先生白書2

【書評】「凝」を怠るとわからない『先生白書』の魅力


漫画『先生白書』


【概要】
『幽々白書』『レベルE』『ハンター×ハンター』の漫画家・富樫先生の思い出を元アシスタントがエッセイ形式で語る。


【感想】

この本は「そば湯」みたいなものです。

単品でお金を取れるものではないし絶対に必要なものでもない。
それでも食後に飲むと暖かい気持ちにさせてくれる優しさがある。

その優しさは絵柄のタッチと文章と富樫先生へ敬意です。
ただし「そば」に当たる富樫先生の過去作品を知らないとまったく楽しめません。

それを差し引いても低評価をつけている人の気持ちはわかります。

エンタメとしてはダメダメです。
3P~6Pの小ネタを時系列で書きなぐったような内容。
深い葛藤や激しい漫画論などとは無縁。
最近の日常系漫画は美少女かギャグなどの商品フックがありますが本作にはありません。
富樫先生とのゆるい日常が続くだけの漫画です。

ちなみにkindleで『先生白書』で検索すると平松先生の『そしてボクは外道マンになる』が出ます。
エンタメと暴露ネタが見たい方はそちらを勧めます。
行列ができる「インスパイア系ラーメン」の濃厚スープが味わえます。

それでも本作は多くの気付きがある漫画なのは間違いありません。

・富樫先生はかなりの人格者
 アシスタントや担当に怒鳴ったり理不尽は言わないし守るべき基準を持っている。
 
・富樫先生は金払いがいい
 アシスタントにもボーナスや退職金を渡すし積極雇用してくれる。

・過去作品のネタばらし
 暗黒武術会のデザインは子供の好きなアレだしレベルEは当初オムニバスだった。

・ネットの噂の真偽
 腰痛なのは本当。
 ゲーム好きなのも本当。
 アシスタント使わないというのは嘘。

『ハンター×ハンター』で下書きを載せるは休みまくるはやりたい放題の富樫先生。
ネット上にはまことしやかな噂が流れています。
『ガラスの仮面』はバージョン改定を繰り返して進まず『ベルセルク』は描き込みすぎて進みません。
そんな中、サボって書かない漫画家の富樫先生と思われています。

ガンの受容プロセスの如き心境になったなった方は多いでしょう。
何で休んでいるの?→休むんじゃねーよ→下書きでいいから載せて→もう好きにしろよ。

この本で最終プロセスに進めます。
それは「受容」。

受け入れるのです。

これだけ優しい人間が書いているなら広い心で待ってもいいかなという気持ちになるのです。
どう思おうと載るときは載るし、載らないときは載りません。

『ハンター×ハンター』でイラついた人こそ読んでみてください。
「そば湯」は地味でわかりにくいですがいいものですよ。



【おまけ】
ブログやってますので興味ある方は「梟茶房」で検索してください。

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