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ある技にまつわる話
はじめまして、RefleX所属の磯野ハラコもとい親方です。今回はデビルスティックのある技についてお話させて頂きます。
○ある技とこれまでの変遷
※以下、技名などに関しては自分のなかで決めてしまった名称がほとんどなのでご了承ください。もし他で名称が判明されていたら教えて頂けると幸いです。
デビルスティックのある技、と前置きをしましたが、自分がブラ棒ルーチンで披露した技についてのお話となります。
その技の形はお腹の表面でスティックをロールさせるもので、範囲は腰から胸下までと規定しています。この技の名称に関しては未だよく分かっておらず、「Abdominal roll」(腹部でのロール)など考えましたが、自身のスタイルとして表すためにこれを便宜上「Oyakata's roll」とします。(以下「O'r」と省略して記していきます。)
このO'rをはじめてしたのは2015年冬ごろだったはずです。仰向けになりお腹の上でスティックをロールさせる形の技で、イメージとしては寝技です。これは初期型となります。
↓O'r[寝技ver.] 映像は2016年のもの
その後変遷を辿り、ついにO'rは直立型に移行します(直立型が現在の主流です)。
↓直立型O'r(NUGINUGIいけるかなver.)
じつはこの技、なんと先駆者がいます。自分が知るかぎり、ですが。
↓Bruno Joaquin Lagolos 氏
彼の動画は同時期にみつけたのちに長い間頭の片隅に追いやっていたため、O'rを本格的にやりはじめてかなり時が経ったときに改めてこの動画を思い出しました。(とても上手い)
↓Mauro Troncoso 氏
この動画に関してはブラ棒直前のもので自分のルーチンにも組み込まれている技があったのでビックリしました。(翻訳すると、古いトリック、とあるので以前からあった昔の技と思われます)
そして2018年、JJF2018が契機でした。
スティッカーたちと交流する中である方々に再会し様々な意味で「突出」した技をいろいろと披露してもらいました。
その技のひとつがヒップハング(だったはず)、通称「腰パタ」でした。技内容としてはヘリコプター回転を腰元でスイッチして(当てて)回転を変えるものです。
加えてこれを連続で行うと見た目が面白い。
(ちなみに肩パタや足パタもあります)
その中のある腰パタを使った技をみて、自分は心底驚き感動しました。そして、JJFが終わってすぐのことになりますが、そのとき
「俺も似たようなことできたらいいな」
という気持ちが生まれはじめました。
ロールの技を真面目に練習し始めようと思ったのです。これがブラ棒ルーチンにつながるきっかけとなります。
○O'r系統への挑戦
そうして、ロールの技を練習することを決め、なんやかんやではじまったのが、「Dual Oyakata's roll × Idling」(以下D O'r×I)という技の練習です。
やり方は簡単です
まずO'rします
次いでアイドリングします
これを同時に合わせて連続でします
はい以上。
想像は如何に容易けれど現実はそう甘くないのです、勿論のことですがむずかしい。まだ希望があるとしたら練習1日目で4,5回ほどできるということだけでした。
さてこの戦いの最中、同時期に自分はシングルのロール技を開発、練習をしていました。そんな技のいくつかを例に紹介させていただきます。
↓①O'r ストライプスイッチ
着想はフィッシュ→O'rへの移行からでした。ソー回転とO'rのヘリ回転?は親和性高いのではないか?という思いからこの「ストライプ」につながりました。
構造はO'rの後ろ側(左右で止めた際のお腹に当たる部分)を上に押し上げ順回転ソーに変え、右からであれば左の脇腹へ(左からなら右の脇腹へ)当てる。
形が服の縞模様に似ていることから「ストライプ」とさせていただきました。
↓②O'r ガーターベルト
O'rは身体でロールするため様々なスポットへとロールすることが可能となります。
この技はO'rを止めた際に片方のハンドスティック(以下HS)で叩き下げ、太もも内側のところへ押し当てレッグロールの形でO'rへ戻してきます。
実際見てのとおりですが、四股踏みに似た形で足を広げ太ももに当てロールしていく。見た目が「ガーターベルト」に似ているためそのような技名とさせていただきました。
↓③O'r→スクエアロール
この技に関しては先駆者が既にやっています。
見てのとおりですが、肩へ上げ前首を通して肩へ送りお腹へ戻す、形が四角ということから「スクエア」と呼称しています。
このようにO'rをやり続けていくうちに技がどんどん湧き水のごとく溢れていきました。
矢先ふと思ったのです
「これはO'rだけでルーチン作れるのでは?」
と。
日本のスティックという舞台で考えてみても身体でスティックをロールする技はたくさんあります。
ただ全編ほぼロール系統で攻めたルーチンは少ないのではないか
ましてやお腹の上でロールし続ける基底状態から技を行う、こんなルーチンは面白いのではないか……
思いは巡りやがてこれは「戦える武器」という認識に至りました。
D O'r×I との戦いはO'r系統への挑戦となり、自分自身のユニークスキルとして体現できる所まで押しあげることができました。
この時点で自分は大会出場を視野にさらなる練習を続けてました。
○未開拓の領域へ
ここでひとつのスタイルをご紹介します。
それは、シガーボックスの技系統「クロスアーム」です。
読んで字のごとく腕を交差させて行うシガーの一系統ですが、これはほんとうに難しい。クロスアームの制限により通常のオープンアームと比べて動きにくく技もしづらいです。
このクロスアームですがあるジャグラーさんが自身のスタイルとして体現しています。
自分はJJF2017で行われた彼のクロスアームのルーチンを見て感動し、ジャグリングの奥深さが垣間見えました。未開拓の技への挑戦にはじつに心震えたのです。
このクロスアームについては某漫画の「制約と誓約」に掛け合わされてよく話にあがります。
これは他道具やジャグリング全体にも言えることで、ある制限をかけその制限を守り技をつくりあげていく、その先には新たな領域が待っていることと思っています。
たとえば
クロスアームというの制限のなかで
バランスという制限のなかで
ロールという制限のなかで
これは未開拓の領域への挑戦であり、新たな技の発見に導かれていくものといえます。
この考えはO'r系統を進めていくなかでずっと考え続けてきたものです。
ロールという制限のなかで如何にしてルーチンをつくりあげていくか、とくにO'rを基底状態とする条件付きでどこまでやれるか。
これがブラ棒ルーチンのひとつのモチベーションとなりました。
加えて、D O'r×I を世間に登場させてみたいという顕示欲もありました。みなさんの反応を見たい、技系統の発展を見たい、こんな願望がいまの自分をつくりあげています。
以上である技にまつわるお話となります。
後日談みたいなものですが、ブラ棒ではそのO'rを基軸にしたルーチンを披露しました。そんな、ルーチンに関しての詳しいお話はまたいずれ明記するつもりです。
脱線しました、本筋に戻りましょう。
↓今回のまとめです。
自己のスタイルを見つけ、それを最大限に生かす。自分に対してはそう言えますが他の方々すべてに言えることではありません。
あるひとつの技、これを熱心に考え練習し続けてみてはどうでしょうか?
得意分野を伸ばすということでも構いません、なにかひとつ、これ!というものに力を入れてみてください。
もしかしたら何か新たな技の発見に繋がるかもしれませんし、繋がらないかもしれません。そういうところはジャグリングライフを楽しむうえでの醍醐味だと自分は思います。
まあもちろん、いろんな道具やいろんな技をやるとすごく視野が広がるのでぜひいろんなことにチャレンジして頂きたい。
最後に
「流行ってほしい!」
というわけで今回のO'rの布教活動を終えさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。また会いましょう。