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遊戯王とエジプト考古学①

2000年から04年にかけて放送された「遊☆戯☆王デュエルモンスターズ」(全224話)は、次回予告でネタバレしてしまう「城之内死す」が今でもネタとして使われるほど親しまれている。実は、人気アニメとなった背景には、カードゲームが大ヒットしたことがある。カード化される前の1998年のアニメ化はわずか半年で終了してしまっているのだ。

アニメ中でも現実世界でも切り札として使えるのが魔法カード「死者蘇生」だ。墓地にあるモンスターなら何でもフィールドに呼び戻せる。大量のカードがある現実のゲーム環境(2021年)でも「とりあえず入れる」で十分活躍できる。相手の墓地からでも蘇生ができるため、一発逆転もあるのだ。

そんな遊戯王を代表するカード「死者蘇生」だが、死者蘇生に描かれているマーク、ご存知だろうか。これは古代エジプト語で「ankh(アンク)」と読む表音文字である。ほぼ無傷で発見された王墓、ツタンカーメン(在位前1363頃〜、トゥト・アンク・アメン=アメンの生けるしるし)の「アンク」でもある。

アンクとは古代エジプトでは聖なるものの象徴とされ、ファラオ(王)の中にはこのアンクという単語を名前に組み込んだ者もいた。その代表的な人物がトゥト・アンク・アメン(Tut-ankh-amen)ということだ。

かつて私も多用したカードに「ガーディアンスフィンクス」がある。スフィンクスはエジプトにある石像をさすが、その名称はエジプト神話やギリシア神話、メソポタミア神話などに登場するライオンの身体と人間の顔を持った神聖な存在(あるいは怪物)であることから名付けられており、かつて何と呼んでいたかは不明である。

「ヒエログリフの石板」なる魔法カードも存在する。ヒエログリフ(hieroglyph、神聖文字)とは、神官文字やデモティック(民衆文字)と並んで古代エジプトで使われた3種のエジプト文字のうちの1つだ。エジプトの遺跡に多く残されている。しかし紀元前4世紀ごろまでに読める人もいなくなってしまった。

このヒエログリフを読める端緒を築いたのが仏考古学者のシャンポリオンだ。「古代エジプト学の父」として知られる。ナポレオン・ボナパルトがエジプト遠征を行った際、エジプトの港湾都市ロゼッタで再発見された「ロゼッタ・ストーン」から解読につながった。

ロゼッタストーンには古代エジプト語の神聖文字(ヒエログリフ)と民衆文字、ギリシア文字の3種類が刻まれている。ここから他の古代エジプト語の記録も解読が可能になった。

いおところで、この碑文の内容は、紀元前196年にプトレマイオス5世によってメンフィスで出された勅令が刻まれた石碑の一部である。

「父の王位を継いだ若き者、エジプトの守護者、敵に対し常に勝利を収め、王国全土に文明をもたらした……不死なる統治者、プタハ(エジプトの創造神)に愛されたる者であるプトレマイオスは、その治世第9年にあたりこの勅令を発布した」

遊戯王の「ヒエログリフ」は1000ライフポイントを払えば、そのデュエル中、自分の手札制限枚数が7枚になるという効果だ。これもファラオの命令ということか。

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