ムカデのリング 2
休み明けの朝でした。
目を覚まして、真っ先に指に目がとまりました。
「なんだ?この指?」
関節がなくなるくらい、赤く血の水疱を伴って風船のように指の半分以上、八割未満がプックリと腫れ上がっていたのでした。
見るのもおぞましいので写メなんか撮りながら深く溜息をつくでした。
「なんてこった、バチの当たるようなことしたかいなぁ?」
起きてきた家族に気味悪そうに心配されながら、痺れて痛みは感じないので仕事帰りに病院でもいくかな~くらいの感じで出勤しました。
職場では何人かにどうしたのかと聞かれたけど、大したことはないムカデに噛まれただけだよと答えてました。それでもやはり昼休み頃には
「早く病院に行って下さい、その指ヤバイですよ。」
なんだみんな気にしてくれてたんだ、でも職場も病院なんで外来で診てもらおうと行ったところ、
「はやく専門の病院に行って下さい。その指ヤバイですよ。」
と、同じようなことを言われ早退して専門医に行くことになってしまいました。ちまたの病院が休みの時に起こった出来事だから出遅れた感じでしたが、お気楽な性格のためあまり気に留めず遅ればせながら最寄りの病院を受診しました。
看護師さんは私の指を見て、
「なんでこんなになったんですか?」
と言われても私は、
「さぁ、なんででしょう。ムカデに噛まれただけですが、、、」
「はぁっ!こんなになるんですか?」
こっちが聞きたいくらいです。
先生が出てこられたので、ムカデに噛まれたこと、2回目であること、噛まれた時に冷汗がでて心臓がバクバクしたことを話しました。
「あなた、次噛まれたら救急車だね。蜂もヤバイからね。それとこれちょっとした手術みたいなもんで皮剥ぐからね、もう皮ダメだから。後治るまで通院してね。」
淡々と言われる先生になすがままの私なのでした。皮を剥がれた指を生食で洗い流され因幡の白ウサギの気持ちになりました。程なくして蒲の穂ならぬ蒲の穂の様な包帯グルグル巻の指が出来上がりました。
その時はじめて、事態の重大さに気がつきました。
「ヤバイ!ギターが弾けない、、、」
やたら気づくのが遅いのですが、この頃の唯一の趣味が弾き語りのライブをやることだったのです。幾つかの予定とお誘いの返答をかかえてたのでした。
「傷が治るのにひと月はかかるね。
ま、また明日ね。」
そう言われ、ひと月かと再び溜息をつきながらお家に帰るのでした。
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