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カタフーラ犬の今昔物語。木登りする珍しい犬?

◆この犬のブリーダーに語り継がれてきた歴史

17世紀――。
フランス人開拓者がアメリカ大陸、ルイジアナの湿原に入植し、見た目が奇妙な犬に出会います。

オオカミのよう。でも人懐っこい。
明らかに短毛で、足が長い犬の血が入っている。

それが“ウルフ・ドッグ”。
その100年ほど前、入植を断念、退却時にスペイン人が置いていった猟犬とアカオオカミとの子孫だった。

このときにフランスから持ち込まれた猟犬の血も入り、カタフーラは犬種として確立していくことに。

ボースロン、グレートデン、グレーハウンドなどの猟犬にアカオオカミが混血。

中型犬のカタフーラは、カラーバリエーションの短毛種になります。現在では牧羊犬の用途のほか、牛のための牧畜犬、猟犬、または番犬(Watch Dog)にもなれるという、マルチタスクの犬として紹介されていますが、そもそもは猟犬。

カタフーラとは、ウルフ・ドッグを飼っていた先住民族の名前“チョクトー”を不明瞭に英語発音し、また「犬も民族名も同じ」と軽視するような呼び方で始まったそうです。そのあとカタフーラには「キレイな湖」の意味があると噂を添えていますが。

オーナー、ブリーダー用の参考文献(英語版)

カタフーラ犬は、とにかく人が好きです。飼い主が望むような犬になるので、その後も人々に愛され続け、犬種としての繁栄をみます。

そして現代――。
1979年に正式に州犬として認定。それ以前は「カタフーラ・カー」「カタフーラ・ツリー・ドッグ」と呼ばれていたのを「カタフーラ・レパード・ドッグ」として統一。

豹柄のカッコイイ犬なのに、長いこと「カー(犬の中でも、みすぼらしい犬、野良犬の意味が強い)」だったとは……。もしかしたら、粗食に耐える犬だと聞いたことがあるので、ドッグフードが普及する以前は、残飯が主食だったのかもしれません。

確かにこの犬は、どんなエサでも喜んで食べます。他の犬だったらミルクが欲しい、カリカリが欲しい、生の野菜や果物は嫌い……。いろいろ出てくる文句がこの犬には一切ありません。

また「ツリー・ドッグ」とは、元々がアライグマやリスを木の上に追い込む猟犬だったため。性格的にも勇敢で、獰猛なクーガーやクマなども木の上に追い込みます。その木の下で吠え続ける仕事ができれば「ツリー・ドッグ」と言います。

日本のサイトで「木登りができる珍しい犬」と紹介されていてビックリしました。私が知らないだけで、登りやすい木には登ったのかもしれませんが、やはり犬は犬です。木の下で吠えるのが基本。

それは犬なら簡単だと思ったらいけません。獲物の匂いを頼りにしても風向きの問題や、木から木へと獲物に逃げられてしまう場合もあります。自分で狩って食べてしまいたい衝動もあります。飼い主に褒めてもらいたい一心の犬だけが、執念深く獲物を追いつつ衝動も抑えられる。カタフーラ犬は、生まれながらにそれができるので、重宝されてきた経緯があります。

犬の木登りについては一言も触れていませんが、参考までに。ツリーイング猟において、木に登るのは猟師(人)だと記載があります。


私の体験談ですが、犬と野山を散策中に木の上で昼寝しているクマの真下まで行ってしまったことがあります。そのとき一緒だった牧羊犬はまったく気づいておらず、それ以降は自分の視力を頼りに上を向いて歩き、クマがいたら、すぐに引き返せるように心がけています。

少し話が逸れましたが、世界的に多種多様な犬種がいる現代において、カタフーラ犬は州を出れば知名度は下がり、個体が北米大陸を出ることはないと言われています。

なおカナダでは、大型の牧羊犬が人気なので、中型のカタフーラ犬はちょっと珍しい。

しかし、大型犬とはいえ大型獣にはなかなか勝てないものです。犬のサイズというより、害をなす恐れのある大型獣には、猟銃が必要なことも。行政を呼ぶのは都会だけで、カナダの田舎に住むなら猟銃のライセンスを取得して、クマを撃つなら認可チケットを購入することになります。



◆カナダでカタフーラ犬のブリーダー(保存協会会員)をしています。

注)仔犬を紹介しますが、日本への譲渡目的ではないことをご了承の上でお読みください。  

ブリーダーは仔犬の健康の保証はもちろんですが、両親犬の働きぶりを提示できれば、より信頼されます。

うちの両親犬は2匹とも、放牧地にクマやコヨーテを見かけたら追い払いに一目散。それでも相手が居座る気なら、飼い主に知らせに来るのも一目散。ヤギがいる放牧地は見通しが良いのですが、私たちは犬の吠え声で気がつくことが多いです。

カタフーラ犬の中には、クマの首周りに絡みついて応戦することも(うちの2匹はしませんが)。とにかく勇敢な働き者です。

特記すべきは彼らのおかげで、うちの放し飼いのニワトリがキツネに獲られることがなくなりました!!

それは常に家の周りにいてくれるからです。彼らにとって守るべきNo.1は飼い主とその周囲。エネルギッシュに家の周りを周回して、飼い主が出てくるのを待ち構えている。キツネは寄り付く隙もないです。

また飼い主(私)が山歩きしたいときには必ずついて来てくれるほど忠実。しかも真後ろをついて来るので、しょっちゅう私と足がぶつかるほど好きで絶対服従します。そして、天敵の匂いを捉えると、すぐさま飼い主を守るべく偵察・防衛に行く。一度できた絆は揺るがないので、信頼できる犬です。



◆カタフーラ犬の特徴

日本語版を貼付します。

ウィキペディアにない特徴の追加説明。

・短毛種だが被毛がぎっしり。故郷ルイジアナの湿原において藪蚊に刺される被害が出にくい毛並み。この性質のおかげで寒さにも強くなる。

・泳ぐ能力に長けている。足の指のあいだの皮質が発達し、血液循環が良いので凍傷になりにくい。

これらの特徴があり、カナダの寒冷地でも短毛種でありながら大らかでいられる。

ただし運動量が飛び抜けているので、食事の質量に気を配るのと、冬の寝床にはじゅうぶん干し草を入れることが注意点です。




それでは、仔犬の両親の紹介を。

父親犬。いつも走り回ってパトロール。


母親犬。眼球内側がオッドアイで珍しい。こういう目を
グラス・アイと言いますが、彼女は視力がとても良い。




ここからは、仔犬の成長について。

生まれたばかりの仔犬は目が見えず、干し草のベッドで
母犬に温めてもらって最初の2週間を過ごします。


生後4週。ヨチヨチ歩きのころ。
母乳だけでは足りなくなり、ドッグフードも食べだします。


生後8週。そろそろ離乳のころ。
外で母犬と古い革手袋を引っ張り合って遊んでいます。

生後2ヶ月で仔犬を希望者に引き渡します。
今回が3回目の繁殖なので、うちではこれが最後と思っています。

これまで州を越えて仔犬を迎えに来た人、または離島から文字通り自家用機で飛んで来た人、いろいろな人の用途に合う犬として、カナダ全土で活躍中です。


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