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【第126回】スピッツ/スーベニア

これが投稿されている頃には、私は転職先でバリバリ働いていると良いのだけれど、転職が決まってから退職するまでの2ヶ月間はいろいろと考えさせられる期間だった。(ちなみに転職については【第113回】でお話させていただきましたので、よろしければ是非。)まずは7年半、なんの取り柄もない、スキルもない私がよくまあここまで続けてこれたなということ。これに関しては周りの皆さんのサポートのおかげとしか言いようがなく、ホントに感謝しかない。
そしてもう1つは自分も限界がきていたのだということ。ここ1年は仕事が辛く感じることが多くなっていて、これなんでかなっていうのを考えてみたのだが、自分の中で仕事をしていても報われない気持ちが強くなっていて、かなり疲弊していたように思える。もともと仕事に対して情熱を持って臨んできたタイプではなく、週末の趣味を楽しむためと割り切って働いていた部分が強かったのだけれど、それでもやっぱり周りから認められる、感謝されるっていうのは、仕事のモチベーションを保つ上で大事だったのだなと実感した。人によってそれは甘えだと言われるかもしれないけれど。
ここ1年くらいは仕事をしていても責められているように感じることが多くて、認められていないのではないかとずっと疑心暗鬼になっていたような気がする。思い込みと言われればそうかもしれないけれど、少なくとも私はそう感じていて、それが疲弊の原因にはなっていたと思う。
そんなわけで、偉そうなことを言える立場ではないけれど、人に認められる、感謝されるっていう環境で仕事を選ぶのも、選択肢の1つとしてありなんじゃないかなと考えた次第。好きなことを仕事にするのも当然良いけれど、それって結構ハードル高いし、そもそも好きなことが見つからんって人もいるだろうしね。ま、中年オヤジの戯言です。そして退職する際にいただいた記念品は「PARKERのボールペン」。ホントにありがとう、大事に使わせていただきますね。そして今までホントにお世話になりました。
というわけで今回はスピッツさん通算11枚目のアルバム「スーベニア」について書いていきたいと思う。「スーベニア」って記念品とかお土産という意味だって皆さんご存知でしたか。私は全くご存知なかったです。このアルバムは仕事が辛かったとき、転職活動をしていたとき、そして転職先が決まってホッとしたタイミングで聴いたアルバムで、思い入れの強いアルバムである。
このアルバムは「春の歌」と「正夢」が突出している。まず「春の歌」だけれど、この曲はアルバムの1曲目に配置されていて、いきなり感情を揺さぶられる。心がつかれているときに聴いたらヤバいのだよ。「平気な顔でかなり無理してたこと、叫びたいのに懸命に微笑んだこと」とか自分と重ね合わせて、もろに心に突き刺さってしまった。この曲を聴いていると、スピッツさんに頑張っていることを認めてもらって、そしていつかは春が来るから大丈夫だよと励ましてもらっている気持ちになる。春の訪れを予感させるような終わり方も泣かせる。
そして「正夢」は更に良い。曲単体でも当然良いのだけれど、「ナンプラー日和」の後に配置されていてそれがまた効果的だ。「ナンプラー日和」は三線が印象的で、沖縄の雰囲気が溢れていて、聴いていると元気をもらえる曲だ。ちなみに「ナンプラー」とはタイの調味料らしく、曲名と沖縄は関係はないみたい。そして「ナンプラー日和」で元気をもらった後の「正夢」がたまらない。イントロが聴こえた瞬間に心が震える。歌詞もメロディーも大好きで、スピッツさんの王道とも言える曲だ。控えめに流れるストリングスも超効果的。そして歌詞は突き刺さるというよりは、しんみりと共感できる感じ。ちょっと大袈裟かもしれないけれど、聴いていて幸せな気持ちになる曲である。
そしてこの「正夢」を聴き終わると、余韻に浸ってしまって、この後の曲「ほのほ」「ワタリ」辺りまで、余り集中して聴くことができない。集中して聴くとシリアスなロックという感じがして、カッコ良いなとは思うのが、若干不憫な曲である。ただその後の「恋のはじまり」は名曲。曲名通り恋のはじまりを歌った曲で「おかしな生きもの」とか「花屋のぞいたりして」とか、恋のはじまりの絶妙な部分をピックアップしていて、スピッツさんらしくて面白い。爽やかで疾走感のある素晴らしい曲だ。
その他で言うと「甘ったれクリーチャー」「みそか」はどちらもパワー・ポップみたいな感じでカッコ良い。「Weezer」みたいなイメージ。スピッツさんてちょくちょくWeezerさんチックな曲あるけど、結構好きなんじゃないかなって思っている。後は「ありふれた人生」も結構好きだったりする。Aメロが「KAN」の「愛は勝つ」に似ているなと思ったけれど、聴きやすくて悪くない。歌詞がかなり女々しくてちょっと笑えちゃうけど。後はスピッツさんがまさかのレゲエな「自転車」、明るくてノリノリなんだけれど、サビがちょいダサな「テイタム・オニール」、物静かはやっぱり退屈だよなぁな「優しくなりたいな」「会いに行くよ」といった感じだ。
このアルバムは結構リピート率が高いのだけれど、やはり「春の歌」と「正夢」の存在がとても大きい。大き過ぎて1曲目の「春の歌」から6曲目の「正夢」までで、一度私の中で完結してしまうという弱点がある。「正夢」でハッピー・エンドを迎えた気持ちになってしまうのよね。そのため、それ以降の曲を聴くのにもう一度気持ちを集中する必要がある。そのせいかこのアルバムを聴き終えると、なんか疲労感を感じてしまったりする。それは感情を揺さぶられてるってこともあるのだろうけど。そんなわけで、かなり好きではあるけれど、聴くときにはちょっとした心構えが必要なアルバムだったりする。「スーベニア」を聴く際は、心して刮耳せよ、である。

心して
聴けばスピッツ
グーだべや(スーベニア)

季語はスピッツ。

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