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中編 「大人の思惑とかそういうものに振り回されないで学生芸人の皆さんにネタをやっていただきたいなって。」

小倉さん:写真中央 学生芸人限定お笑いライブ「ガクコメ!」を運営してくださっている。
葛城:インタビュアー 日本大学経商法落語研究会 3年生演者
小林:インタビュアー補助・カメラ 専修大学落語研究会お笑い企画STRIP GUN CLUB 3年スタッフ 


「ガクコメ!」の始まり

葛城 ガクコメっていつから始まったんですか?

小倉 もうたぶん11年くらいになるんじゃないかな、2012年の3月だったと思うんですね。

葛城 当時って今ほど学生お笑いの認知度とかはないわけじゃないですか。

小倉 そうですね、大学芸会が始まったくらいでしたかね、そのくらいの時期だと思います。

葛城 なんでその当時に学生芸人だけのエントリーライブをやろうと思ったんですか。

小倉 元々ライブの主催をやってたのはあるんですけど、自分で主催を続けているときに、周りの芸人んさんたちとライブをやろうっていう時にどうしても演者さんもお客さんもおんなじような人たちになってしまうなっていうのが自分の中であったんですね。そこで何か新しいライブがしたいなっていう時に、色々な大学のサークルの方が自主的にお笑いライブをやっていて、大きな大会に向けてネタを作っているってのはなんとなく遠目で感じていたんですね。これってプロの芸人に置き換えてみると、事務所ライブが月に1回しかなくて、その中でM-1目指しているみたいなことなんですよね。学生芸人さんってこれだけ普段頑張っているのに、自主ライブしかないのもったいないなって思って。なんか、月1回の漫才やってM-1挑むのってプロに置き換えてみると無謀じゃないですか。そう思って学生芸人さんでも出たいって意思があれば出番が得られるような場があったらいいなって思ったのと、虹の黄昏さんと昔から一緒にお仕事させてもらってて、虹の黄昏さんと学生芸人さんっていうのが合わさった時、面白いんじゃないかなって。この2つですかね、理由としては。当時、まぁ今もですけど学生芸人さんお関連のお笑いライブって、学生芸人さん自身が主催していたり、卒業された方が主催していたりするので、MCの方も学生お笑いに関わっていた方が多いじゃないですか。そんな中で、そうじゃないライブをやったら面白いんじゃないかなって。僕も当時学生お笑いとそんなに接点があるわけでもなかったんですけど、なんだか面白そうだなって思って。

スペシャルライブ、特別公演について

葛城 ガクコメの特別公演って各コンビの出囃子がそれぞれ違うじゃないですか、あれがとてもいいって評判をよく耳にするんです。

小倉 良いかどうかはわかりませんが、とにかく時間だけはかけるようにしてますね。二ヶ月くらい。出演者が決まっていったらとりあえずプレイリストに演者さんから思いつく曲をとりあえず入れていって、毎日聞いて。毎日聞くって言ってもただラジオ番組聞くみたいに流し聞きしてってくらいのことで、まぁ一ヶ月前か三週間くらい前には大体決まってて、あとは結局自分が知ってる曲から決めるしかないので、それを思い出すかどうかなので。まぁ三週間くらい前からはたまたまラジオ番組で流れた曲とかテレビ番組で流れた曲で、別にその曲そのもじゃなくても「この系統でこういう曲あったよな」とかで思いついていって、入れ替えて、みたいな感じですかね。
元々、エントリー制のライブにずっとこだわっていて、それでガクコメも9年くらいやって。だからスペシャルライブってのも途中からの制度なんですね。なんでできたかっていうと、ガクコメってエントリー料を払ってでも舞台に出たいっていう演者さんが集るライブじゃないですか。そういう方のために、集客だったりネタに対するお客様からの評価とか、何か功績を残した方に、エントリー料を免除した形のライブを作りたいなって。元々はお金払ってでもっていう形で皆さんに出ていただいてるので、そこの負担を減らした形で皆さんに何かライブができたらって考えたら、上位入賞者はエントリー料免除で、ある程度のレベルの人たちとライブができるってのはステップアップとして良いんじゃないかなって思ってて。まぁ集客とネタの評価で決まることなので、興行としては一番しっくりくるなってことでそうしてますね。
特別公演に関しては僕が選んでるので、だから特別公演はやるか迷いました。僕が選んでしまうので。なるべくガクコメはシンプルな構造にしたくて、携わっている人もなるべく少なくしているんですよ。責任とか誰が何をどうやっているのかって学生芸人さんにわかりやすい方が良いなって思ってるんですよね。だからなるべく僕だけにしてるんですよね。僕が考えてることとか僕のやり方が、学生芸人さんと違うんだったらエントリーをしないで済む話なので。そこにたとえば、僕がもっとサークルの方々と親しかったり、プロに直結してるとかになると、政治的なものとか、業界のしがらみみたいなのが絡んでしまいそうで。それって僕の中では違うなって思って。
今までもプロダクションとかイベンターの方からお力添えをいただけるようなお話をいただいたこともあるんですけど、そこはなるべく無くして、大人の思惑とかそういうものに振り回されないで学生芸人の皆さんにネタをやっていただきたいなって。
そういうスタイルで今までやってきたんですけど、なかなか、このスタイルのライブってお客さんにとっては感情移入しづらいんですよね。たとえばHIKIGANEさんとかレジスタリーグさんって、ある程度毎月見ていると点と点が線になって、誰が落ちて、誰が上がってって、そういうストーリーが観れるので、「Show」として見ていられるライブなんですよね。でもガクコメって「寄席」なので、芸人さんがいっぱい出るってだけなので、それを観にきてくださるお客さまにはほんとうに感謝だなって思っているんですよね。お客様に来ていただけないとライブって続けて行けませんし、もちろんエントリーしてくださる学生芸人さんのおかげでもあるんですけど、やっぱりお客様が0か1かって大きな違いなんですよね。お客様に育てていただいて、なんとかライブを続けていけてるので、育てていただいたひとつの形というか、僕もお客様のおかげで毎月100組くらいの学生芸人のネタを袖から見ることができていますし。毎月100組くらいの学生芸人さんのネタを袖から見続けているおじさんてなかなかいないと思うんですよね、そういう人間だからこそ開けるライブがあるんじゃないかなって思って。特別公演を開くまでも一年ぐらい悩んだんですよ。
「その人も結局選ぶんだな」「小倉だけは人を選んだりはしない大人だと思ってたのに」って言われるんじゃないかなって。だから、特別公演始まったらガクコメのエントリーがすごい減ると思ったんですね、僕が人を選ぶことで気分を悪くする人がいるんじゃないかなって思って。でも意外と減らなかったし、だからこそ真剣に出演者を選ぼうと思いましたし、それがちゃんと演出に見えるようにしようと思って、だから自分で出囃子を決めようとなりましたね。それに、自分はあんまり演者さんと現場でたくさんコミュニケーションをとるタイプのスタッフではないので、出囃子を決めるってことがその演者さん一組一組のことを考える機会にもなってますね。ただ、まあ自意識過剰かもしれないんですけど、特別公演に選ばれたくて僕に向かってネタをするとかにはなってほしくないんですよね、あくまでネタはお客様に向かってするものなので。そういった面でも悩みましたね。

【今回は中野にある「カフェ 奥の扉」にてインタビューを行いました。紹介していいですか?と聞くと快く承諾してくださいました。中野駅から近いので是非!】

当時と今の学生芸人

小倉 でもよく専修大学のお笑いサークルに入ろうと思いましたね。歴代見るとめちゃくちゃですよ、あの人達(笑)
※インタビューに帯同している小林がSGC所属

小林 今は多分だいぶマイルドになりました(笑)

小倉 そうなんですね。だって、全員睨んでましたもん(笑)2010年代とかですかね。

葛城 当時の学生芸人の印象とかは覚えていますか?

小倉 基本的にはあんまり変わんないですよ、プロの芸人さんと接している時と。

葛城 一番最初のガクコメについては覚えていますか?

小倉 でも別にそんなに今と変わんないですよね。いろんな人が出るネタライブで。みんな真面目だし、今と昔はそんなに変わっていないと思っていますよ。それに僕、それ(主催者と演者の関係)以上に深入りはしていないので、ライブの現場でしかお会いしないので。あんまり感情移入したりとかはしないようにしていますね。

葛城 学生芸人のライブを見に行くことは?

小倉 ほとんどないですね。感情移入しちゃいそうで。去年のNOROSHIの決勝戦、配信があったから見たんですけど、やっぱり見ない方がいいですね。あんなの見たら感情移入してフラットに話せなくなりそうですね。元々はお笑いオタクなんで。この仕事じゃなかったらめちゃくちゃ通うと思いますよ。すごい偏ったところに通うと思いますよ。ちょっと小さいサークルとか。「小さいサークルを応援していくんだ」って(笑)

葛城 印象に残った学生芸人はいますか?

小倉 でもほんとにサブアシスタントさんは本当に僕がガクコメというライブを続ける上では大きな存在で、たぶんサブアシスタントさんはガクコメなかったらあの人達どうしてたんだろうな(笑)当たり前のように出ていましたよ、毎回。世代的にいうとテキセツの街さんとかXXCLUBさんとかですかね。

葛城 僕もガクコメに何度か出させていただいてるんですけど、その中でも印象的だったのが義和小原さんで、場当たりの時に義和さんのネタきっかけを小倉さんが「今日も変なことするんだね」って楽しそうにお話ししているのがとても印象的でした。

小倉 あんなに無茶苦茶にされて、4年間(笑)いやぁ、面白いですよね。

葛城 だから義和さんの名前が上がるのかなって思ってました。もっと無茶苦茶な人がいたんですか?

小倉 いやでもね、結局みんな無茶苦茶なことやろうと思って無茶苦茶やりに来てないから基本的には面白いことやろうと思ってるし、面白いと思われたいんですよ。それがちょっとね、義和小原さんみたいにひん曲がっちゃう人もいるけど、でも義和小原さんはお話ししたらすごく物腰柔らかいし、丁寧なお話の仕方をされる人だし。義和小原さんって2年生くらいから始めたんだっけな。2年生の時とかはどうすんのかなって思いましたけど、別にただ無茶苦茶しようとしてるんじゃなくてただ面白いことしようとしてるってのが皆さんに伝わって活躍の場が広がるわけですからね。

葛城 義和さんは芸会も決勝まで行かれましたもんね。

小倉 そうですね。別にガクコメがあったからだとは言わないですけど、こういういろんなサークルの方が一堂に会して何十組もいてその中で揉まれて、っていう場は義和小原さんとかそういうタイプの人には必要なのかなって思いますね。
たぶん学生お笑いの4年間って、一年生の頃からスターみたいなタイプの人もいると思うんですよ。やっぱネタもそうだけど、愛されるまで、受け入れられるまでに時間がかかる人っていると思うんです。そういう人にとっては、もしかしたらガクコメをやっててよかったのかなって思いますね。あと、他の主催者だったら許してない可能性もありますからね、他の主催者だったら(笑)とにかく一番初めに、僕が面白いと思ってあげようと努力することは決めてて、演者の要望が多少無茶でもなるべく理解しようとは決めてますね。

葛城 とってもありがたいですね、演者としては。

小倉 ただわかりませんからね、僕が受け入れてても他の現場じゃ困ってるスタッフもいるかもしれませんからね(笑)「小倉は良いって言ったかもしれないけど…」っていうスタッフもいるかもしれませんからね(笑)

【元々は“お笑いオタク”だとおっしゃっていた小倉さん。休日には寄席に行くほど落語が好きだそうで、特に「抜雀」という噺が好きだとおっしゃっていました。】

告知 「ガクコメ!」

◉次回「ガクコメ!」⤵︎

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