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パラレルワールドバンドワゴン

夢、と言われても、だいたいのやりたい事は自分で叶えてしまった。
今からじゃ遅い事もあるし、完璧な形ではないとしても、やりたいと思った事は、出来る範囲で叶えたつもりだ。

それに、私は今の暮らしが嫌いじゃない。

だから、そうだな。もしも夢が叶うなら、別の世界線の自分を体験してみたい。

楽器は弾けないけど、ライブに行くたびにライブハウスで演奏する自分の姿をよく想像していた。
せっかく夢が叶うなら、その妄想を現実にしたい。

だから、バンドを組んで、全国ツアーなんてどうだろう。
やるならベースがいい。
歌唱力に自信はないけど、本当はボーカルもやってみたいな。

北は北海道から、南は沖縄まで。
私は地方の出身で、ライブはいつも遠征だったから、もし私がバンドを組んだら、47都道府県余すところなく周りたい。
なんなら、離島でライブをやるのもいい。

他の島事情はわからないけど、私の島にはライブハウスがあった。なかったら、公民館みたいな場所でも構わない。
呼ばれたらスケジュールが合う限り、どこでも行こう。

交代で、でかいハイエース運転してさ、車で寝たり寝られなかったりして、全国行脚するんだろうな。
道中は長いから、真面目な話も、馬鹿な話もたくさんしてさ。

ライブをやるなら、大きいところより、小さいライブハウスの方がいいな。
その方が、来てくれた人の顔がよく見えそう。

果たして、ベーシストになった私に客席を見る余裕があるかはわからないけど、聴きに来てくれた人の顔は、覚えておきたい。
人の顔を覚えるのが得意なのは、数少ない長所のひとつだ。

ジャンルは、多分ロックかなあ。
おしゃれな曲も好きだけど、やるなら生々しくて泥臭い方がいい。
これは、単純に私の好みの問題。

メンバー紹介とかもやってみたいよね。
小ネタを挟みつつね。

全国を周りながら、打ち上げで、メンバーのみんなとその土地の美味しいもの食べたいな。
私はお酒が呑めないので、多分、みんなの介抱役に回るだろう。

「明日もライブあるんだから、そのくらいにしときなよ」ってね。

スポットライトの下で演奏してさ、みんなが楽しそうに盛り上がっている姿をみるのは、すごく幸福な風景だと思う。

大事な事を伝えてなかったけど、ライブ中のノリ方は自由で構わない。
こぶしを挙げても、頭を振っても、ステージを集中して観ていても、それは各々の楽しみ方で良い。

ベーシストになった私は、パラレルワールドの自分を想像するだろうか。
案外、平凡な暮らしをしている私のことを、羨ましく思うこともあるかもしれない。

こちらの世界線の私は、楽器も碌に弾けないが、同じく楽器に挫折した仲間とバンドを組んだ。
CDの代わりに、本を一冊リリースする予定だ。

パラレルワールドにいる、ベーシストの私は、ツアーの空き時間に本屋に入る。
そこで、一冊の本を手にとる。

私はそこで、自分によく似た、ベースの弾けない女の話を見つける。
楽器の弾けないその女に思いを馳せながら、私は本を購入し、バンド仲間と一緒に読む。

どこかの世界線で、そんな事が起きたら、面白いな、と楽器の弾けない私は空想する。

今日の一曲
ロックンロールイズレッド/バズマザーズ


28日目
もしも、夢が一つ叶うなら
















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