ケルト神話・アイルランドの伝承あらすじ集①:『マグ・トゥレドの戦い』、『侵略の書』

ケルト神話といえばアイルランドの伝承が主ですが、ケルト神話のなかで、アイルランドの伝承は日本語で読めるものがとても少ないです。全訳されたものはこれまで確認しただけでわずか四つしかありません(拙記事「邦訳されたアイルランドの神話・伝説」参照)。抄訳にしても、一冊の本に収められている話は大した量ではありませんし、基本的にメジャーな話が載ってます。(ちなみに、どういった媒体で読むことができるか、という話も既にしています:「ケルト神話ってどうやったら読めるの?」)。

そこで一計を案じ、話のあらすじだけでも読めるようになれば大変役立つのではないかと考え、とりあえずやってみました。加えて、あらすじの形にまとめてあれば、本よりも参照しやすいかもしれません。今後も継続的に書いていくつもりですので、よろしくお願いします。

今回あらすじをまとめたのは、神話サイクルの『マグ・トゥレドの戦い』及び『侵略の書』の二つです。あらすじの前に、それぞれどういうエピソードか概略が書いてあります。


神話サイクル

・『マグ・トゥレドの戦い』

神々であるトゥアサ・デー・ダナンと悪魔フォウォーレ族の戦争が物語られる。トゥアサ・デー・ダナンの英雄神ルグと魔眼のバロルとの戦いを中心に、様々なエピソードを含む。トゥアサ・デー・ダナンの四つの宝物に対する言及や、主要な神々の活躍がある。マグ・トゥレド(「塔の平原」)における戦いは、トゥアサ・デー・ダナンより先住のフィル・ボルグとの戦い(一度目のマグ・トゥレドの戦い)と、悪魔フォウォーレ族との戦い(二度目のマグ・トゥレドの戦い)があるが、一度目の戦いは前座のようなものとして片づけられる(この二度の戦いは下記の『侵略の書』においても言及されており、言わば設定が共有されている)。

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