Novelber 21st—明日は貝を買って帰る日
重い荷物をがんばって持って帰ってきたのに、ボクは今、怒られている。
「わたしも君も、お酒はほとんど呑みませんよね。どうしてこんなに買ってきてしまったんですか」
ボクが正座して、キミが立っているから、キミがすごく大きく見える。膝の上に抱えさせられた瓶が重い。
「解禁日だったから……です」
「それは知っています。君のことですから、つい浮かれて買ってしまうのは仕方ないでしょう。……でも、なぜ……」
ボクの膝には、フルボトルのワインが二本。キミの指がその片方をさした。
「白ワインまで買ってしまったんですか」
(750ml + ガラス瓶の重さ) × 2 = 2kgくらい、……かなあ。足がしびれてきた。これを言ってもキミの怒りはおさまらないとわかってるけど、素直に答える。
「赤いのばっかりちやほやされてて、かわいそうだったから……」
え、とまるくなるキミの目。へなっとしゃがみこむキミの足。
「……ボジョレ・ヌーボーはそういうものです。……もう、怒るのがばかばかしくなってきました」
「……ごめんね」
ぽん、と頭に手が置かれる。キミとおなじ目の高さ。
「ごはんにしましょう」
じわっと柔らかい豚肉のロースト、ブロッコリーやプチトマトを添えてコショウを効かせたマッシュポテト、洋梨とクリームチーズのサラダ。
ワイングラスを傾けてふっくりと笑うキミ。
今日のボクの衝動買いは、どうやら見透かされていたみたいだ。
Novelber 21 お題「ボジョレ・ヌーボー」
※お題は綺想編纂館(朧)さま主催の「Novelber」によります。
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