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布ちゃん「お笑いサークルに入ってる時点で、人は全員面白いという考えなんですよ。」

布ちゃん 上智大学お笑いサークルSCS
上智大社会福祉学科4年 



入部当初のお話

ーー自己紹介からお願いします。
布ちゃん 上智お笑いサークル4年の布ちゃんです。
ーーSCSに入ったきっかけを教えてください。
布ちゃん(高3の)9月ぐらいに上智入るのが推薦で決まってて…、そもそも僕はスポーツができないし、楽器とかもやってなかったので、それでサークル入るってなったらお笑いぐらいしかないなって思ったんですよ。別に趣味も無いので。あとラランドさんがM−1で準決勝ぐらいまで行ってて、SCSが有名だったってのもあったので。
ーー最初はどんなネタをしていましたか?
布ちゃん 最初は爆笑問題さんみたいな時事漫才をやりたくて。車椅子とか全く使ってない漫才をやってました。桜を見る会とか、そんな時事のワードを入れてやってました。
ーー相方はどう選びました?
布ちゃん 僕がコンビ決め会に行けなくて。そのせいで空いてる子がいなくて。僕、出身が長崎なんですけど、同じ学科の長崎出身の子がSCSに入って、その子が「私と組もう」って言ってくれて組みました。
ーーでは、最初はコンビでやりたいなと思ってました?
布ちゃん あ〜、でも最初からピンでやるのってハードル高くないですか?あと、お笑いの花形として漫才がカッコイイのかなと言うのがあったので、最初は組んでやりました。
ーーでは、どれぐらいからピンを?
布ちゃん 1年の学生R-1で一回やって。でも当時は予選が配信だったので。ちゃんと人前でやったのは1月とかです。
ーー実際に車椅子をお笑いに使ったのはいつぐらいから?
布ちゃん ピンを始めてからですね。本当は車椅子を使いたくなくて。自分の面白さが評価されてないんじゃないかというのがあったので、車椅子を使いたくなかったんですけど、ウケなくて。ネタ見せとかやっても先輩達に「もっと車椅子を使ったことをやった方がいい」と言われることが多かったので、そっちにシフトしていきました。
ーー同期も同じような意見で?
布ちゃん 同期のスタッフさん達は僕達じゃないほうを評価してました。車椅子でやってるというのを一個何かに乗っかってる様にとらえられてると思うので、普通のコント漫才やしゃべくり漫才をやってる人達の方が評価されてました。

【福祉学科の授業がよく行われる館でお話しして下さいました。(取材が行われたのが6月なので半袖です)】

車椅子ネタがウケるまで

ーー布ちゃん的には車椅子をお笑いに使うのはどんな気持ちですか?
布ちゃん 最初は「自分のやりたいことじゃないな」っていうのがあったんですけど、途中からこういう障碍の当事者もいるっていうのを提示する手段としてお笑いを用いるという考え方に変えたので、それなら車椅子でもいいかというところと、ウケ始めて少しずつ成績が出るようになって。ある意味僕自身は障碍を悲観的に捉えてたので、それを「見せ方次第でプラスに変えられるのか」という感じです。でも、同期は「車椅子はズルい」って言ってました。
ーー最初は逆風のようなものを感じましたか?
布ちゃん やっぱウケづらかったんですよ。アンケートとかも「笑いづらい」「勉強になった」とかが多くて。MCも「勉強になりましたね」「こういう考え方あるんですね」とか。違うなぁって。それでやってる訳じゃないんですけどね。
ーー車椅子とは別に布ちゃん自身のオラつくキャラもありますが、最初からあのキャラでやってたんですか?
布ちゃん 最初、鬼瓦っていうコンビをやってたときは、僕はメガネで冴えない感じだったので、むしろモテないとか童貞みたいな部分のほうが出しやすかったんですが、そこからあのキャラ(車椅子)を考えてやっていった感じですね。
ーー最初にこのスタイルでウケたなと思ったのはいつですか?
布ちゃん 1月の『みんなのペチカ』ですね。めちゃくちゃウケて。俺スナさんがツイートしたんですよ。

ーーその時はどんなネタで?
布ちゃん 乙武さんのオファーが自分に届いて、その中で大喜利しするネタで。最後に急に「AV見たくなってきた」って言って車椅子でシコるボケがあるんですけど、そこが死ぬほどウケました。
ーー今は車椅子漫談が多い気がするんですけど、一人コントから漫談に切り替えるきっかけとかはあったんですか?
布ちゃん 本当はどちらかというとコントが好きなんですよ。でも3年の8月の芸会のときに、『芸会直前ライブ』があって、そこでみんなから「お前は上がれるよ」って言われて挑んだネタが本番では(得票率)20%ぐらいで…。こっちは「上がれる」と思ってるし、自分は自分のネタを面白いと思ってやってるタイプなので、これで上がれないならコントじゃ駄目なんだと思って。漫談は先輩のほっぺぱんがやってて馴染みがあったし、いつかの『花編』(定期ライブ)で本当にネタができなくて舞台の30分前ぐらいに作った漫談でウケた時があったんですよ。自分は漫談ができないこともないんだろうなと思ってたので、漫談にしました。
ーー学生R-1も漫談で上がってましたよね?
布ちゃん そうです。あの日も本当にネタができなくて。本当にできないんですよ。前日の夜から当日の朝にできたネタでたまたま上がって。
ーーそれこそネタ作りはどういう風に?
布ちゃん メモしてるときも稀にあるんですけど、大体はゼロからのスタートで。ネタ作ろうって思ってからゼロから出して。大体相談相手がいて、SCSの二五十ってやつがいるんですけど、その子と相談して作ってますね。
ーーではわりと、やりたいことをやってるというよりは、客観的に自分のキャラを見てる感じですか?
布ちゃん それもあると思います。学年が上がるに連れて、自分がやりたいことをやってるのもあるんですけど、「こうしたほうがウケる」の割合も段々高くなっていってますね。
ーー布ちゃんのやりたいお笑いってどのようなものですか?
布ちゃん 2年生のNOROSHIでやったネタで、「車椅子の女はブスしかいない」っていうボケがあるんですけど、そういうのめちゃくちゃ好きなんです。NOROSHIではめちゃくちゃ滑ったんですけど、そういうことをやりたいですね。僕…、良くない人なんです。自分自身、他の障碍がある人を差別してて…。小中高、特別支援学校じゃなくて普通学校で来たんですよ。だから、周りも障碍がない人がいっぱいいて。自分は「他の障碍がある人とは違うぞ」って。上とか下とか無いんですけど、「こいつらとは違うぞ」って思って、むしろ健常者に近い捉え方を自分は持ってるので。
ーーちなみに他の障碍を持ってる人と比較した優位性ってどこから感じたんですか?
布ちゃん 僕、健常者と同じ暮らしに近い暮らしをしてきたんですよ。障碍を持ってる人が見る障碍の当事者への価値観だけじゃなく、障碍を持ってない普通の人が見る当事者への価値観みたいなものを持ってると思います。

布ちゃんだからこそのお笑いを選んだ理由

ーー布ちゃんが今の毒っ気のある性格になった由来とかはありますか?
布ちゃん 人から良く見られたいというのは自分の根本にあって。親が歯医者と医者なんですよ。家自体が勉強させられる家で、なんでも一番になりたいというか、主人公になりたいという気持ちが強くて。体育祭でも障碍があるから何もできないんですけど、ダンスで真ん中にいるとか。写真撮影の時も陽キャのトップじゃないのに「じゃ、真ん中ね」ってなって真ん中になるとかが多かったんですよ。「主人公でありたい」っていうのが強いんで、相手を見下したいというところがあるのかもしれないです。
ーーSCSのインタビュー記事だと布ちゃんは自分のことを「陰キャ」と言っていましたが、根本には目立ちたい欲が?
布ちゃん ありますあります。陰キャなのに、高校の文化祭の実行委員長だったんです。陰キャなのに目立ちたがり屋だったんです。珍しく。社交性があるとかでは無いんです。ただ、目立ちたい。ただ、主人公でありたいという気持ちがあります。負けず嫌い。
ーーそういう気持ちはお笑いやる前はどのように消化してました?
布ちゃん お笑いやる前は本当になくて。勉強もセンスがあるじゃないですか。努力量で勝てるものじゃなくて。途中まで僕は勉強できる方だと思ってたんですけど、めちゃくちゃ勉強しても目の前の人に数学が勝てなかったとかあったので。努力量じゃ勝てない分野なんだってのがあって、じゃあ勉強は無理だ、スポーツもできない、絵も上手くない、ってなったときに、努力量で戦えるものがあまり人生に無くて。でもお笑いはハイマンとかもありますけど、基本ゼロからのスタートじゃないですか。これで負けたら自分の能力の問題だなと思えるので、だからお笑いを選んだってのはあるかもしれないですね。
ーー何かしらで勝ちたいという中でお笑いを選んだということでしょうか?
布ちゃん そうですね。障碍者であるという劣等感を他の人より自分自身が一番持っていて。障碍以外の何かで自分が上に立たないといけないというのが強いかもしれないですね。
ーーとなると、布ちゃんがする強気の発言と、障碍者である劣等感っていうのは相反するものではない?
布ちゃん 自分の面白さと障碍は関係ないと思ってるので、そこは別にないですね。障碍だから面白いというよりは、自分が考えたお笑いだから面白いと思われてると思うので。

【SCSの部室にも案内して下さいました!物が多い...!!】

熱い男、布ちゃん

ーー布ちゃんってSCS内だとどのような先輩なのですか?
布ちゃん 馬鹿って言われますね。僕、知識無いんですよ。上智も推薦で入ってて、本当に勉強してなくて。みんなが思うほど勉強してなくて、知識がなくて。たまに会話についていけないんですよ。言葉とかも知らないし。
ーー覚えてるエピソードとかありますか?
布ちゃん 『すずめの戸締まり』を見たときに、本当にストーリーが理解できなくて。本当に意味わかんなくて。「馬鹿だねー」って言われます。SCSで一番学力無いと思います。小学校の頃も頭が良いと思われたいだけで、ハリーポッターの分厚い本を読んでるフリしてました。
ーーそれは大学の授業で支障が出ないんですか?
布ちゃん 本当に出ますよ。うちの学科は社会福祉で、出席してリアクションペーパー書けばいける学部だったので大丈夫だったんですけど、試験とかあったら終わってました。一回、SCSの尾崎(ツクヨミ)と同じ社会福祉の授業取ってて、僕は何も理解できなくて、尾崎は文学部なのに理解してるんですよ。課題も向こうに全部教えてもらいました。僕が、上智を下げてるんですよ。上智の偏差値を。
ーーSCS内ではお笑いの面で相談とかされる先輩ですか?
布ちゃん されますされます。僕が1年生の頃はコロナだったんですけど、SCS自体がエントリーのライブにあまり出ないサークルで、僕だけがガクコメとかペチカに出まくってて。でも僕はSCSをネタで評価されるサークルにしたかったんですよ。そしたら先輩に「お前がサークルをLUDOにしようとしてる」って言われて。同期でも僕は浮いてて、「お前が辞めたら良いんじゃない?」とか言われてました。同期はどっちかというとみんなで遊びに行ったりとか、サークルの部分が強かったんですけど、僕だけが「なんでお笑いやんないんだよ!」って感じだったので、浮いてましたね。
ーーみんなで頑張っていきたいモチベは最初からあったんですね。
布ちゃん どちらかと言うと引っ張っていきたいタイプで。主人公として組織を変えたいというタイプで。サークル自体が面白くないと、自分が面白くなるのも難しくなっちゃうんじゃないかっていうタイプだったので。組織をもっと変えたいっていう人なんです。
ーー今のSCSは布ちゃんについてきてる感じはありますか?
布ちゃん 僕が変えたとかじゃないですけど今は結構ライブとかに出るようになって、ネタもどんどんやる様になってるのは良かったなと思います。
ーーでは反対にサークルサークルしてる部分は「あんまり…」だったり?
布ちゃん 僕は馴染めないから苦手なんです。男女でどうのこうの遊びに行くとか。ほとんど喋らなかった時とかありましたもん。でも、飲み会の主催は結局自分でメンバーを集められるじゃないですか。SCSって主催が盛り上げないといけないって文化があるんですよ。飲み会が面白くなかったら、「お前の飲み会は面白くなかったんだろ」って言われる文化が根強くて。そこはスイッチ入れられるんですよね(笑)。

とにかく主人公でありたい

ーー布ちゃんの大学お笑いでの目標とかはありますか?
布ちゃん 結局主人公になりたいんですよ。芸会とかNOROSHIも当然1位になりたいし、全部の大会で1位取りたいぐらいですね。一番ライブに呼ばれたいし。何を持って主人公とするかによるんですけど。
ーーそれでいうと、現状の大学お笑い生活での自分の満足度はどれぐらいですか?
布ちゃん いや、もう、10パー!10もいってないかも。自分では全然結果出てないなと思ってるので。
ーー布ちゃんの芸風的に比較しやすいライバルはいない中で、そういう意識を持ってる人とかはいますか?
布ちゃん 僕は結構最初の方からライブに出てたので、照山とか、惹女とか、初期の『風神』(同期ライブ)からいるメンバーには負けたくないという思いはありますね。
ーー逆に憧れの人はいますか?
布ちゃん 平場とかはAKIRAさんが本当に凄いなって思ってます。大学お笑いに平場っていう考えが無かった中で、それを取り出して、最後にラーで出てるのは凄いと思います。ネタは清水駿平さんが本当に憧れで、居るだけでワクワク感が違うなって思っていて。漫談って、ワクワク感が無いんですよ。舞台に立つだけじゃ面白くないじゃないですか。本当はコントがやりたいですね…。本当に。
ーー布ちゃんは平場も大事にされてる気がするですけど、そういう意識はありますか?
布ちゃん そうですね。出る場では一番ウケてたいし、主人公でありたいし、一番真ん中でありたいし、一番ツイートもされてたいし。その場に出るんであれば一番でありたいです。大喜利でもなんでも。

好きな芸人

ーー好きな学生芸人はいますか?
布ちゃん OBならほっぺぱん、AKIRAさん、清水駿平さん、あなごんち。あと、去年の福来るさん。ああいう感情を動かすコントがしたいです。あれはもう感動しました。現役だと、細野マシマシ(IOK)、二五十(SCS)、うんちょこまかさーかす(SCS)。大将(DONPAPA)が面白過ぎる。大将は地元が長崎県で一緒なんですけど、「こんな面白い生き物が生まれるのか」って。
ーー好きな芸人の共通項とかありますか?
布ちゃん 自分にしかできないお笑いをやってる人が結局好きですね。この人じゃなくてもいいなと思えるネタとかよりは、「この人だからやってるんだろうな、こういう特殊な考えを持ってる人なんだろうな」と思えるネタをする人が好きですね。
ーープロでもそういう人が好きですか?
布ちゃん そうですね。バカリズムさんとか、ルシファー吉岡さんとか、この人にしかできないネタをやってる人が好きですね。
ーー普段どれぐらいお笑いを見ますか?
布ちゃん 本当に元々お笑いをめちゃくちゃ見る人ではなくて、大学二年とかまではそんなにちゃんと見なかったんですけど、三年ぐらいから「お笑い見てないなあ」と思うことが多くなって。お笑いサークルなんで、会話の中でも共通項でお笑いの話をすることが多いので、その中でついていけないことが多くなって、「見ないとなぁ」と思ってYouTubeとかで結構見てますね。
ーーでは、俗に言うお笑いオタクではなかった?
布ちゃん 全然ないですね。今でも全然お笑い見てないなぁと思ってます。お笑いサークル入ってからのほうがお笑い好きになりましたね。

真似ができない人生体験からネタを生む

ーー布ちゃん的にお笑いは何が出来る場所だと思いますか?
布ちゃん やっぱマイナスというものをプラスに見せられる場所だと思ってて。障碍者というのも、社会的に見たらマイナスとされてるんですけど、「車椅子はズルい」と言われるぐらい、見せ方次第で唯一無二のものにできるのは、お笑いという表現方法だからこそなのかなと思います。
ーー元々布ちゃんは自分の障碍をプラスにできればと思ってたんですか?
布ちゃん 実は、小学生の頃とかも“車椅子イジり”、“車椅子返し”をしてこなかったんですよ。大学に入って初めて、「靴綺麗だね」→「歩けないからね」みたいな返しを初めて経験してるので。
ーー逆に車椅子がお笑いやる上で壁になったことはありますか?
布ちゃん 僕、大声出せないんですよ。多分体の問題だと思うんですけど。あと横に動けない。コント漫才で自分がボケをやるってなったときも、自分が色んな役を演じるのが難しいんですよ。あと、普通のネタを真似できない。テンプレとされてるフォーマットを真似するのが難しいので、どうにかゼロから生み出さないといけないというか。
ーー人の真似が出来ない中で、車椅子の電子音で笑わせるみたいなお笑いとかは、どうやって生み出したんですか?
布ちゃん 中学生の時とかに、車椅子のクラクションのボタンを連打されるみたいな経験があって、それをみんな「すげえ」って感覚でやってて、それを「面白い」とは思わなかったんですけど、お笑いをやる中で自分にとってクラクションは変なことじゃないけど、他の人には無いことだと思って、そういう経験からネタを作ったりはしましたね。
ーー他に経験則から生まれたネタはなんかありますか?
布ちゃん 夢精するネタがあって。「夢精しちゃった」って言って自分の股間を確認して暗転するっていうネタがあるんですけど。普通の人と違って、僕が夢精したら自分で処理できないんですよ。親を呼ぶしかなくて。親に「夢精した」って報告しなきゃいけないんですよ。それって…、めっちゃ面白いじゃないですか笑。そういう他の人がしてない人生体験みたいなものは結構あるかもしれないですね。
ーーでは、そんなに車椅子が障壁になってないんですね。
布ちゃん 自分の障碍自体が先天性なので、障壁があるんだという認識で生きてきた感覚があまりなくて。まあ出来ないならしょうがないかと思って。それで落ち込んだ経験とかはないですね。

先輩が楽しませなきゃいけない義務

ーー他大と一緒にライブ組んだりとか多いと思うんですけど、ああいう繋がりはどうやって生まれてきたんですか?
布ちゃん あぁ〜、なんでだろ。
ーー話しかけるタイプですか?かけられるタイプですか?
布ちゃん 話しかけますね。結構、先輩に萎縮して、後輩に強くいけるタイプなんですよ。SCSの、先輩が回さないといけない、後輩がいたら面白くしないといけないという文化があるので、ギアが一個上がるんですよ。だから楽屋とかに後輩がいると、話しかけないほうがアレなのかなと思って、面白くしなきゃと思って話しかけますね。
ーー結構見切り発車ですか?
布ちゃん そうですね。「最近何してるの?」が手札の一枚目で。「何にもないですよ」って言われても「何もないことはないでしょ!」って言って、無理やり向こうは話したくないかもしれないけど、スタッフにも話しかけますね。
ーースタッフさんにも?
布ちゃん 僕がそもそも楽屋に入れる会場が少なくて。ブリーカーとかは入れるんですけど、twlとかは狭いじゃないですか。楽屋にいる機会が少ないので、楽屋にいれるだけで嬉しくなっちゃって。チャンスだと思って話しかけますね。
ーーでも先輩には萎縮するんですか?
布ちゃん しますね。結局、先輩にはその場を面白くしなきゃいけないという義務があると思って話しかけてるので、先輩がいるんだったら、先輩がその場を面白くいいじゃんと思います。
ーーじゃあコミュニティを広げるってよりは、本当にその場を面白くしたいみたいな?
布ちゃん っていう…、義務が。

【布ちゃんさんの車椅子を横から撮らせていただきました。かなりゴツくしっかりしています。
ちなみにトップの画像の建物(教室もあります)にはエレベーターがないため入れないそうです。
「エレベーターをつけて欲しい」と言ったところ、文化財のようなものなのでつけられないと。】

人前の緊張が無い

ーー話を聞いてると、布ちゃん自体があんま緊張しないタイプに見えてきます。
布ちゃん 元々小学生の時とかも目立ちたがり屋だったのもあるし、車椅子だというのが理由でイロモノとしてステージに立たされるというのが人より多かったんだと思いますね。保育園のお遊戯ダンスも真ん中でしたし。だから、ネタを飛ばさないかどうかの緊張はあるけど、お客さんがいるからという緊張は無いですね。
ーーそれって芸会とかでも変わらないですか?
布ちゃん 「芸会という大きな大会だから結果を出さなきゃいけない」緊張はありますけど、お客さんが多いからという緊張は無いですね。人前で喋るのが好きだったので。
ーーむしろ自分から好んで人前に立ってたみたいな?
布ちゃん そうですね。
ーーお笑いやる前で自分から人前に立つのって例えば何をやるんですか?
布ちゃん スピーチコンテストに出るとか。パラリンピックスポーツのサークルにも入ってるんですけど、それのスピーチの場に「自分から出たい」って言い出すとか。
ーーでは、失敗も恐れないタイプですか?
布ちゃん 失敗も恐れないですね。そこまで考えられないんですよ。失敗した後の自分がどう思われるとか考えないで生きてきたタイプなので、多分、沢山失敗してますね。だからライブにも多く出てきたし。

お笑いサークルの人=面白い人

ーーそのメンタルで、サークル内でライブでウケなくて落ち込んでる同期とか後輩とかには共感できるんですか?
布ちゃん できないですね。お笑いサークルに入ってる時点で、全員面白いという考えなんですよ。面白いことをしようという認識さえあれば、ウケなくてもそれは見せ方の問題だと思っていて、見せ方さえ覚えれば全員面白いと思ってます。
ーーそれはどんな人でも?
布ちゃん はい。スタッフさんでも。面白いものを得ようとか表現しようという前提でサークルに入ってる時点で、絶対一般人より面白いので。「貴方達は面白いから、悩んでる暇があったら行動しろよ」って思うんですよ。悩んでるぐらいなら、考えればって。
ーーなるほど、「お笑いサークルな時点で面白い」。
布ちゃん 僕は一年生の頃からめっちゃエントリーライブ出てたんですよ。授業とか切って、大学生の限界ぐらい出てたと思うんですよ、週に4,5本とか出てたんで。それでも今この程度の結果に至ってしまってるということは、みんなは絶対もっと上にいけるんです。何も考えずに出てただけの自分がこの結果なら、一年生の子とかは自分なんかより上にいけると思います、時間もいっぱいあるし。絶対全員面白くなれる、僕なんかより何倍も結果を出せると思ってます。
ーー"自分より"っていうのは、単純に低学年のほうが時間があるからってことですか?
布ちゃん 僕、1,2年生の頃は出れるライブは出て、ライブも暇なときは観に行ってたんですよ。それだけの経験値を重ねても僕はこのレベルにしか至れてないってことは、みんなは他の方法ができると思うんですよ。というか、この努力の仕方は間違いだと思うんです。ただ闇雲にライブに出て、この位置に至ってるというのを僕は不満に思ってて。他のやり方なら後輩はもっとやれると思ってます。
ーーこのような話は直接後輩に伝えたりするんですか?「お前ら頑張れ」ではないですが。
布ちゃん どうですかね。でも「絶対ウケるよ。滑ったりしてるなら客が悪いだろ」とは毎回言ってます。
ーー「客が悪い」っていうのはどういうロジックですか?
布ちゃん 「自分が面白くない」って思わないんでほしいんですよ。僕は基本的に全員面白いと思ってるので。後輩たちは自分なんかより結果をだせる人間だと思ってるので。絶対お客さんが悪いってことはないんですけど、自分が面白いと思ってお笑いをやってほしい。
ーープライドを持ってお笑いをやってほしいってことですか?
布ちゃん 「自分が面白くないかもしれない」なんて言うのは辞めてほしいです。それって「そんな事ないよ」待ちじゃないですか。「本当に自分が面白くないって思うなら辞めればいいじゃん」って思うんですよ。

THEお笑い番組のMCになりたい

ーー今後の進路的にはプロですか?
布ちゃん プロ行きたいです。就活もしてないので。3年ぐらいまで迷ってて、NOROSHIが出れなかったのが大きくて、就活しようと思ったんですよ。でもそんなに就活も受かんないし、プロでお笑いしたい気持ちも強かったので、準備も全然せず受けては落ちるみたいな連続があったので。
ーーそれこそ家族にはお笑いやってること話したりしてるんですか?
布ちゃん 家族はお笑いをしてるのは知ってて。それこそ母親がライブを見に来たりしたこともあったんですよ。でも父親は僕のお笑いはサークル程度の熱量だと思ってるので、僕が「プロの芸人になりたい」だなんて思ってもないと思います。一度「就活せずに芸能関係に行きたい」って話したときは「就活しろ。公務員になれ」みたいな。うちは硬い家なので笑。
ーーこういう芸人になりたいなどはありますか?
布ちゃん 将来的にはMCになりたくて。今、障碍者が出てる番組って障碍者に寄せた福祉番組みたいなのばっかりなんですよ。そうじゃなくて、『向上委員会』みたいなTHEお笑い芸人がいっぱい出てる番組で、自分が回してる姿を見せることで、障碍を持った人に「こんなことできるんだ」って思わせられるようになりたいです。

【布ちゃんのありのままを素直に話してくださいました。
学生芸人最後の年、これからの活躍にも期待しております!】

布ちゃんの出演情報

ご自身で呟いてくださっていたので、引用いたします⤵︎



渡邉・筆者 大学一留中のWatchの亡霊。春からAD。
コバヤシ・撮影者 専修大学お笑い企画STRIPGUNCLUB所属。Watch元編集長。

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