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ベトナムから学ぶ「幸せ」を、日本でおもう

ベトナムのホーチミンで、久しぶりにハノイ時代に一緒に働いていたハーさんと、朝のコーヒーの時間を共にした。近況を聞くと、最近会社を辞めて、転職活動中だと言う。ハーさんは前の会社に7年も勤め、明るくとても優秀で、誰からも愛されていた。

そんなハーさんが会社を辞めたと言うのだから驚いて理由を尋ねると「忙しくなりすぎて土日も仕事をしなければならず、体調を崩してしまった。前の会社は大好きだけど、もう続けられないと思った」と、話す。

そんなハーさんはいま、2か月ほど休養中とのこと。インドネシアのバリや中部のベトナムの中部ダナンに行って大好きな海で泳ぎ、最近は朝、こうしてコーヒーを飲みながら読書をしている。「自分をめいいっぱい甘やかしてるの。とっても幸せ」と、ハーさんが元気そうで安心した。

ハーさんは、ハノイからホーチミンに引っ越してきた。ハノイの気候は曇りが多く、体調を崩す人が多い。一年中太陽が明るいホーチミンで、ハーさんの心も晴れるといいな、と思った。

「最近、ベトナムは経済発展していて、日本人みたいな働き方をしている人も増えてきたよ」と、ハーさんは教えてくれた。

余談ではあるけれど、日本に帰国してから私は、「日本人みたいな働き方」という言葉が「激務」を表す言葉として世界からとらえられていることに、いつも納得がいかない。

私がいま働く会社もそうだが、これまで世界から働き方を批判され続けてきた日本はいま、前よりずっといい働き方ができる国になってきたと思う。手厚い福利厚生に、自分にあった好きな時間帯で働くことができたり、週4正社員勤務やリモートワークなどある会社も多い。だから私は外国人の友人に働き方を批判されるたびに一生懸命説明している。

「でも日本では働きたくないな。わたしはベトナムで働きたい」と話すハーさんは、日本製品は大好きだが、ベトナムに住みたいという。

「ベトナムは少しずつ成長していて、人も少しずつ変わってきた。でもベトナムにはまだ人との“つながり”がある。私、日本に旅行に行った時に驚いたの。電車があんなに静かで、人とのつながりがない。ベトナムにはまだそのつながりが、あるよ」

ベトナムの友人の家で、外国人が「日本」のカルチャーを紐解く番組を見ていた。日本の夜の世界の話や働き方、恋人レンタルのサービスなど、日本人として見ても興味深かった。

どの番組でも、描かれていたのは、日本の「孤独」だった。

私がベトナムから日本に帰国したとき、東京では何者にもなれる自分がいて、街に出たら不特定多数のうちの一人になることができて、すごくすごくラクだと思った。

でも最初の頃はなぜだかずっと「虚無感」に包まれていた。大好きな仕事と十分なお金、便利な東京に住んでいても、なぜだか満たされないと感じていた。そうしてやっぱり幸せを感じるために必要なのは、お金ではなくて「つながり」なんだなぁと思った。

そんななかでベトナムでの“つながる”幸せをおもったとき、私が見習いたいと思うのが「図々しくあること」だ。

ここではいい意味で、ベトナム人はとにかく図々しい。自分の幸せを1番に考え、自分の周囲の人の幸せを考える人たちだ。

私が「日本からベトナムに行くよ」と言うものならば、あれやこれやとお土産を頼まれる。自分のものだけならまだしも、家族のものまで頼んでくる。

仕事のアポでハノイのあるお店を訪ねたとき、お店の女の子が私をずっと見ていたので話しかけてみると、「かわいいワンピースだね」と言ってくれた。話すうちに仲良くなり、その日初対面のベトナム人の女の子に「次ベトナムにくる時、買ってきて欲しい!」と、にっこり頼まれた。人は意外にも、人から頼られると嬉しいものなのだ、と思った。


一方で、そんな彼らは「もらうこと」ばかりではなくて、「あげること」も上手だ。

お土産を買って行こうものなら、お家で作った料理をたんまりご馳走してくれたり、ハノイを一生懸命案内してくれたりもする。私の相方のミーちゃんは、いつも私のお世話をしてくれて、私がGrabに忘れ物をすると「エリカちゃん、またなの!?もう驚かないよ」と笑いつつ、運転手まで連絡してくれたり、「ハノイに遊びに行くよ」と言うと知り合いの友人から素敵なお家を借りてくれたり、料理を振舞ってくれたりした。

自分もたくさん人にお世話になるので、自分もたくさん人にお世話する。そうして生まれる優しさに私は、嘘のないものだ、と思う。そして「自分もこの人たちを頼っていいんだな」と、安心するのだ。

日本で感じる行き過ぎたおもてなしを居心地悪く感じる根底は、そこにあるのかもしれない。「ありがとうございます」何に対して・・・?「大変お待たせしました」待ってないよ・・・?「申し訳ございません」あなたは悪くないよ・・・

自分の弱みを見せず、人にあげてばかりいることは、どんな人間にも難しい。まずは、ちゃんと図々しく自分の幸せを一番に。そうしたら、自分の周りの人にも幸せになって欲しいと自然と願えるようになる。人に頼るのが苦手で、つい全部自分一人でやろうとしてしまう私は、いつも彼らから学ぶ。自分にわがままでありたいと。



いつも見てくださっている方、どうもありがとうございます!こうして繋がれる今の時代ってすごい