「おれら」当事者のアイドル~ZOC~前編

*本稿は、読者が「おれら」という概念を理解していることを前提に書かれています。まずはコチラ↓をお読みいただき、「おれら」という概念についてのご理解をいただければと思います。

知り合いの女性に「OZZYさんって大森靖子ちゃんとか好きそうですね」と言われ、「なんで知ってるんですか?」となったことがあります。

数年前YouTubeで「絶対彼女」のMVを初めて見て、サブカルクソ眼鏡の性癖に直撃し、「やべぇ好き」となって以来、OZZYは大森靖子ちゃんのファンです。
彼女は、「瀧じゃない方のピエール・サンプラザじゃない方の中野」こと、「凛として時雨」のドラマー、ピエール中野さんの奥さんでもあります。
その大森靖子ちゃんが「共犯者」を務めているアイドルユニットが、ZOCです。
アイドルにハマったのは、約30年ぶりです。

大森靖子ちゃんのライブに行ったことはなく、ZOCも最近ファンになったばかりなので、見事なまでのニワカなのですが、彼女達のデビュー曲に強い共感を覚え、ググッと惹き込まれてしまい、どうしてもOZZYなりのやりかたで推したくなってしまいました。
完全に愛と2次情報と、OZZYが補足できた限りのインタビューや映像等からの情報とあと愛だけで書いたものなので、確実性や正確性に欠ける表記内容があるかもしれません。予めご了承ください。

はみだし当事者の等身大の共感

OZZYの考えるZOCの大きな魅力は、メンバーのひとりひとり(共犯者≒プロデューサーである大森靖子も含め)が、それぞれの個性や事情で「ふつう」からはみだしてしまった人たちであり、現在進行系で何かを「拗らせている当事者」でもあり、そんな彼女たちがステージに立ち、コンプレックスや傷を抱きながらも、それぞれの自己肯定感を形成しようとしている姿です。

プロフィール、SNS、楽曲、パフォーマンスを通して見えてくる彼女たちの「闇と病み」。そしてそれを乗り越えていこうとする姿への共感が、同じように何らかの理由・事情で「普通」からはみだしてしまったひとたち(≒「おれら」)の心に刺さるのかな、と思います。
ファンの一人であるOZZYがZOCに惹きつけられたのは、まさにその点です。

メンバーそれぞれの「闇と病み」

ZOCのメンバーは、それぞれに大きな闇(病み)を抱えています。
生い立ちも経歴も、下手なヲッサンよりもよほど「濃い」ものがあります。
OZZYが得られた限りのメンバーひとりひとりのプロフィールを紹介していきます。

【ZOC001 藍染カレン】

講談社が主催する、ミスiD2018大郷剛賞の受賞者です。
ルックスとスタイルだけを見れば、「この人のどこにコンプレックスを抱く要素があるのだろう?」という程に整った容姿ですが、ミスiDオーディションの際の自己PR動画からは、自己肯定感があまり高くない印象を受けました。

ハロプロのアイドルが好きで、幼い頃から動画を見ながら自室で歌って踊っていた彼女は、整った容姿もスタイルも、高レベルのダンスも歌唱力も、誰にも見せることなく引きこもっていたようです。彼女のダンスを見ると、他者からの承認を得ることなく、ただ「好きだから」という情熱だけで、ここまで研ぎ澄ますことができるのかという驚きを感じます。

彼女は小5~中1の頃の友人に苦手意識と劣等感を感じ続け、その友人に何も言わずに引っ越してしまったことをずっと心に引きずっていたそうです。
ミスiDのオーディションにあたり、引きこもり時代に得たインターネットスキルを駆使してその友人のTwitterアカウントを探し出してフォローし、DMを送り(「我ながら気持ち悪いと思います」と発言)、再会を果たし、苦手意識を克服することができたそうです。

びふぉー

あふたー

ZOC以前は、「禁断の多数決」という音楽ユニットに所属していたものの、実質的な活動はまったくないまま脱退となってしまいました。

カレン様素敵だよカレン様。

【ZOC002 戦慄かなの】

ミスiD2018サバイバル賞受賞者。
おそらくメンバー内で最も有名なのが彼女だと思います。
「アウトデラックス」等のTV番組にも多数出演していますし、ネット上でも様々な場所に関連記事が落ちています。

虐待(ネグレクト)→イジメ→自殺未遂→JKビジネスの元締め→少年院入所→入所中に高卒認定試験合格&各種資格取得→大学生兼アイドル兼NPO法人代表

という、もうどこからツッコんだらいいのかわからない経歴の持ち主です。
実妹の頓知気さきなとともに、”femme fatale”というアイドルユニットとしても活動しています。

【頓知気さきな】

ZOC以前は、”のーぷらん”というグループに所属するも、大学受験のために3ヶ月で脱退しています。
大学生、NPO代表、2つのアイドルグループでの活動、公演、インタビュー、執筆……etc
とんでもないバイタリティだと思います。
少年院入所中に高認と、秘書検定や漢検準一級などの資格を取得したということですが、彼女がTVや動画等で話すところを見ていると、地頭の良さをとても強く感じます。

彼女のプロフィールの詳細については、メディアへの露出がメンバーで最も多く、ネット上の情報も多数あるので、OZZYのようなニワカが語るまでもないかもしれません。

少年院あがりという経歴から、コワモテな印象(実際Twitter等はかなりヤバい)ですが、歌声がかなりかわいらしく、そのギャップにも魅力を感じます。

びふぉー

あふたー

かなのちゃんファビュラスだよかなのちゃん。

【ZOC003 香椎かてぃ】

ミスiD2017大森靖子賞受賞者。
ZOCでは「治安」を担当しています。
よくわかりませんが、治安担当だそうです。
ZOC以前は、"meltia"というロリータアイドルグループで1年3ヶ月ほど活動していたようですが、フリフリの衣装に幼い顔立ちと、現在の容姿とはかなりのギャップがあります。
彼女はおそらく、戦慄かなのの次にメディア露出の多い子だと思います。
彼女もまた、戦慄かなのに匹敵する経歴の持ち主です。

兄が暴走族のヘッドで、たびだび暴力をふるわれていたようで、ミスiDのオーディションでは

「道路にこう引っ張り込まれて、ゴーン! ってアタマ、ゴーン! ってなってー、痛くてー、もう病院ですよ! ……病院に行ってー、足? ちょっとやりました。 あのー、ひび? ひび。ひび割れ? みたいな(語彙力)」

と発言していました。

兄の暴力に耐えかねて上京した際には住むところがなく公園に住んでいたことがあり、見るに見かねた吉田豪氏が部屋を提供したこともあったようです。
ZOCのメンバーになった後、葵時フィン(結成直後に脱退)と共同生活を始めるも、「まず共同生活をできる人間じゃなかった(大森靖子談)」ようです。
葵時フィンが早い段階で脱退したため、その後は一人暮らしをしています。

学校の勉強にはあまり適正がないようで、高校2年生で留年。658人中658位(白紙答案ではなく、彼女なりに頑張った結果で)という成績だったそうです。

ミスiDのPR動画では、「かなりの天然」という感じのキャラクターでしたが、現在のビジュアルはバッチバチのヤンキー風です。
「どうしてこうなった?」と問いたくなるレベルですが、本人は「3年もあれば誰でも変わりまっスよー」と言っており、実際、このくらいの年頃は、男女問わず一番変化の多い時期ですよね。

びふぉー

あふたー

あくまで「ヤンキー風」であり、ヤンキーなのは彼女の兄で、彼女自身はヤンキーではないようですが、「ヤンキー文化圏」の香りは強く感じられます。
メンバーで(おそらく)唯一の喫煙者でもあり、インスタやTwitter等でもくわえタバコ姿の写真が多いですね。

(2019.5.15加筆 恐らく戦慄かなのも喫煙者です)

また、非常に高い絵のセンスを持っており、彼女の絵には独特の世界観が感じられます。

かてぃかわいいよかてぃ。

【ZOC004 西井万理那】

メンバーの中では唯一、ミスiD出身者ではないのが西井万理那です。
大森靖子がZOCのメンバーとして最初に誘ったのが西井万理那のようです。
元々は”生ハムと焼うどん”というセルフプロデュースアイドルユニットとして、日本芸術高等学園時代の同級生であった東理紗とともに活動していました。
高校在学中も”あにば~す”というアイドルユニットで活動していたようです。

”生ハムと焼うどん”は、セルフプロデュースでありながらTOKYO DOME CITY HALLで3,000人規模のワンマンライブを行うほどの実力とセルフプロデュース力を持つユニットでした。
YouTubeにいくつか”生ハムと焼うどん”のライブ映像がありますが、寸劇のクオリティが高く、個人的には、下手なお笑い芸人よりも笑えました。
断食(活動休止。事実上の解散)の理由は金銭トラブルだったようですが、非常に残念だったなと思います。

ZOCの活動と並行して、”APOKALIPPPS”というアイドルユニットを結成。ぱいぱいでか美等を加えた6人で活動しています。

西井万理那のすごいところは、どの活動も事務所に所属するのではなく、自分でプロデュースしているところです。
また、”生ハムと焼うどん”で、若くして成功し、その後友人であった相方と金銭トラブルで決裂という、かなりハードな経験をしており、恐らくメンバの中での精神年齢は一番高いのではないかと思われます。
下手なおじさんより、よほど苦い経験を積んでいるのだろうなという雰囲気を感じます。
トークでも、割と自由な他のメンバーとはまた違った「したたかさ」のようなものを感じます。
大学に通いながら専門学校にも通い、アイドルとしての活動も行うというバイタリティもすごいです。

にっちやんちゃりーんだよにっちやん。

【ZOC005 葵時フィン】

ミスiD2019ファイナリスト。もともとはミスiDの運営側にいた人物のようです。
既に脱退済みのメンバーで、在籍期間は1ヶ月弱。デビュー前に脱退してしまいました。
彼女について語ることが、果たして良いことなのか、計りかねるところもありますが、葵時フィンの脱退は、ある意味「ZOCという居場所の危うい部分」の象徴とも言えるので、考察しておく意味はあると考えます。

彼女の脱退は、円満脱退ではなく、かなりゴタゴタしたようです。
大森靖子が、「脱退の理由は明かせない」と発言しているので詳細については不明ですが、当時の大森靖子のブログに綴られた内容から、大森靖子の憔悴と、なにがあったのかの輪郭がおぼろげに見えてきます。

恐らく彼女は、他者から向けられる愛情や友愛、好意(厚意)に対して、猜疑心を抱いてしまったのではないかと思います。
OZZY自身、高校時代~20代後半まで、狂犬のような心を拗らせていたこともあり、この感覚は、少しわかります。

「自分なんかに、そんな温かいものが与えられるはずがない」「何かの間違いだ」そして「だから試す」「『本物』ならば、この程度でこわれないはず」

と、自分の中でサイクルが回ってしまう。
自己肯定感、自己評価の低い人間は、このサイクルに陥りがちです。

そういう心情を、大森靖子は理解していたようです。
しかし大森靖子自身も、けっしてメンタルの強い人ではないので(OZZYはそこも魅力と感じています)、葵時フィンに肩入れしていくことでどんどん他のメンバーとのバランスが崩れ、しんどい状況だったことは、想像に難くありません。
そういう状況で、決定的な「なにか」が起こってしまったのでしょう。
既に削除されてしまった葵時フィンの、脱退に関するツイートに対しての戦慄かなののリプライが、彼女たちの間に修復不可能なレベルのことが起きたことを物語っています。


【ZOC006 兎凪さやか】

ミスiD2018ファイナリストです。

ビジュアルはメンバー1「アイドル然」とした雰囲気ですが
「自撮り詐欺」
「女子108のコンプレックスを持ち、そのすべてを『カワイイ』に変え突き進む、女子の共感を呼びまくる共感力の天才」

という触れ込みで、見た目を裏切る一筋縄ではいかない印象を受けます。

よく見るとピアスバチバチだったり、涙袋を強調するメイクだったりしますし、インスタライブでよくメイク関係の配信をやっていたり、涙袋のヒアルロン酸注入をしていることを明かしていたり、インスタストーリーの質問も女性からのものが多かったりと、彼女自身の考える「かわいい」に近づこうとする姿勢からか、本当に女性ファンが多い印象です。

一方、可愛くない(彼女の中での理想の「かわいい」に届いていない)自分へのコンプレックスが非常に強いようで、インスタライブで「自撮り写真と顔が違う」と言われて泣き出してしまったり、CHEERZの彼女のページをみても、色々なことに傷つきながら生きている姿が垣間見えたりというところには、彼女の弱い部分も見て取れます。


しかし、そこで折れることもないのが彼女でもあります。
ツイートや発言にも、「かわいくあろう・ありたい」とする女子へのリスペクトが感じられ、そういったところも同性の共感を呼ぶのかもしれません。

デビュー曲”family name”のカップリング曲、”チュープリ”は、「さやぴ{兎凪さやか)をテーマにした曲」らしいですが、女子のいわゆる「めんどくさい」部分が描かれています。

ミスiD2018時のPR動画

ぜnさやぴ尊いよさやぴ。

続きは次回

メンバー紹介だけで既に5,000文字を超えてしまったので、本編は後編で。
彼女たちのプロフィールを踏まえた上でないと、どのあたりが「おれら」の話なのかが見えてこなくなってしまうので。

後編へ→


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