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【第130回】スピッツ/三日月ロック

私は子供の頃、物事があまり長く続くタイプではなくて、野球もサッカーも地域の少年チームに入っていたけれど、どちらも1年程度で辞めてしまっている。中学生のときも剣道部を2年足らずで辞めてしまったし、そんな私を見て父は「そんなんで大人になってからちゃんと仕事を続けることができるだろうか」とよく不安がっていた。いざ大人になってみると、最初の会社には6年、次が10年、続いて7年半とそれなりに務めてきたし、社会人になってから始めたサッカーも未だに楽しく続けている。この試聴感想文だって2年以上続いているのだから大したものだ。
きっと子供って大人に比べると初めてのことがたくさん存在して、いろいろと目移りしちゃうのも当たり前なんじゃないかなと今になって思う。それに子供なんて単純だから、少しでもうまく行かないとつまらなく感じて、他に自分に向いているものがあるはずだと模索してしまう気持ちもあるだろう。そのたびに用具を買い揃えてくれた親には申し訳ないことをしたけれどもね。と、まあかなり言い訳地味た話をさせていただいたけれど、結論、子供なんて三日坊主くらいが丁度良いってことで。
そして「三日坊主」もそうだけれど、「三日天下」ということわざもあったりして、「三日」と言うと長続きしない、ネガティブな印象がある。なんで「三日」って扱いが悪いのかなと思ってちょっと調べてみたら、「正月三が日」という何やら楽しげな雰囲気の言葉を見つけた。さらには「三日月」なんて響きがとってもステキな言葉もあるし、思うほどには悪い扱いではないのかもなと思い直した。ちなみに「三日月」には物事の始まりという意味もあるらしい。ますますステキじゃないですか。というわけで、今回はスピッツさん通算10枚目のアルバム「三日月ロック」を聴いてみた。
まずこのアルバムはジャケットがカッコよい。とっ散らかった部屋で何かしらのフルーツを齧る女性、かなりロックな印象を受ける。シンプルなデザインの多いスピッツさんにしては珍しくガチャついた、尖ったジャケットにしたなと思った。
そして実際の中身の方だが、1つ前のアルバム「ハヤブサ」(第128回参照)がシリアスなロックという印象が強かったので、今回もその路線を踏襲しているのかなと思ったのだけれど、全然そんなことはなくて、結構明るめの曲が多かった。「さわって・変わって」なんかエロに目覚めた爽やか青春ソングという感じだし、「ミカンズのテーマ」なんかは軽快なギターが魅力のとてもポップな曲だ。他にもロックなイントロの「ローテク・ロマンティカ」、前向きな気持ちになる「けもの道」、パワフルな演奏とポップなメロディーが魅力の「エスカルゴ」と、聴いていて気持ちの良い曲が満載である。そしてどの曲もカッコ良くて、甲乙つけ難いレベルだ。この辺、さすがスピッツさんだなと思わざるを得ない。
そういえば「おるたな」(第117回参照)というアルバム未収録曲集みたいなものに「三日月ロックその3」という曲が収録されていて、曲名からも恐らくこのタイミングで作られた曲かと思うのだが、あの曲もとてもカッコ良くてお気に入りであった。この曲も入ってたら最高なのになぁ。
しかもこのアルバム、個人的にさらにお気に入りの曲があって、それは「ハネモノ」と「ババロア」という曲。「ハネモノ」は比較的静かめの曲ということもあって、最初はあまりピンときていなかったのだけれども、何度も聴いているうちにめっちゃ良い曲じゃんってなった。穏やかで優しい雰囲気で、そして聴いていると自然と笑みがこぼれてくる。「無理矢理晴れた日」みたいにほのぼのとする詩、サビの盛り上がりの気持ち良さと、不思議な魅力があってクセになる曲だ。「ババロア」の方はシリアス系なノリの良いロックという感じ。特にサビの言葉ののせ方とリズムが絶妙で気持ち良い。バックではシンセサイザーも鳴っていて、その歌詞と共に宇宙を感じさせるカッコ良い曲である。ただ歌詞の意味はさっぱり分からんくて、何故ゆえにババロアなのかしら。ちなみに私が子供の頃にはババロアなんてスイーツは珍しくて、給食で1回だけ登場したことがあるけれど、その時は変な味ってなった。
その他で印象に残っている曲をあげると「夜を駆ける」と「ガーベラ」あたり。「夜を駆ける」は物静かな雰囲気からのサビに向けて盛り上がっていくカッコ良い曲で、まさに夜を駆けていくようだ。「ガーベラ」の方はとても孤独な印象を受ける曲。返事がないのが分かっているのに「ハローハローハロー」と呼びかけている感じがとても切ない。それから個人的にあまり好きでない曲は「水色の街」と「遥か」の2曲になるのだけれど、これも強いてあげればと言う程度で、聴いていて退屈になる程ではない。
そんな感じで良曲盛りだくさんで、そこまで退屈さを感じる曲もないアルバムである。のだけれど、不思議ことにこの感想文を書くのにあまり熱が入らなくて書くのに随分難儀してしまった。こんなにレベルの高いアルバム珍しいのに何故だろうと考えてみたのだが、どうも歌詞に入り込むことができなかったのではないか、という考えに行き着いた。歌詞をあまり理解できなくて、シンクロ率が上がらなかったのかも。結構聴き込みはしたつもりであるのだけれど。スピッツさんのほかのアルバムに比べて、難しい歌詞だったりするのかしらん。そのため、かなりとっ散らかった文章になってしまいましてすみません。

スピッツさん
聴かずにロック(三日月ロック)
語れません

季語はスピッツ。

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