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BFC5決勝の勝者は以下のファイターに決定しました。


「お会いしましょう」蜂本みさ



ジャッジ評 野村金光


初めに、私は鳴骸「庭には」を2点、蜂本みさ「死にの母」を5点とジャッジした人間です。自らの視座をフラットにするため「庭には」を高く評価していた子鹿白介様、綾門優季様、世界彗星灯台プールサイドアサルトライフル様の評は特に慎重に読み直し、なるべく私自身の好みを漂白してジャッジするよう試みていますが、それでも論に偏りがあると思います。ご容赦ください。
 
① 序論:日常性と不条理について
鳴骸「ヴィゴ」、蜂本みさ「お会いしましょう」は、①舞台=屋内完結(静的)/移動中(動的)、②語り部=観察者/会話者、③中心的アイデア=有名性/匿名性、など構成要素の多くが対照的である。しかし、両作に共通する確固としたイメージも存在し、「日常を侵食する不条理」はその代表であろう。
 日常性と不条理は、自然主義的な私小説の発展と実存主義の影響が著しい現代日本文学において王道の主題の一つである。日常性を①家庭的(イド的)営み、②世間的(エゴ的)営み、③社会的(スーパーエゴ的)営み、の3つに分類して考えた場合、「ヴィゴ」も「お会いしましょう」も主に①を侵食する不条理について述べているが、描き方には差異が見られ、「ヴィゴ」は警察という③の介入により①の秩序が取り戻される構造になっており、「お会いしましょう」は(恐らくは)③の行為の途上で発生した不条理が①を侵食し②の中で再認識される構造となっている。
 両作品の基本的な構造を整理したところで、次章以降では別の視点から作品批評を試みる。本論は、「ヴィゴ」および「お会いしましょう」における「他者化」について分析し、優勝作品を決定することを目的とする。
 
② 「ヴィゴ」における他者化
「ヴィゴ」において興味深いのは俳優ヴィゴ・モーテンセン(十中八九なので他人の可能性もあるが本論では考慮しない)の他者化プロセスであろう。実体化する以前のヴィゴは、語り部にとって実在する他者というより映画鑑賞という日常行為の一部であり、イメージとしてしか認識されないシニフィアン的記号にすぎなかったと考えられる。そのヴィゴが実体化により初めて自我の内部より切り離され、シニフィエとして他者化するのである。
 このプロセスはジャック・ラカンにより提唱された子供の自我獲得のプロセスと酷似している。生後6か月に満たない子供は自己の身体に関する認識が不完全であり、自己と他者を同一化している。彼らは鏡像段階と呼ばれる自己の全体像を把握する時期を経て自我獲得へと踏み出すことになるが、この際初めて自己の外部に位置する像を「他者」として認めることとなる。この時期の子供は「想像界」という認識段階にいる。「想像界」はイメージのせめぎ合いにより構成された認識段階のことであり、子供は「自己」のイメージと「他者」のイメージの二項対立により混乱する。この混乱は子供の認識段階が「象徴界」(言語により自己と他者の境界が保証される世界)へと移行することでいったんの収束を迎える。
 「ヴィゴ」における語り部はまさにこのイメージのせめぎ合いの渦中にいる。語り部が執拗にヴィゴ・モーテンセンと名前を連呼しているのは、自身の想像界的混乱を象徴界的秩序へ導くための行為だと考えられる。しかし、語り部の無意識がかつて乗り越えた自我獲得の受難を再び経験するさなか、意識の表層では「言語」そのものの問題に直面している。語り部は英語を話すことができないため他者化したヴィゴ・モーテンセンとコミュニケーションが取れないのである。この「コミュニケーション不全のジレンマ」に影響され、語り部の無意識は象徴界への移行を達成できず逆に原始的な領域へと「退行」する。そのため、「少し前から尿意を我慢していた」ともっとも単純な快楽である放尿へと意識が向いてしまうのである。
 語り部は無意識を再び象徴界へと移行させるためヴィゴ・モーテンセンの名前を三度唱え尿意を抑えることに成功するが、直後警察官たちという「父権」が介入し、語り部の無意識を揺さぶる不条理=ヴィゴが日常から分断され物語は終了する。
 この警察官出現に関しては前半の描写と齟齬が見られる。「目が覚め」「ヴィゴ・モーテンセンがいた」と認識し「充電中のスマホをたぐりよせ」る冒頭と、ラストで語られる「目が覚め」「見知らぬ外国のかた」を認識し「110番して」警察を呼ぶ流れが完全に食い違っている。(時間経過による記憶のずれを表現するため等の理由で)作者が意図的に仕掛けた矛盾なのかもしれないが、単純に作品の完成度が低いとも取れてしまうので、効果的と断ずることはできない。加えて、ヴィゴ・モーテンセンという俳優の特徴を物語に反映させているとは言い難いため、言葉遊び、イメージ遊びの領域で本作を評価する必要があるが、実在の人物を単なるイメージとしてしか描写していないということは、作者自身がヴィゴ・モーテンセンを想像界的に捉えているということなので、作品全体が持つ意味合いと作者が持ってきたモチーフが噛み合っていないように私には思える。
 
③ 「お会いしましょう」における他者化
他者化をテーマに据えた際重要となる「お会いしましょう」の特徴は以下の2点であろう:①語りの舞台が電車であること、②「家庭(イド)的」「世間(エゴ)的」「社会(スーパーエゴ)的」全ての日常性に触れていること。
 電車は乗ってしまえばどのような家庭的・社会的背景を持つ人物であろうと「レールに沿って駅に向かう」という共通の目的を共有するしかない世間的(エゴ的)交流の場として機能する。文学作品における一例として、身分制度が厳密なインド社会が舞台のキプリング『少年キム』では唯一電車(汽車ではあるが意味は変わらないためここでは電車と表記する)を「異なる人種・階級が同じ目線で交流する場」として設定している。
 「お会いしましょう」においても電車は生身の人間と(作中の単語を使うならば)おばけという異なる身分間の交流の場として機能している。そのため、「列車とホームの隙間を飛び越え」てしまえば「あなた」は「あっという間にちびて」現実へと置き換わってしまうのである。
 さて、本作における他者化には2つの段階が存在する:①イメージ→おばけ、②おばけ→現実。「ヴィゴ」がイメージ→現実(おばけの可能性もあるためその場合イメージ→おばけとなるが論旨に影響はない)という他者化プロセスを描写していたことを考えると、間におばけが挟まる「お会いしましょう」は他者化をより重層的な現象として表現していると言えるだろう。
 ①イメージ→おばけの他者化は、言ってしまえばお母さんへのインタビューによって触発された内的な現象にすぎない。そのため、(「よくあることだ」という表現は気になるものの)他者化がこの段階に留まっている間おばけとの交流は、少なくとも語り部本人が作中で述べている範囲においては、家庭的(イド的)空間で発生している。しかし、②おばけ→現実というもう一つの他者化、言い換えれば社会的イニシエーション、は世間的(エゴ的)空間である電車を経ないと達成されない。加えて、英語という壁を設けた結果他者との交流に至らなかった「ヴィゴ」とは異なり、本作はタイトル「お会いしましょう」に象徴されるよう他者との交流を主軸にしている点も特徴である(どちらが良いか、ではなく単に作風の違いへの言及である)。その交流の場を「自宅」「電車」と使い分け、更には社会的営みへの意識も感じさせる本作は、多角的な視点で読み解かれるべき作品と言えるだろう。
 
④ まとめ
鳴骸「ヴィゴ」、蜂本みさ「お会いしましょう」は共に「日常性と不条理」を描写した作品と言えるため、ジャッジに困ることはなかった。本論ではあくまで他者化という側面についてのみ論じたが、他の要素も踏まえた総合的な判断により蜂本みさ「お会いしましょう」をBFC5の優勝作品とする。
 
最後に:
決勝ジャッジになってから宣伝すると決めていました。文学批評(もどき)のNoteをやってます。是非読んでください。
https://note.com/n000mra_kk




決勝作品


ヴィゴ  鳴骸


お会いしましょう  蜂本みさ



決勝ジャッジ


野村金光


1回戦ジャッジをジャッジ採点表

1回戦ジャッジをジャッジ 評




決勝進出は以下の2名に決定いたしました


Aグループ1位 「庭には」鳴骸
Bグループ1位 「死にの母」蜂本みさ




ジャッジ採点表


1回戦ジャッジ採点および評






1回戦出場作


作品ページ


Aグループ

「幽霊になって三日目」  短歌よむ千住
「庭には」  鳴骸
「火葬場にて」  卜部兼次
「ブンゲイテクノ」  DJ SINLOW
「雨、或いは」  中川マルカ
「雨」  仲田詩魚
「スイカ弾き」  藤田雅矢
「麺shock!!」  萩原真治

Bグループ

「歩み」  和生吉音
「サマー・アフタヌーン」  海野ベーコン
「CWON善光寺街道」  首都大学留一
「2005」  如実
「収集癖」  高遠みかみ
「親が死ぬ前にすべきこと」  東風
「変身」  通天閣盛男
「死にの母」  蜂本みさ


ジャッジ



子鹿白介
綾門優季
江永泉
田中目八
春Q
白髪くくる
野村金光
冬乃くじ
世界彗星灯台プールサイドアサルトライフル


担当


子鹿白介、綾門優季、江永泉 担当

「幽霊になって三日目」短歌よむ千住
「庭には」鳴骸
「火葬場にて」卜部兼次
「ブンゲイテクノ」DJ SINLOW
「雨、或いは」中川マルカ
「雨」仲田詩魚

田中目八、春Q、白髪くくる 担当

「スイカ弾き」藤田雅矢
「麺shock!!」萩原真治
「歩み」和生吉音
「サマー・アフタヌーン」海野ベーコン
「CWON善光寺街道」首都大学留一

野村金光、冬乃くじ、世界彗星灯台プールサイドアサルトライフル 担当

「2005」如実
「収集癖」高遠みかみ
「親が死ぬ前にすべきこと」東風
「変身」通天閣盛男
「死にの母」蜂本みさ



ファイターからの伝言


短歌よむ千住

お久しぶりです。前回は自己紹介コーナーに「ぜーいんころす」と書かれた方にサラッところされました。様式やジャンルの狭間で身軽に歌っています。歌うのはたのしいです。


鳴骸

鳴骸が並んでいる。値札を添えられて。やはり鳴き声の美しい鳥などが人気らしい。「人の鳴骸はありますか」とノートとペンを手にした子が店員に聞いている。校外学習だろうか。「人はないよ」「なぜですか」と続けて問われ、店員はどう説明したものかと受け口になっている。人は死ぬと口を縫わなければならない。そう決まっている。人は言葉を吐くから。死者の言葉は誘うから。甘く我々を誘うから。

人の鳴骸です。

よろしくお願いします。


卜部兼次

前々から一度、こちらでファイターというものになってみたいなあと思っておりました。
ですので、今回嬉しいです。大変嬉しく思っております。
どうかよろしくお願い致します。

あと、この自己紹介文を考えてる時、なんか気が付いたらアマゾンでkindleで本をたくさん買ってました。
無意識でした。
不安とか緊張とかかもしれません。

早く自己紹介文を考えてよって思いました。


DJ SINLOW

みなさんこんばんは。ブンゲイファイトのリングをダンスフロアに改築しにきた闇のDJ、SINLOWです。
今回は親友の日比野氏からの勧めでこの場にアガらせてもらいました。
「どうせ一発屋のネタ枠だろう」と思ってる奴。ちょっとブースの裏に来なさい。僕と日比野氏の二人で囲んで懇切丁寧にしばき上げつつ箱に収めた大量のヴァイナルを整理整頓させてやる。覚悟するように。
今回のセトリが二曲だけで終わってしまうのは実に不本意ではありますが、これを機にブンゲイ界&クラブミュージック界のクロスオーバーがより一層進むことを願って止みません。BFC打ち上げパーティーのDJオファー、いつでもお待ちしております。Check
it out!!


中川マルカ

御嶽神社裏で、ちいさなカフェを営んでいます。
2023年は無頼の年である、と港区の占い師にいわれました。呪いか祈りかそのことばをひきずりながら、ようやくここへたどりつきました。
はじめての本戦です。タイセンよろしくお願いします。

(今秋「棕櫚10」なる同人誌を送り出しました。そちらも、どうぞ、よろしくお願いします)


仲田詩魚

ちょうどいい枚数になりそうなのがあるから出してみよ、という公募勢にありがちなあんまり良くないムーブをかましたせいでとんでもない目にあっている。幸運にも本戦に残ったが、現代アートの会場に美術の時間に描いたりんごとか壺とかの絵を持ち込んでしまったみたいに気まずい。しかもジャッジのジャッジてなんだ。ファイターどうしで殴り合ってジャッジまで殴るのか。いいのかそんなことをして。ありがとうございます楽しみます。
はじめましてBFC。対よろです。


藤田雅矢

「簡単に忘れないスイカ」を持って、2年ぶりにリングにやって参りました。SFと植物が好きな人です。対戦、よろしくお願いいたします。
『糞袋』『植物標本集(ハーバリウム)』など、また『万象』や『京都SFアンソロジー:ここに浮かぶ景色』にも書いてます。


和生吉音

遠くからちらちらと盛り上がりの空気だけ感じていたBFC、中に入ってみたら想像以上に賑やかで楽しい、声がしたり音楽が聞こえたりカラフルで時々不穏な気配もする... ほんとにお祭りみたい!と思ってにこにこしながら関連ツイート(ツイート)や過去作などを読んでます。楽しい!
この機会にこちらに以前書いたものを置きました(まだ少ないですが)
https://note.com/waokitune
参加させていただいてありがとうございます、これからたくさん書いていきたいです。よろしくお願いします。


萩原真治

BFCの抱負を書いている時に伝串なるものを初めて食べました。友達と食べたのですが、やたらと美味しく、何度もぶるるん、と、胃が動きました。鶏皮とは汁気が多く脂がもたれやすいたべものではありますが、ああも見事に、JUICYさを搾り取ってかっすかすなタンパク質に仕立て上げたこと、ほんとうに称賛されるべきものだと思いました。伝串は安く、一本、50円です。これはすごいことだ。これを30本くらい頼むとピラミッド方に聳え立たせたものを、くれます。配膳される映えです。その間、これまた、安いお酒をみんなで飲んで、楽しく明るい時を過ごしました。そして、最後に3本だけ伝串を食べようと、年少の友達が言い、我々はそれに従いました。数分後、ちんまりサーブされたそれを頂いて、我々は旨えと唸ったのです。最初に食べたものより美味しいと。腸までぶーるぶる動きました。このラスト一本が美味しいんだな。美味しい。みんな共通して美味しさを感じました。出来立ての、揚げたての伝串。かっすかすなのに、脂も塩分も無いはずなのに、JUICYでSALTYな揚げた鶏皮。外は夜だけど、特に関係ありません。我々は噛み締めて、年長の友達が会計を率先して行ってくれました。そのセツはありがとうございました。僕は良い気分で帰宅しています。


高遠みかみ

私は断片的なものを好み、なんでも書きます。それはときおり詩と呼ばれます。
私は本を読みます。ただし、頭のなかに飼っているミミズの調子がいいときに限ります。
私はだれとも敵対しませんが、破壊を求めています。
私はどこかでかならず裂けますが、いまはそのときではありません。


通天閣盛男

楽しんでもらえればと思って書きました。

ブンゲイの事が知りたくて書きました。

闇夜から白昼へ。本戦舞台に立てました。

奈落へ堕ちぬよう舞い続けます。

変な名前ですが頑張ります。


蜂本みさ

はじめまして、もしくはお久しぶりです。
箸にも棒にもだったBFC3、投稿すら断念したBFC4を経て、また本戦に出場できました。とても嬉しいです。前回出場した時は、この自己紹介コーナーに「ぜーいんころす」と書いたおぼえがあります。気負っていて、我ながらかわいげがありますね。
今年は自然体で戦おうと思っています。他人に勝ろうと気ばかり焦れば肝心なことを書き逃します。人もものごとも自然なのがいちばんです。
「自然体でぜーいんころす」。よろしくお願いします。



ジャッジからの伝言


子鹿白介

『推しが書いた本に〝BFC5決勝ジャッジ〟を名乗って解説を載せる』
そんな野心を得て書いた1回戦ジャッジ評を、先ほど投稿しました。〆切2時間前。
つい創作に優劣を付けようなんて考えると力んでしまいますが、身の丈・思いの丈にフィットした飾らないジャッジスタイルを心がけました。
お手合わせ、よろしくお願い申し上げます。なにとぞ、なにとぞ。


江永泉

決勝ジャッジまでに担当作以外の10作の寸評も書けそうなら書きます。


綾門優季

 はじめまして。劇作家の綾門優季です。一時期は文學界という雑誌でいきなり新人小説月評を1年間担当して「こいつ誰?」と名を馳せました。僕も「こいつ誰だろう」と首をひねりながら、息もたえだえに、連載を終わらせました。

 現在は、2023年度レジデンスアーティストに選出されました、Dance Base Yokohamaで、3月に何らかの新作の発表をするための準備を始めたところです。

Dance Base Yokohama
https://dancebase.yokohama/

 めちゃくちゃびっくりしてます。言葉のない作品を作るアーティストが、一定数いるということに。ブンゲイではないほうのファイトクラブですので、よろしければ一度、足を運んでみてください。

 舞台に関わり続けていますので、ことばとからだの響き合いには敏感です。よろしくお願いいたします。


田中目八

『奎』という俳句同人誌に所属している初心者です。
BFCには第一回からファイターに応募していましたが今回は応募したかった作品を急遽頂いた依頼(↓リンク先)で寄稿したのでできませんでした。

https://kangempai.jp/seinenbu/haiku/2023/10tanaka.html

とはいえまさかジャッジで応募し、あまつさえ採用されるとは……。
中の人はいわゆる即興演奏などをしてる人で今年六月に新譜がリリースされました。万が一興味がある方いらっしゃればお声がけください。


春Q

未来短歌会所属。@harunoQka

折られるとしても僕らは新月に指を挿し入れなければならない


白髪くくる

はじめまして又はお久しぶりです。白髪くくるです。
胡麻ダレを賞味期限内に使い切る方法を知りたいです。
どうぞよろしくお願いします。


野村金光

この度は何卒よろしくお願いいたします。
宣伝等は特にございません。


冬乃くじ

 こんにちは、冬乃くじです。BFCファイターとしての気力を昨年の優勝で使い果たし、ばったり倒れていたのですが、「ジャッジ応募数が足りない」と運営から追加募集があったため、そんなら頭数になるか、と起き上がりました。でも蓋を開けてみたら、良さそうなジャッジが揃っていた上、ファイターの作品がどれもレベル高くて、妙に安心してしまって、今年は選評ではなく、純粋な作品評にしようと決めました。評を読んだ読者が「もう一回読んでみよう」と思える評を書くことを目指した感じです。なんとか成功しているとよいのですが。

 それと、この原稿が載る頃には終わっているとよいのですが、10/7から1ヶ月以上、パレスチナのガザ地区で、イスラエル軍による大量虐殺が続いています。本当に酷い映像や画像が毎日流れてくるので、自分の精神安定のため見ないようにしている方もいると思います。それはそれで大切なこと。でももし、「問題が複雑そうだし、事情がよくわからない自分は意見を表明できない」と思っている方がいるのなら、パレスチナ問題の第一人者であるイラン・パペの書いた『パレスチナの民族浄化』という本だけでも読んでみてください。1948年のイスラエル建国(アラブ人追放とパレスチナ占領)から2023年現在に至るまでの占領と圧政、過去4度の大量虐殺、そして今回のとてつもない大量虐殺を行うふるまいが、すべて「民族浄化」という同じ目的で動いていることが、わりとすぐにわかると思います。イスラエル政権が「テロ」と呼ぶハマスによる攻撃は、突然あらわれたものではなく、75年もの苦しみの末であったことも容易にわかります。読んだ方は、その話を周りの人にして欲しい。パレスチナの自由を叫ぶのであれ、イスラエルを擁護するのであれ、読んで意見を言葉にして欲しいのです。

 本を読めない人にはこんな呼び掛けはしませんが、わたしたちは読める人間なのだから、まだの方は読んでみてほしい。あなたの作品がイスラエルの文学賞をとるかもしれないでしょう?

 2008年末、イスラエルによるガザへの最初の大規模な空爆と虐殺の直後、エルサレム賞受賞の知らせを受けた村上春樹は、賞を受けとるか悩んだ後、自分の目でイスラエルを見るため、イスラエルの人たちに話しかけるために賞を受け、「もしここに硬い大きな壁があり、そこにぶつかって割れる卵があったとしたら、私は常に卵の側に立つ」と有名なスピーチをしました。

 それから15年、状況は悪化の一途をたどっています。2023年のいま、拭いきれぬほど血塗られた賞を受けてまで村上春樹がスピーチするかは不明ですが、皆さんはどうしますか。賞を受けますか? 世界が注目する中、どんなスピーチをしますか? 2023年の虐殺中、何を思い何をしていたのか聞かれたら、どう答えますか?


世界彗星灯台プールサイドアサルトライフル

諸事情あり文芸全般に触れなくなって数年、ツイッターに流れて来たジャッジ追加募集の投稿を見て、人が足りないならと何気なく応募しただけだったのですが、落選展から出場作までその熱意と技量に度肝を抜かれ、完全に文芸熱が復活し、同時に今月頭からひいていた風邪もぶり返しました。喉が痛すぎる。文字を読んで書いて考えることは本当に楽しい!採点や評論に思うところあると思いますが、全ファイターの作品、ともすれば予選落ちの作品まで、本当に優劣つけ難いものでした。ジャッジ文で書ききれなかった担当外ファイターの作品評に関しては、後ほどツイッターかどこかで発表させていただきます。





BFC5
2次予選通過作品


 2次予選通過は28作でした。本選出場はこのなかの16作になります。発表は11月5日(日)11時です。

「幽霊になって三日目」 短歌よむ千住
「手をつなぐ」 うっかり
「庭には」 鳴骸
「プールのある展示室」 酒井創
「火葬場にて」 卜部兼次
「地下室」 北野勇作
「アイルランド」 穂崎円
「ブンゲイテクノ」 DJ SINLOW
「記憶、宇宙、エントロピー」 小林蒼
「山本は死んだ」 海野是空
「雨、或いは」  中川マルカ
「雨」 仲田詩魚
「川柳四〇句 アセファルは頭でっかちだったとか」  ササキリユウイチ
「サマー・アフタヌーン」 海野ベーコン
「スイカ弾き」 藤田雅矢
「ヒップホップ20/50」 夜久野深作
「歩み」 和生吉音
「麺shock!!」 萩原真治
「CWON善光寺街道」 首都大学留一
「ポスタル・サーヴィス」 渋皮ヨロイ
「明るい声」 岡田麻沙
「ベーコンにお手紙」 一針城次雄
「収集癖」 高遠みかみ
「親が死ぬ前にすべきこと」 東風
「2005」 如実
「変身」 通天閣盛男
「死にの母」 蜂本みさ
「バード・ストライク」 乾あまぐつ




1次予選通過作品


「がまぐちぎょろめのグラム・スピナー」 藤井佯
「幽霊になって三日目」 短歌よむ千住
「夢こそまことと彼女は言った」 夏川大空
「砂と片影」 永田大空
「手をつなぐ」 うっかり
「庭には」 鳴骸
「セーラー服」 蒼井坂じゅーり
「不夜城のサングラス」 吉美駿一郎
「プールのある展示室」 酒井創
「火葬場にて」 卜部兼次
「白い海」 汀心
「来たる妄念」 左神経偽
「地下室」 北野勇作
「アイルランド」 穂崎円
「僕の事」 太代祐一
「ブンゲイテクノ」 DJ SINLOW
「記憶、宇宙、エントロピー」 小林蒼
「早朝ドトール強盗未遂」 江藤健太郎
「山本は死んだ」 海野是空
「bouen」 小倉拓馬
「牛ケ淵」 大竹竜平
「デザインする卵」 齋藤優
「飛来」 吉田棒一
「追憶の葬送」 嘉村詩穂
「恋う」 藤野
「心臓」 赤木青緑
「我を學ぶものは死す」 茜歩
「残り火」 佐藤相
「唾鬼」 雨田はな
「走る犬」 上雲楽
「みぽみぽん」 鈴木林
「テュス」 Yoh クモハ
「雨、或いは」 中川 マルカ
「誰もいない」 鳥山まこと
「逆迷彩蝸牛」 黒谷知也
「鐘」 門前日和
「雨」 仲田詩魚
「合掌」 野本泰地
「川柳四〇句 アセファルは頭でっかちだったとか」 ササキリユウイチ
「ある夜の出来事」 むしまる
「サマー・アフタヌーン」 海野ベーコン
「オルフェウスⅠ」 辻原僚
「スイカ弾き」 藤田雅矢
「車を買いに」 唯冬 和比郎
「かつてわたしだったもの」 金子玲介
「めくりの国」 津早原晶子
「つぼみのおもうところ」 只鳴どれみ
「ヒップホップ20/50」 夜久野深作
「記憶の穴」 白城マヒロ
「馬上風」 松尾模糊
「今日はモモだった」 関元聡
「バース/バース」 蕪木Q平
「壁打ち」 横道逸太朗
「嫉妬」 くろいわゆうり
「左胸」 中島晴
「バルセロナ紀行」 紺 一希
「悪いのは誰?」 比良岡美紀
「対向車」 中野真
「歩み」 和生吉音
「麺shock!!」 萩原真治
「シドニー郊外のバス停にて」 高松けんしろう
「トリプレックス」 巨大健造
「CWON善光寺街道」 首都大学留一
「本当の音楽」 中務 滝盛
「ポスタル・サーヴィス」 渋皮ヨロイ
「明るい声」 岡田麻沙
「ベーコンにお手紙」 一針城次雄
「タイムマシン渋滞」 鵜川龍史
「戦争と我」 戦争と我々
「ゴーストライター」 外山雪
「アバ――川柳一一三句」 川合大祐
「準急」 なんようはぎぎょ
「あわいの日々」 原里実
「収集癖」 高遠みかみ
「武装動物園」 西山アオ
「アルティメット凧揚げ」 井之上禎
「わける」 坂崎かおる
「親が死ぬ前にすべきこと」 東風
「アメリカのシャーペン」 川谷パルテノン
「2005」 如実
「竜を呑む」 藤崎ほつま
「無敵のワクチン」  我那覇キヨ
「火喰い」 山崎朝日
「ダダダダダ」 まか
「変身」 通天閣盛男
「i」 深澤うろこ
「死にの母」 蜂本みさ
「バード・ストライク」 乾あまぐつ
「逢魔」 星野いのり
「まぶたといと」 岩井平米
「肩」 白湯ささみ
「今昔巳鼠珏女夜魅師物語」 頑飛真一
「ゾンビイーター」 バグ




2次選考通過ジャッジ⇒本選ジャッジ

 検討の結果、2次選考通過9名すべて本選ジャッジとなりました。

子鹿白介
綾門優季
江永泉
田中目八
春Q
白髪くくる
野村金光
冬乃くじ
世界彗星灯台プールサイドアサルトライフル

本選ジャッジ応募原稿








 BFC5(ブンゲイファイトクラブ5)を開催します。
 今回は主催側の都合で簡略した形になります。
 ファイターは8人、ジャッジは3人です。それぞれ募集いたします。
 ファイターは自分の作品に力があると思う者のみ応募してください。 
 ジャッジはファイターの運命を変える覚悟がある者のみ応募してください。いずれも傷を負う可能性がありますので、参加は慎重にご検討ください。


BFC概要


 プロアマ混合のオープンブンゲイトーナメントです。作品を出す者は「ファイター」、それを評価・選別する者を「ジャッジ」と呼びます。
 作品の分量は、原稿用紙換算で6枚になります(2400字ではありません)。
 ジャンルはなんでも構いません。短詩形、小説、エッセイ、シナリオ、ゲーム原案など。版権の切れたものの翻訳でも構いません(英独仏西葡伊にかぎります。原文も送ってください)。

 今回は1回戦と決勝のみです。応募作のなかから8作を選び、ABふたつのグループにわけ、各グループからひとりずつ勝ちあがって、ふたりで決勝を戦います。
 ジャッジは3名募集です。文芸にかんする原稿用紙2枚以上の文章を提出していただき、それをもとに主催側で判断いたします。
 BFCの特徴のひとつなのですが、1回戦から決勝に進むとき、ファイターは8人中6人が脱落しますが、ジャッジ3人のうちの2人も脱落します。
 勝ち抜きファイターを選んで採点するのはジャッジですが、勝ち抜きジャッジを選び、採点するのは、8人のファイターです。
 応募はどちらかのみです。

 予選の選考は惑星と口笛の西崎憲が行います。選考基準は「簡単には忘れないもの」です。

 賞金も賞品もありません。


応募要項


応募資格

 なし。
※極端なヘイトや出場者へのストーキング行為などをされるかたは主催側の判断でご退場願う場合があります。

ファイター部門詳細

◆作品のジャンル・内容
 不問。
 俳句、川柳、短歌、歌詞、詩、回文、エッセイ、旅行記、戯曲、小説、批評、評論、論文、版権の切れたものの翻訳などなんでも。
 既発表作品不可。
 1人1作。
 ジャッジ部門とのかけもちはできません。

◆原稿枚数など
 400字詰め原稿用紙6枚まで。文書作成ソフトを20字×20行に設定して6ページ以内です。タイトル、名前は含みません。2400字ではありませんのでご注意ください。
 選考のうえ8名が本選進出になります。予選応募作品がそのまま第1回戦作品になります。
 詩歌の場合、改行などのレイアウトを含めた形で「原稿用紙6枚」をご判断ください。
 フォームの「作品」欄に、直接ペーストしてください。
 ルビ・傍点は以下のような形でご指摘ください。指定分の文字はカウントされません。

 その際も拝火教[拝火教 ルビ ゾロアスター]の僧侶は自分から[自分から 傍点]は口を開かなかった。
 最終的に縦書き表記になりますので、数字や記号の半角・全角にはご留意ください。

ジャッジ部門詳細

 800字以上の文芸に関連した文章をフォームの「作品」欄に、直接ペーストしてください。既発表でも構いません。選考のうえ3名が1回戦のジャッジになります。

選考 

どちらの部門も予選は惑星と口笛の西崎憲が担当します。ファイター部門は応募作のなかから無記名の状態で8作選びます。
 予選通過のお知らせはいたしません。また落選の理由をお答えすることはできません。

締切

 両部門ともに10月22日(日)23時です。


応募フォーム


 原稿送付に関しては Googleフォームを利用します。
 記入事項はハンドル、本名、メールアドレス、作品です。
 本名記入は2重応募防止のためで、本名は公表いたしません。

 応募はこちらになります。10月8日(日)23時から受けつけます。


スケジュール


作品・ジャッジ応募原稿受付開始 10月8日(日)23時から
作品・ジャッジ応募原稿受付締切 10月22日(日)23時
ファイター・ジャッジ予選通過者発表 11月1日(水)11時 
1回戦ジャッジ名・ファイター16作品発表 11月5日(日)11時
決勝進出ファイター2名発表 11月16日(木)11時
決勝作品発表  11月19日(日)11時
決勝結果発表  11月26日(日)11時


スケジュール詳細版


10月8日(日)
作品・ジャッジ応募原稿受付開始 23時から

10月22日(日)
作品・ジャッジ応募原稿受付締切 23時

11月1日(水) 
ファイター・ジャッジ予選通過者発表 11時 

11月5日(日)
1回戦ファイター16人の名前・作品を発表 11時
ジャッジ9人の名前を発表 11時

ファイター16人はABの2グループにわかれる。
ジャッジ9人は担当作品すべてに言及した評を書き、2グループのうちの勝ちをひとり決め、すべての作品を採点する(5段階、5点が最高)。評の枚数は400字詰め原稿用紙2枚~5枚程。
グループ最上位のファイター2名が決勝に進出。

11月16日(木)
決勝進出ファイター2名発表 11時

11月19日(日) 
決勝2作品発表 11時 
ファイター16名は9名のジャッジに勝ちをつけ、採点、評を書く。全員のジャッジに言及すること。
採点は5段階、評の枚数は400字詰め原稿用紙1枚~3枚程度
最上位のジャッジ1名が決勝ジャッジとなる。その1名は勝者を決定し、評を書く。

11月26日(日)  
決勝結果発表  11時

※決勝決定の日の午後に懇親会を予定しています。


採点の仕方


ファイター、ジャッジを審査するにあたってはふたつの要素を組み合わせて行っていただきます。

 勝ち 誰がつぎのラウンドに進むべきかを指名します。
 採点 5段階で採点します。

 勝ちが多い者がつぎに進みます。勝ちの得点が同点の場合のみ採点で決めます。それで決まらない場合は当該のファイター、ジャッジ全員で再投票とします。


主催 
惑星と口笛 a-c-w-k.com


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