残留物

胸にチェロ痣がうっすらと残っている。もはや内出血ではなく色素沈着として茶色になっているだけだ。けれども限りなくこの跡を愛おしく思っている。二年半ぐらい続けていたチェロもお世辞にはうまいとはいえず、気ままに勝手にオケで弾いていただけであった。そんな私でもなんとなくこの痣でチェロをやっていたことを許されているような、証明を与えられている気がする。そんな印なのだ。まあ、人のチェロ痣なんて見たことないし、ネットにもないないから、勝手にチェロのせいとしているだけなんだけれども。

 こんな風に自分にとってなにかを証明するような跡を非常に好ましく思っている、
それはおそらく自分の口下手と関係しているんだろう。理論を考えて発話に至るのはかなりの得意分野だ。けれども、自分については壊滅的に分からないし、喪失した後にいつもひどく絶望するくらいだ。

言葉、言語の重みをときながら、発話を否定するのか、と言われそうだけれども実際は違う。むしろ気を使っているからこそ、言葉の儚さに哀愁を感じているからこそ、言語で表現できないものに心をとらわれているのだ。非言語であれば、逆にのびのびとする気質なのだろう。

ご飯代を出してもらったお礼として、「ぼくのメジャースプーン」を贈った。お金を返すだけじゃなくて、意味を込めたかった。そして私の伝えたいことにあっているような雰囲気だからだ。私の好きな彼を否定しないで、という気持ちを伝えられるような気がしたのだ。おそらくこの本の内容はそれではない。罪と罰という主題でこの本は私の伝えたいことを彼に伝えることはできるのであろうか、今度彼に答え合せしてみよう、
彼ならば、私が伝えようとしていることを理解しようとしてくれるだろう、
結局そこの信頼だ

だからこそ、彼から借りパクしているパーカーがこの上なく愛おしくて、好きなんだろう。そろそろ返さなきゃ、


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コーヒーが一番安価な文章の燃料なのでセブンイレブンの100円コーヒーをおいしいおいしいします、