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ピタゴラスと√2の戦い その2

√2が有理数であるという可能性を求めて

その1で証明を2つほどあげましたが、本当にピタゴラスの証明したかった形なのか少し疑問が残ります
なぜなら『万物は数』なのです
否定をするのではなく肯定を導きたかったのではないかと思います

そして彼が考えついたのが連分数による数の表示です
 $${\displaystyle \sqrt{2}=1+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{\ \ddots}}}}}}$$
厳密にはこれは結果で、ピタゴラスはユークリッドの互除法を使って有限回で何とか取り尽くせないかと考えていたようです
(取り尽くすことができれば有理数)

このような議論を進めるにおいてユークリッドの互除法は重要であると見ていて、互除法のことを『ユークリッド原論』の第10巻の一番最初に述べています

取り尽くす方法

さて、その手法ですが
まず正方形ABCDの対角線ACに沿って辺ABを破線で折り曲げます
BF=r₁とするとBF=FE=EC=r₁が成り立ちます
また、√2=1+r₁  ……①

次に△CEFは直角二等辺三角形ですから点EについてCFと対象な点Gをとると、再び正方形CEFGが出来上がりますそして先ほどと同じように破線IFで折り返します

そしてIG=r₂とするとIG=IH=CH=r₂なので辺BCに対して
 1=2r₁+r₂  ……②
が成り立ちます
以下同じやり方で図のようにr₃、r₄……と定義していきます
LJ=LK=KC=r₃ とすると
 r₁=2r₂+r₃  ……③

MO=ON=NC=r₄とすると
 r₂=2r₃+r₄  ……④

という具合に以下
 r₃=2r₄+r₅  ……⑤
 r₄=2r₅+r₆  ……⑥
 ……
が順に得られます

(多分この頃にはピタゴラスはしょんぼりしてたのだと思われます
 何故なら同じ方法で取り尽くし続けても終わりがないと悟ったからです)

互除法から連分数へ

①〜⑥の式はまとめると
 √2=1+r₁  ……①
 1=2r₁+r₂  ……②
 r₁=2r₂+r₃  ……③
 r₂=2r₃+r₄  ……④
 r₃=2r₄+r₅  ……⑤
 r₄=2r₅+r₆  ……⑥
という互除法の式ができ、②〜⑥の式をそれぞれr₁からr₅で割ると
 $${\displaystyle \mathsf{\frac{1}{r_1} =2 +\frac{r_2}{r_1}} ……②^\prime}$$   $${\displaystyle \mathsf{\frac{r_1}{r_2} =2 +\frac{r_3}{r_2}}  ……③^\prime}$$

 $${\displaystyle \mathsf{\frac{r_2}{r_3} =2 +\frac{r_4}{r_3}}  ……④^\prime}$$   $${\displaystyle \mathsf{\frac{r_3}{r_4} =2 +\frac{r_5}{r_4}}  ……⑤^\prime}$$

 $${\displaystyle \mathsf{\frac{r_4}{r_5} =2 +\frac{r_6}{r_5}}  ……⑥^\prime}$$

ここで①の式に順に代入していくと
 $${ \sqrt{2}}$$
 $${=\mathsf{1+r_1}}$$
 $${\displaystyle =\mathsf{1+\frac{1}{\frac{1}{r_1}}}}$$
 $${\displaystyle =\mathsf{1+\frac{1}{2+\frac{r_2}{r_1}}}}$$ 
 $${\displaystyle =\mathsf{1+\frac{1}{2+\frac{1}{\frac{r_1}{r_2}}}}}$$
 $${\displaystyle =\mathsf{1+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{r_3}{r_2}}}}}$$
 $${\displaystyle =\mathsf{1+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{\frac{r_2}{r_3}}}}}}$$
 $${\displaystyle =\mathsf{1+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{r_4}{r_3}}}}}}$$
 $${\displaystyle =\mathsf{1+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{\frac{r_3}{r_4}}}}}}}$$
 $${\displaystyle =\mathsf{1+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{r_5}{r_4}}}}}}}$$
 $${\displaystyle =\mathsf{1+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{\frac{r_4}{r_5}}}}}}}}$$
 $${\displaystyle =\mathsf{1+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{r_6}{r_5}}}}}}}}$$
 $${\displaystyle =\mathsf{1+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{2+\frac{1}{\ddots}}}}}}}}}$$

永遠に続く連分数表示=永遠に続く互除法
この永遠に続くということは $${\sqrt{2}}$$ を自然数とその比だけでは取り尽くすことができないということです
これが分かったときピタゴラスの絶望感は計り知れません

 残念ながらピタゴラスは無理数( $${\sqrt{2}}$$ )に打ち勝つことができなかったのです

そういえば五芒星(ペンタグラム)はピタゴラス教団に入会するときの印でしたが、この図形の中にも無理数が潜んでいて、彼は無理数からは逃れることができない運命だったのかもしれません


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