沈丁花が咲いたのは六年前のこと

二月二十六日朝七時十一分 わたしだけの秘密
まだ寝てる君にキスをした。

夜二時
みんな楽しそうに振舞ってるけど哀しくて辛くて苦しくて悲しくて
幸せって何だろう

夜三時
お酒に強いきみが珍しく酔っていた。わたしも酔っていた。
きみのマンションの前で
きみにキスしようとしたら
ちょっと顔を背けられてしまって
ほっぺたにふわっと触れただけ。
顔も見ずに走り出した。
うしろからきみの
ええええええ
という情けない声が聞こえた。
きみはいつでも自分のことは話さない人だった
自分の話ばかりしている私とは対照的な
そんなきみが自分の話をしたことがあった
初めて聞いた君の話
わたしはきみがその話をしてくれたことに
とても喜んだ
だって君も結局自分自身の未来を憂う二十歳で
それをいままで話さなかったことも自覚していて
ねえ、君の彼女は悲しんでいたよ
きみがその話を彼女じゃなくてわたしたち皆にしたことに対して
だから君と彼女は別れちゃったんだ
ねえ、わかってるの?
私が君のことをすごく好きで
彼女だって君のことをすごく好きで
でもね
いいの、私は

君がいつでも恋をして
それを失ったときに
帰ってくる場所になることにした
憂鬱になることもそりゃあるけど
きみはいつだって僕の元に返ってくる
そんな自信があるんだ
君にあった次の日に
悲しくて
切なくて
生まれて初めて
辛い
っていう感情を理解して
自分は臆病だなあって落ち込んで
でもね
洗濯して
洗い物して
シャワーを浴びたら
君からメールがきてたんだ
いなくなってないし
ってね
なんだか全部すっきりしちゃって
気が晴れて
爽やかな五月の風のおかげかもしれないけど
もういいか
って思えたんだ
諦めじゃなくて
納得
そして
解決
いつかまたきみが恋を失ったときに
僕の元に返っておいで
北海道に暮らす君は
いつだってぼくの心の中にいて
きっと
あのころのまま
情けない笑顔で
ぼくのことをみるんだろう
実家が同じ駅で
初めて一緒に帰った日の夜
僕たちは別れるのが惜しくて
駅のデッキで二時間も立ち話をしていた
ちょっと寒かったけど
でも
それもがまんできるくらい僕たちは一緒にいたかった
と思いたい
でも
うれしいのは
ぼくがそんなことをすっかり忘れていて
君はその次の日に
友達に報告したんだってね
あの子と二時間も立ち話したんだ
って
ぼくはほんとにそんなこと知らなくて
忘れてて
君の友達に言われて思い出したんだ
すごくすごく
嬉しかった
もしかしたらきみはもう
そんなこと忘れちゃってるかもしれないけどね
いつか話してみよう
それはいつのことになるのかわからないけれど
あの夜君が僕にしてくれた話は
悲しいというか
さみしいというか
あまりに普通の20歳のお話で
なんとなくほっとした
内容はあまり普通じゃなかったかもしれないけど
未来を憂えている
という点で
普通だったから
ねえ
安心したんだ
自分の将来を悩むのはみんな一緒なんだな
って思えた

きみの彼女は悲しんでいたけど
わたしは喜んでいた
悲しむきみの彼女と
それに気づいてか気づかずか
話を続けるきみをみて
ごめんね
自分
性格が悪いんだあ
ふふ
私だけの秘密

私だけの秘密じゃなくなったとき
私はあの恋を失うのかな
そんなことはないよね
わたしはずっと
君のことを好きでありつづける

きみが
そう
どんなに遠くで女の子と恋をしていても
ぼくがどんなにだれかと恋をしても
君は僕の中で
一生忘れられない大切な人

辛いという感情の意味を、
私は20歳まで理解していなかった。
もう何も知らない。
ずっと友達のままでいい。
いいの、
20年経っても30年経っても友達でいられるなら。
しんどいっていうか、まああれだ、だめだなあ自分、恋下手だなあ、どうすんのかなあ
結局きみののこと、好きなんだろうなあ

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