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Q7 「再エネ」太陽光発電所によって再エネ賦課金がさらに上がるのではないか?

このシリーズではパシフィコ・エナジー株式会社の社長の松尾大樹が太陽光発電所に関する様々な疑問に回答します。

今回は再エネ賦課金が上がり電気代を支払う国民の負担が上がるのではないか?という疑問についてです。答えは太陽光発電の買取価格と火力発電の発電コストによるということになります。さっそく見ていきましょう。

経済産業省の説明によれば再エネ賦課金は、「①FIT再エネ電源の買取費用(円)」から「②回避可能費用(円)」を引いたものを「③FIT再エネ電源の販売電力量(kWh)」で割ったものとあります。

「②回避可能費用」とは再エネ電源によって代替可能となった火力発電などの費用のことです。
したがって物凄く単純化して言うと、「①再エネ賦課金」とは

再エネ電源の買取価格から火力発電の発電コストを差し引いたもの

となります。

したがって、再エネ電源の買取価格が安くなる、もしくは、火力発電の発電コストが高くなる、このどちらかが起きた場合に再エネ賦課金が下がることになります。


次にこの「②回避可能費用」は2016 年から日本卸売電力取引所(JEPX)の電力の卸値であるスポット価格という値が段階的に用いられるようになりました。

次に当社が造ってきた太陽光発電所の認定年別の買取価格を見てみましょう。JEPXのスポット価格も同時に表示してみます。

当社作成

再エネ特措法が開始された2012年当初太陽光発電所の建設コストは高く、再エネ賦課金による消費者による負担によって太陽光発電所は導入されました。
当社の事業も当初40円/kWhでようやく採算に乗るくらいの発電所でしたがその後のパネル価格下落や当社独自の設計、及び大量購入による購買力の強化によって年々コストを下げる努力を重ねてまいりました。その結果2017年には32円/kWh、2018年には27円/kWh、2019年には24円/kWh、2020年には15円/kWhという売電価格の値下げを実現して参りました。
また当社は2022年6月に行われた太陽光第12回入札の結果、9.86円/kWhの供給価格にて1件発電設備の出力76.8MWを落札致しました。こちらは現在山口県にあるゴルフ場を活用し太陽光発電所(交流出力:76.8MW)にするもので、2027年中の運転開始を予定しています。10円/kWhを下回る水準は当社として初めてで、同発電所が稼働した暁には火力や原子力に引けを取らない低コストの電源となります。

一方でJEPXのスポット価格はロシアによるウクライナ侵攻以降のエネルギー高騰によって2022年は年間平均が22.4円という水準まで跳ね上がりました。今年は本日までで18.39円/kWhとなっており、このような水準が続くのであれば、当社が建設を行っている播州太陽光発電所(15.37円/kWh)、三田太陽光発電所(15.17円/kWh)はJEPXのスポット価格よりも安い電気を供給することとなり、それによって再エネ賦課金を下げることができる当社初の発電所になるかもしれません。

上の図で示した通り、当社は当初40円/kWhという買取価格から始まり、現在は10円を下回る水準の太陽光発電建設にチャレンジしています。それは再エネ賦課金という消費者(国民)の皆様のご負担によって支えられたものです。その負担を軽減し、真に安全・安心・安価なクリーンエネルギーを届けることは当社の使命であり、社会的な責務と考えています。

なお、回避可能費用にJEPXスポット価格を用いることは私は正しくないのではないかと考えています。それは国民負担の再エネ賦課金によって造られたFIT再エネ電源は電力会社からゼロ円/kWhでJEPX市場に卸されていて、JEPX市場価格を押し下げていて、火力等の回避可能費用を表現していないと思われるからです。ゼロ円/kWhのFIT再エネ電源によって過少評価されたJEPXスポット価格が回避可能費用として用いられることによって、再エネ賦課金は過大に請求されることになり、国民負担が二重払いにならないか懸念をしています。この点はまた研究を進めた上でお伝えしたいと思います。

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