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「方法論」と「STORY」

noteを始めます。

 ※公式ブログがあるのですが、あちらは脚本の書き方や勉強の仕方に特化した内容になっており、他のことが書きにくい感じになりました。こちらでは、それ以外のことを自由に書いて行きたいと思います。

 今回は「方法論」と「STORY」についてです。知り合いに聞いた話で、なるほどと思ったので、その人の許可を得てシェアします。

 人は何かを実現しようとしたとき「方法論」と「STORY」の二つの側面からアプローチしています。

 方法論とは何かというのはわかりやすいです。例えば脚本家になりたいときに、映画をたくさん見る、見た映画を分析してカードを作る、などの勉強法があります。これは方法論です。「目標達成のために具体的に何をするか」というマニュアル的なものです。誰でも何かを実現しようと思ったときには、どうすればいいだろうと思い、教室に通ったり参考書を読んだりします。そうやって学ぶ中で示されるものが方法論です。(方法論を自分で考案することもあります)

STORYは一人ずつ違うもの

 一方、STORYとは何かというのは、ちょっとわかりにくいです。これは「現実の中にある、その人独自の出来事の流れ」みたいなものです。映画や小説の中にある「物語」と区別するために、ここではSTORYと表記します。

 例えば僕の場合、元々映画が好きで映画監督になりたかったのですが、80年代にトレンディドラマが流行したとき、「テレビの連ドラを書く脚本家もいいな」と思い始めました。そして当時始まったフジテレビ・ヤングシナリオ大賞の受賞を一番の目標に定めました。連ドラを書くような脚本家になるにはこの賞を取るのが一番の近道に思えたからです。そして勉強しながら応募を続け、92年に第五回の大賞を受賞することが出来ました。その結果、連ドラを書く脚本家になるという目標は達成できたのです。

 僕が脚本家になる過程を方法論という観点で見れば、映画を見て、分析して、カードを作り、という方法論によって脚本のテクニックを身につけたことで脚本家になることができた、と言えます。

 一方STORYという観点では「トレンディドラマをきっかけにテレビの脚本家もいいなと思い」「フジテレビ・ヤングシナリオ大賞の受賞を目指す」というSTORY上を歩んだ結果、ヤングシナリオ大賞を受賞して脚本家になったのです。つまり、方法論とSTORYは同時進行していると言えます。

 方法論とSTORYの大きな違いは、方法論は誰にでもあてはまる一般的で汎用性があるものなのに対して、STORYはひとつずつがその人に固有のものだということです。教室で教わったり参考書に書いてあるのは方法論です。STORYは一人一人違うので教えるようなものではありません。

自分のSTORYを意識できるか

 人は方法論を意識することは多いけど、自分がどんなSTORY上を歩いているかをほとんど意識することがありません。「脚本をどうやって勉強したらいいんだろう」というのは誰でも思うけど、「自分はどんなSTORY上を歩んで脚本家になるか」などと考える人はあまりいないでしょう。

 しかし実はSTORYは非常に大事なものです。先に述べた僕の話で言えば、あのときトレンディドラマとの出会いがなければ、またあのときフジテレビ・ヤングシナリオ大賞との出会いがなければ、全く違う人生を歩んでいたでしょう。
 ある方法論に基づいて勉強している間も、「ヤングシナリオ大賞を受賞して連ドラを書きたい」という強い思いが原動力になっていたのです。

 何か目標を実現しようとしているとき、「どうやって実現するか」という方法論だけでなく、「自分はどんなSTORY上を歩んでゴールにたどりつこうとしているか」を、もっと意識していいのではないでしょうか。

 とはいえ、後から振り返って「自分はこういうSTORY上を歩んでいたんだなあ」と思うことは簡単ですが、自分が現在どんなSTORYを描きつつあるかを意識するのは簡単ではありません。この先何が起こるかわからないし、今起こった出来事がどれほど意味があるのか、重要性があるのかを意識するのは難しいことです。

 ただ「自分は目標達成までのSTORYを描きつつある。それはどんなSTORYだろう」ということを意識していると、起こった出来事に対して「この出来事は自分にとってどんな意味があるのだろう」などと考えることが出来るのではないでしょうか。またある選択肢を与えられたときに、どちらを選べばよいか直感が働きやすくなったりするのではないかと思います。その結果、目標を達成できたり、よりよい結果を得たりできる可能性が高まるのではないでしょうか。

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