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【第129回】スピッツ/花鳥風月

今思い返すと、私が新社会人になったときの課長はとても魅力のある人であった。その人は気功みたいなのにハマっていて、飲み会のときによく「呼吸を整えてこうやるとビールの味が変わるんだよ」と言ってビールジョッキを両手で包み込んでいた。私はお酒を飲まないのでビールの味が変わったかどうかは分からなかったけれど、大真面目に話しているその課長に可愛気を感じていた。呼吸にこだわっているので、その分声も大きくて、よく電話で「これナイショの話なんだけどさ〜」って課内全体に聞こえる声で話していた。
可愛気だけでなくなかなか男気もある人だったようで、私の所属していたグループのプロジェクトが頓挫してしまい、私含めて数名が責任を取らされてって訳ではないのだろうけれれど、他部署への異動が決まった。その際にその課長、部長にかなり抗議をしてくれたらしい噂を聞いた。その後その課長も他の部署に異動させられていたので、それらしきことはしてくれたんだろうなと想像している。
当時は私もスゴく若かったので、あまりその課長と打ち解けることは無かったし、そんな気もなかったけれど、今となればいろいろと聞いてみたいこともあるなぁって思う。あの当時45歳位と考えると、もうとっくに定年を向かえて70歳を超えているのだろうか。そしてこれを書いてる私、あのときの課長の年齢を超えているのか。とんでもねぇな。ちなみにその課長の十八番は「井上陽水」の「少年時代」である。
というわけで今回はスピッツさんの「課長風月」、ではなく「花鳥風月」について書いていきたいと思う。ちなみにこのアルバムに数曲追加した「花鳥風月+」というものもあるようだが、オリジナル至上主義の私が聴いたのは「+」の付かない「花鳥風月」である。そしてこれはオリジナル・アルバム未収録の曲を集めたスペシャル・アルバムになる。スペシャル・アルバムとしては他には「おるたな」(第117回参照)、「色色衣」(第124回参照)があるけれど、「花鳥風月」が1番最初。そのため比較的初期のアルバム未収録曲が収録されている。
このアルバムで1番の有名どころはやはり「PUFFY」で大ヒットした「愛のしるし」だろう。PUFFYさんのときはそれほど興味はなかったけれど、今回改めて聴き直してみてやっぱり良い曲なんだなって思った。どこがサビにあたるのかよく分からない、不思議な曲である。「いつかあなたには、すべて打ち明けよう」の部分のメロディーが好き。のほほんとしてかわゆい曲だよね。1つ気になるのは、この曲ってもともとPUFFYさん用に作られたのかってこと。こんな良い曲を人に提供するなんて太っ腹だなぁって感じてしまった、心狭めな私である。
ただ個人的にこのアルバムで1番お気に入りの曲は「スピカ」だ。雰囲気としてはウキウキするような曲で、ですます調の歌詞がかわゆい。サビのメロディーが秀逸なのと、「割れものは手に持って運べばいいでしょう」みたいに前向きな歌詞で聴いていて気持ちが良い。そういえば「フェイクファー」に収録されていた「謝々!」(第122回参照)もですます調の歌詞だったよね。あっちは女性コーラスの印象が強いけれど。あととても静かな曲だけれど「流れ星」も結構好き。穏やかなイントロからの、語りかけるようなボーカルで、聴いてすぐに良い曲だなとなった。「流れ星」って連呼していて切ないのかなという感じもするけれど、悲しい感じではなくて、気持ちが落ち着くような曲。
といったところで、実はこのアルバム、上記3曲がお気に入りで、後はそれほど好きな曲がない。聴いていてあまり印象に残る曲がないのよね。少し印象に残っている曲(好きな曲ではない)をあげさせていただくと、
★「俺のすべて」:「何も知らないお前と、ふれてるだけのキスをする」って部分が歌詞もメロディーもステキ。曲も全体的に良いけど、サビがちょいダサく感じちゃう。
★「猫になりたい」:ジャケットが猫のアルバム「名前をつけてやる」に収録されているイメージを持ちがち。しっかり聴くと穏やかで結構悪くないなって感じる曲だ。
★「マーメイド」:「マーメイド」って曲だけど、草野さんは絶対「マーメイ'ダ'」って歌っている。あと歌詞カードには「お魚」って書いてあるけれど、絶対「ちょ魚」って歌っている。そしてサウンドが「BO∅WY」のようだ。
★「野生のチューリップ」:「大滝詠一」風のとても爽やかな曲で、聴いてて「君は天然色」をイメージした。
★「おっぱい」:かなりストレートな曲名で衝撃だけれど、曲にエロさはないし、あまり印象にも残らないという、ある意味印象的な曲。まあ、漢はだいたいおっぱい好きだよ。
★「トゲトゲの木」:初期スピッツにありそうなとても呑気な曲。「プーリラピーリラ」とか雰囲気だけで歌っているよね。「トゲトゲトゲトゲ」言われてもなぁな曲。
といった感じだろうか。お気に入りが3曲とあまり多くないし、それも1〜3曲目までに収録されていることもあって、後半はどうしてもダレてしまうしで、正直あまり好きではないアルバムだ。まあ、もともとファン感謝的な企画物アルバムだし、こういったアルバムは便利でありがたいものだよね。それにジャケットとアルバム名がとてもステキです。

スピッツの
過小評価す(花鳥風月)
るんじゃねぇ

季語はスピッツ。

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