少年事件について

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少年事件はあまり好きではない。

仕事の好き嫌いを言っている場合ではないから,当番などで回ってくれば引き受けるけれども,好きではない。

少年が嫌いだからではない。

少年事件をやると,酷く嫌な気分になる。だから,好きではない。

私は,大事件を担当したことはない。今までやった少年事件は「捕まるの初めてなんです」「カンベ,初めてなんです」という人ばかりだ。

だから,彼らは,ものすごく不安だ。自分が少年院に行くのではないかと思っている。「行くわけねえだろ」と一瞬で思うような事件であっても,ご本人はひどくおびえている。

その気持ちをほぐすのも付添人である私の役目だと思って,励ましに行く。

私は,大人の事件でもそうだけど,面会こそが弁護や付添の基本だと思っている。少年はその要請が強いとも思う。

ある事件で,同じように面会をしていた。その少年は,逮捕された後,勾留場所が警察署ではなく鑑別所だった。年齢による区別だと理解しているが,長くなるのでそれは端折る。

頻繁に面会(接見)していると,少年が私にこう言った。

「鑑別所の人に,『弁護士に会うのもいいけど,警察の人の話も聞かないといけない』と言われたんですけど」

私が接見すると,その時間は私が少年を独占するから,警察は取調べができない。私も堺の鑑別所に行っているが,警察だって堺の鑑別所まで行って調べをする。

そして,これは先輩方の努力の賜物で,私も常に感謝しているが,警察は弁護士が来たら取調べを中断して弁護士に面会させる。

つまり,私が来たら,調べは止まる。

鑑別所の教官は,少年に,弁護士に会っている暇があったら調べを受けろと忠告しているわけだ。

本当は抗議しないといけないのだろう。

猛烈に抗議すべきなんだろう。

しかし,私はできなかった。

私は鑑別所に文句を言って,少年が鑑別所でひどい扱いを受けたらどうしよう。

そう思ってしまった。

こんなこと,ざらにある。

つい数日前まで受けていた少年事件。保護観察で終わったけれども,そこでも「鑑別所ってむちゃくちゃやな」と思うことが2つほどあった。

少年審判において,鑑別所も意見を出す。それがどこまでパンチがあるのか知らない。

鑑別所の意見がどのように形成されるかも,はっきりは知らない。

しかし,私が鑑別所に文句を言うことで,鑑別所の意見が悪くなったらどうしようなどと思ってしまう自分がいる。

だから,私は,少年事件が嫌いだ。

(この記事は以上です)

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