Novelber 26th—銀世界の手前で

 秋晴れに冬の白さが透けている。
 薄い雲には空気と光と果樹の色が揺蕩っている。
 ロシアン・ブルーの冷たい被毛が肌を撫ぜては逃げていく。
 広々とかわいた公園で小さな青が駆けている。ぱちぱちと擦れるたびに発光する、110cmのフリースジャケット。
 桃のように繊細な血管をもつまるい頰。焼きたてのパンのように軽く、白く、はずむ息。
 走る。転ぶ。走る。しゃがむ。拾う。投げる。拾う。集める。
 風を目で追う。枯葉を聞く。滑り台の手すりのつめたさ。シーソーの軋みの寂しさ。
 午後四時の陽は飲み残したオレンジ・ジュースを思い出させる。
 あなたの手のちいさな厚み。吐息のしめりけ。
 滲み出るあなたの体温に、冬の訪れをそっと感じる。

Novelber 26 お題「にじむ」

※お題は綺想編纂館(朧)さま主催の「Novelber」によります。


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