビリ太をいじめる「邪意者」を演じる。

■江藤新平・・・佐賀藩士。一番貧乏だが、頭がよい。殿の結婚式の余興では、ビリ太を邪意者と一緒になっていじめる「すね吉」を演じる。

■島義勇・・・佐賀藩士。一番毛深い。殿の結婚式の余興では、女の子「お静ちゃん」を演じる。

■家臣・・・堂々と殿に仕える。


プロローグ

(妖精パッカ舞台に浮かび上がる。)

パッカ    私は夜の住人カッパの妖精パッカと申します。今からご覧に入れる物語は、少々馬鹿馬鹿しくもございますが、おつきあいいただければ幸いでございます。さて、皆様は恋に落ちたことはございますか?このパッカ、妖精故にその気持ちは分かりかねますが、何でも「恋とは唐突で理不尽なもの」だとか・・?さて、舞台は佐賀城下。時は幕末の頃。まだ妖怪たちが堂々と夜の城下を闊歩していた頃でございます。「佐賀の夜の夢」開幕でございます〜!!

(オープニングの歌と踊り。大いに盛り上がり、それが静まった頃、二人の男が現れる。)

第1幕 第1場

(佐賀城内大広間。座っているのは、佐賀藩第10代藩主鍋島直正。何やら困った顔をしている。)

古川松根   殿。古川松根参りました。

鍋島直正   松根か・・・入れ。

古川松根   はは。失礼します。

鍋島直正   何の用じゃ?

古川松根   殿、何の用じゃとは、しらばっくれるのもいい加減にしてください。あと1月で徳川将軍家の娘であられる盛姫様との結婚式ですよ。あちらからは、「姫にたいして手紙の一つもない。殿のお気持ちが分からん。一体全体盛姫のことをどう思っておられるのじゃ?結婚する気が無いのなら、そう伝えてほしい。」と、毎日のように苦情の手紙が来ているのですよ。

鍋島直正   松根よ。

古川松根   は。

鍋島直正   正解。

古川松根   は?

鍋島直正   結婚したくない。

古川松根   ちょっと!何言い出すんです?殿がこの話をけったら、将軍家を敵に回すことになりますよ!それに、この結婚は殿だけの問題ではないのです。先代の殿がおつくりになった借金の山で、我が佐賀藩は財政がひっ迫しています。このままでは、佐賀藩が潰れてしまいますよ。ここで盛姫様と結婚すれば・・・

鍋島直正   徳川家の後ろ盾もあり、佐賀藩は潰れずに済むと言いたいのだろう?

古川松根   ・・・そうです。その通りです。

鍋島直正   それってさあ、不純じゃない?そのさあ盛姫って子と見たこともあったこともないんだよ。結婚するかしないかどうやって判断するのよ?

古川松根   え?

鍋島直正   で、そんな中で結婚すんの?それってさあ、政略結婚じゃん。金目当ての結婚じゃん。

古川松根   ・・・・そうですよ!!!

鍋島直正   は?

古川松根   いいじゃないですか!政略結婚!!大いに結構!!いいですか?あなたは殿さまなの!!佐賀藩第10代藩主鍋島直正なの!!あなたの判断で佐賀の民が生きるか死ぬかかかっているんですよ!!あなたの代で佐賀藩を潰していいんですか?あなたが黙っ〜て「盛姫様!愛してるぜ!!ベイベー!!」っていえばすべてうまくいくの!!変な理屈こねてる暇なんてないの!!取りあえず、会ったこともない人だけど、「結婚しようよ〜う〜う〜??」って歌を詠むか手紙を書いたらいいの!!

鍋島直正   お前、言ってること結構大胆だぞ。

古川松根   いいですか?殿と私は、共に江戸の佐賀藩邸で生まれ育ち、年も1つしか違わないし、まるで兄弟のように育ってきました。直ちゃん松ちゃんの間柄ですよ。でもね、大人になってからは周りの目もあって、ちゃ〜んと殿と家臣ってわきまえていますよ。でも今の、この二人っきりの状況で、佐賀の運命を分ける決断の時だからこそ、ぶっちゃけの本音を言ってるわけですよ!!

鍋島直正   じゃあさ!お前が私だったら、結婚するわけ?

古川松根   即答でイエス!!

鍋島直正   まじかよ?

古川松根   まじです!大体、殿はここに(背後の掛け軸を指して)「先憂後楽」「天下の先に之を憂い、民が楽しんだ後に之を楽しむ」って、偉そうに書いてるじゃないですか。

鍋島直正   だから、それは建前で・・・

古川松根   建前大事!!建前で人は生きてるの!!だから、ね!殿、早速手紙書いて先方を喜ばせてあげましょうよ。何だったら私が手紙の部分書いておきますから。最後にチャチャッとサインだけすればいいですから。ね!そうしましょ?いいんですよ!!結婚なんて、大体勢いとその場のノリですって!結婚して、やることやって、それでそのうち好きになるんですよ!!大丈夫!一瞬だけ自分を押し殺せばすべてうまくいくんです!!そうすれば佐賀を救った名君になれますから!ね!!

鍋島直正   お前さらっと無茶苦茶言ってるぞ。

古川松根   無茶苦茶!?上等です!!人生のほとんどは無茶苦茶でできています!!細かいことは気にしない、気にしない!では、手紙の準備をしてきますね。(去る)

鍋島直正   はあ・・・なんだかなあ・・・気が乗らないなあ・・・。(去る)


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