謎解き公演のスタッフのお話

※この文章は「謎制作者&謎クラスタの謎解きについてのアドベントカレンダー」(https://adventar.org/calendars/2700)の11日目として書かせていただいております。このような機会を提供していただき感謝いたします。

皆さんこんにちは。

多分お前誰やねんって方が多いでしょうから、簡単に自己紹介をいたします。私は謎解き制作団体ENIG-ROIDに所属するMilksouP(ミルクスープ)と申します。リアル脱出ゲームに参加を始めて4年ほどになります。TwitterやFacebookなどをやってませんから知らない人が多いと思いますが…。

ですから、私を知ってる!という人はENIG-ROIDの公演に来ていただいて偶々スタッフを務めているところを見たという人に限られると思います。ますますお前誰やねんって感じですが…。まぁ、謎制作者を名乗っても許される立場の人間ではないかと思って参加させていただきました。

で。

某氏のブログでアドベントカレンダーなる企画を知った十分後には登録ボタンを押してしまっていたのですが、この時点では何を書くか全く決めてなかったんですよね。近年の謎界隈に対して鋭い考察ができるわけでもないし、面白い語り口で話せるわけでもないし。そもそもWeb上に文章書くの何年ぶりだ…。

面白そうだと思うと無計画で突っ切ってしまうこの性格、時たま不便だなぁと思いながら何を書くか考えていたのですが、謎解き公演における「謎」以外の重要な要素だと私が思う「公演中のスタッフ」の話をしようかと思います。特にスタッフの楽しいところと、その楽しさを支える部分の話になりました。

後は、少し邪ではありますが自作のWeb謎の宣伝をさせていただきたいと思います。

以下、ちょっと偉そうに書いてますが、あくまで一個人のあっさりとした視点だと思って最後までお付き合いいただけると嬉しいです。


・公演スタッフの分類


※以下はあくまで我々の分類です。あくまで一例だと思ってください。他の団体にもこれが当てはまるとは限りません。

まずはスタッフの分類です。公演を作って、いざやるぞ!って時にどういうスタッフが必要かっていう話ですね。大まかに分けて、

・GM(ゲームマスター)

・暗役(ヒント出すマン・机間巡視マン)

・キャスト(登場人物)

・裏方(音響やスライドの切り替え)

こんな感じでしょうか。時たまGM=キャストな公演や、GMがその仕事をしながら裏方作業をこなすというブラックな感じの公演もありましたが、基本はこの4つです。このうち裏方はゲーム中は暗役か休憩をしていることが多いので省きます。仕事も地味だしね。

じゃあ順々にどういう仕事か見て、その楽しさを伝えていくことにしましょう。


・GM(ゲームマスター)

ゲームマスターは、ゲーム全体の進行管理及び司会を務める役割です。ゲーム途中は暗役として参加者を巡視することも多いです。

「みなさま、ようこそいらっしゃいました。私、このゲームのゲームマスターを務めます…」って言ってるあれです。個人的な意見ですが、「このゲームの”ジーエム”を務めます…」って言うと伝わりにくいからやめた方がいいと思います。

この役割に当てられると、まずそこそこ量のある台本をある程度暗記する必要が出ます。台本ガン見しながら喋る人とか、喋ってる途中に台本チラチラ見てただテンポ悪くなる司会とかいやでしょ?(「間」を開けるのとはまた別の話)

もちろん、公演中台本をバインダーに挟みながら司会することもありますが、それはあくまで「保険」です。頼みの綱にすべきじゃないです。

お客さんの方を見ながら喋らないと何にも伝わらないので…。

後述する暗役の中心みたいなこともしており、特にNFなど、謎クラスタばかりが来るわけではない公演では全体を見渡し「あそこのチームは初心者で固まってる」「あそこは謎クラ」みたいな判断をして暗役がどこを重点的に見回るべきかを考えたりします。謎クラと初心者が混ざり合っているチームは、慎重に進捗管理を行って、どっちも満足してもらえるように努めています。

この役割の醍醐味はやっぱり「自分の言葉でお客さんが反応してくれる」というところにあるでしょう。自分が喋るその一言でお客さんが笑ったり、驚いたり、真面目な顔になったりする、それを見ると「あっ、楽しんでもらえてるんだなぁ」って少し幸せになって、それでGMしてよかったなぁと思うわけです。

声の緩急も、喋り方も、お客さんにどう感じてもらえるか、というのを重視して練習していると自然と楽しくなってくるものです。

・暗役

この呼び方って一般的なのかな?ENIG-ROIDではキャストでもGMでもないが、公演中机間巡視などを行って参加者の状態を把握し、適宜補助行為を行うスタッフを「暗役」と呼んでいます。

この役割に当てられると、まずは公演中に登場する全ての謎を把握する必要があります。聞かれて「えっ、その謎知らんで」とかいう暗役がいたら殴り飛ばしたくなりますからね…。

で、公演中ヒントを求められたとき、あるいはヒントを出さないとまずいなと感じた時に適宜ヒントを出したりするわけです。どういう基準でヒント出すかは公演によってそれぞれメンバーで相談して決めています。何分経ってこの段階まで来てなかったら示唆するとか、そんな感じです。

この役割ですが、「お客さんが謎を解いている姿を間近で見られる」という一点に楽しさが集約されていると思います。ある意味謎制作者が一番歓喜することじゃないかと思います。

自分たちの作った謎でじっくり悩んでもらって、解いてもらって、その時に現れる喜怒哀楽の感情を間近で見られるだけでも作り手として嬉しいのに、時たま「この謎好き」ってぽつり言ってもらえたらもう無上の幸せですよ。

適切な表現かは分かりませんが、作り手と解き手の間で会話しているような、心が通じ合ったような、そんな嬉しさを僕は感じることが多々あります。

先ほども述べたように、GMはこの役割を兼ねることが多いですから、GMはやると二重の意味で楽しい役割なわけです。


・キャスト

その公演の途中に登場する人物を演ずる役割です。その謎解きの世界観を構成するうえで最重要な役割です。

この役割をやるとなると、まず台本を覚えることになりますが…ここで1つ、GMと大きな違いがあります。登場人物をやる時、その人がバインダーを持っていても不自然ではない役柄であることは少ない、つまり、保険として台本を持っていることができないことがままあるということです。

だから文字通り、全てのセリフを暗記する必要があります。万一、言い忘れたセリフの中にラス謎へ繋がる重大な情報でもあったら「死」です。責任重大。(これはGMもそうですが…。)

後はある程度の役作りも必要です。見た目変えろとか無理な話をしてるわけではなくて、声の高低、喋る速度を調節することである程度役柄を表現できるからやってみよう、という話です。野太い声で喋る若い兄さんとか、めっちゃ元気な長老とかいたらそれはどうなんってことです。

この役割は「お客さんと直接触れ合えること」にその良さがあると思います。演技する楽しさにも関連するのですが、お客さんの側から茶番を振ってきてもらったりして、それにうまい返しができてお客さんが喜んでくれると楽しいものです。

後は、素っ頓狂な役柄をやる時のお客さんの反応は面白いです。「頭悪い」って一言が誉め言葉になる瞬間ってやつですね。

暗役とは違って、その作品の中の人物として振舞えることでお客さんの反応をダイレクトに受けられるのは、キャストという役割にだけ許された特権でしょう。

・結局スタッフの楽しさとは?

ここまでつらつらと書いてきてやはり思ったのですが、謎解き公演のスタッフは、お客さんがいるからこそ成立する楽しさだなぁと。全部、お客さんが謎を解いたり、お客さんと会話する中で生まれる楽しさだな、と。

何を当たり前のことを、って感じですが、私たちは何故か作っているときにこのことをよく忘れているんですよね。制作が義務であるかのような思考に囚らわれてとにかく謎を作ることに執心することもままありました。

一度、そうしてできたものはデバッグ時のウケが絶望するほど悪かったのをよく覚えているし、逆に何が楽しんでもらえるのかを考えて作った公演は、制作が短期間でも素晴らしい公演になったと思っています。

何をするとお客さんに楽しんで帰ってもらえる謎解き公演になるのか(大衆に迎合するという意味ではない)、謎解きという切り口からどうすればお客さんを楽しませられるのか、こうしたことを念頭に置いた公演制作ができると、よりスタッフも楽しいし、お客さんも楽しい公演になるのかな、と。

それから、謎作成のスキル向上は第一としても、公演する以上、ある程度の演技力と喋りの技術力がないとお客さんには楽しんでもらえない、ということは覚えておきたいです。軽視しがちな人が多い(あくまで私の周囲に)ような気がするので、これは大事かなぁと思います。

私含め謎を作る人は誰であれ、どんな形態で作る人でも、必ず謎を介して自分の中の何かを伝えたい人たちだと私は考えています。だからこそ、独りよがりで終わらないように伝え方を考えて公演が出来たら、と思います。

そんな感じでこの文章は終わりです。読んでくださってありがとうございました。


【宣伝】

私が11/26に公開したWeb謎「届けたい言葉」(https://nazowotokuhito.wixsite.com/icantforget)の宣伝をさせていただきます。

先日、GREEのソーシャルゲーム「アイドルマスター ミリオンライブ!」のサービス終了が告知されました。ソシャゲ苦手なんで直接はやってなかったんですが、昔からこの作品のCDシリーズを楽しみにしていた1人のファンとして、この報は少なからずショックではありました。

そんな中、当時ENIG-ROID内部ではNF(京都大学11月祭)に向けて個人謎制作の機運が高まっておりまして、その影響を受け、お世話になった作品に感謝の意を込めて謎を送りたいと思い、制作に至りました。

是非、解いていただければ幸いです。

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