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江古田リヴァー・サイド64
Fools on the Planet「ナンデ! ワタシ! コンナコトしなきゃイケナイ!!」
ギャース! という怒りの声が聞こえそうな程に怒髪天を衝く状態の一琳さんを、尹さんがいつもの調子でなだめる。
「えー♪ だって、鷺沢清隆氏に面が割れてない女の子って、一琳しかいないし〜♪」
超ミニのチャイナドレスから惜しみなく伸びる美脚と、きわどいスリットから惜しみなく覗きそうになる『貴い何か』、
江古田リヴァー・サイド 63
「仁美、どうした?」
「んー、ちょっとね……」
「?」
「話せる時がきたら、コーイチにはちゃんと話すから。で? どうするの? 正攻法じゃダメっぽいって理屈はわかったけど、それだけ言うなら対案、あるのよね?」
仁美の言葉に、尹さんと呂大人は顔を見合わせ、ニヤニヤと笑う。
そんな二人を一琳さんは、「ああ、またか」という目で見ている。一琳さん曰く「マゼルナ危険」な二人……何を企んでいるのか……
江古田リヴァー・サイド 62
「腹をくくったようだね」
尹さんの言葉に、ヨージと玲さんはこくりと頷く。
「事実婚でもパートナーでもなく、法律婚を選ぶということは、インパクトも最大になる。良い意味でも、悪い意味でもね」
「それはわかっているよ」
「GIDの部分を差し引いても、一人の女の子としては充分過ぎる人気が、既に玲ちゃんにはある。この部分は成功と言っていい。オネエ芸能人こそ多いけれど、この国にはそれ以外のセクシャル・マ
江古田リヴァー・サイド61
青島(チンタオ)を呷り、羊肉串をクッチャクッチャと咀嚼しながら、呂大人は円卓に座るオレ達をぐるりと見やり、言った。
「で、鷺沢清隆と一戦交えようと、そういう訳なんだな?」
やはりエスパーか!? 当惑するオレを尻目に、ヨージが切り出す。
「呂大人、僕は……」
「鷺沢洋司。鷺沢清隆の息子。で、『オッサンホイホイ』なカヴァーで人気の『アルコ・アイリス』のキーボーディスト『DJ YO-様
江古田リヴァー・サイド60
「尹、呂大人にナンの用カ?」
「んー、込み入った話www」
「冗談ダメ! 尹、モウ危ナイコトヤメて!!」
「一琳、呂大人は別にアブナイ人じゃないよー?」
「アブナイ! 呂大人、ピンではダイジョブ。でも、尹とはマゼルナ危険!!」
「塩素系漂白剤と酸性洗剤じゃないんだから…...」
何故だろう? と不審に思い、オレは尹さんに尋ねる。
「いや……そこまで会いたいなら、別に一琳さんに頼まなくても、尹
江古田リヴァー・サイド59
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「「「「っっカーーーーーー!!」」」
白酒を一気に呑み干したオレ達は、クミンのスパイシーな香りと味の羊肉を頬張りつつ、『餃子は飲み物です!』とばかりに水餃子をちゅるりんとドリンクし、男子中学生並の食欲で目の前の皿を平らげていった。ミーティングがてら、という名目は、最早完全に立っていなかった。
「董さーん!干し豆腐炒めと醤大骨追加ーーー! あと青島!」
董さんはこちらを一瞥し、右
江古田リヴァー・サイド58
Exodus「なーんか意味わかんないんですけどー!」
ぶー、と仁美がぶーたれる。
尹さんは、もう何も語る気はないようで、シケモクを銜えたまま何時ものヘラヘラとした笑みを浮かべてカーステのヴォリュームを上げる。レゲェの神が唄う闘いの唄をBGMに、車は5号池袋線を走る。東池袋の出口を降り、サンシャインを掠めて右折し、高架下を走らせる。バベルの塔の如き焼却場の煙突を右手に大きなカーヴを描く陸橋を
江古田リヴァー・サイド56
「ぬかせ! 洋司といい貴様といい……生温い理想論で事物が動くなら、世は既に諍いも潰し合いも殺し合いもない理想郷であるだろうよ! だが現実はどうだ? それが答えだ。 他者を排し、勝ち残る力のない者は黙って喰われるだけのこと。 それが世の理だ」
一転、劣勢となったこの状況にも屈せず、清隆氏は応える。
「でもその弱者に、あなたは今追い詰められてるね〜♪ とって喰われてみる? 鷺
江古田リヴァー・サイド55
「操!! 坏蛋贱婢!! 操你妈!!」
ヨージを組み伏せていたチャイナマンが跳ね起き、尻ポケットのシチリアンスチレットを抜きながら仁美に迫る!
とっさに庇おうとするオレの横を疾風が駆ける。スピーディーな打撃が数発、正中線にきっちり決まる。ハードヒットを喰らったチャイナマンは、信じられないものを見るような顔で、相手を見る。オレも、今見ているものが信じられなかった。
「高野ッッ!!」
江古田リヴァー・サイド54
鷺沢清隆の知る鷺沢洋司。それがどういうものであるかは、なんとなく想像がつく。
決して綺麗事では済まない世界に居たであろうヨージだが、その境遇とは裏腹に、恐ろしく情に厚い浪花節な男だ。ヨージとの付き合いは決して長いとは言えないが、この恐ろしく優しい男が、こういう局面で取り得る行動は一つ……
「……確約が欲しい」
「ヨージっっ!!」
組み敷かれたまま、文字通り絞り出すように
江古田リヴァー・サイド53
清隆氏は頭を振り、
「そうか…...では致し方あるまい。」
と言うと、昨今あまり見かけなくなったストレート型のガラケーを取り出し、何処かへコールし、通話を始めた。
『私だ……首尾はどうだ?......では、出してくれ』
スピーカー通話の状態で、清隆氏はこちらに携帯を向ける。
このテンプレートな状況から導き出されるテンプレートな展開が始まろうとしている。
『ちょっと! 触んないで
江古田リヴァー・サイド52
「大いに求めるね! まず、高野はどうした!」
「高野には暇を出した。子守もできん無能者に用はない」
「アンタのアタマの中には、労基法の基本も入ってないのか? 労働者の即時解雇なんてあり得ない。労働契約法16条に照らせば、妥当性を欠く解雇は無効だ。仮にそこをスルーしたとしても、少なくとも30日前の予告が……」
「お前こそ法を知らん。30日間予告が無い場合でも、30日分の賃金を支
江古田リヴァー・サイド51
スライドドアが開く。助手席に座っていた男に促され、オレたち4人は車を降りる。
海沿いのターミナルには、無数のコンテナが置かれている。様々な色のコンテナの迷路を、前から先導され、後ろから小突かれながら進んでいくと、潮風に混じって甘く深い香りが漂ってきた。
三方をコンテナに囲まれたどん詰まりに、その男はいた。
彫りの深い、濃い顔立ちに無精髭。夜だというのに濃い色のレイバンのアヴィエイター