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遊水池に渡り鳥が集まる細江太陽光発電所【パシフィコ動植物図鑑】

宮崎県宮崎市の郊外に位置する細江太陽光発電所は96MWという九州で2番目に大きい太陽光発電所です。2018年から運転を開始しており、年間発電量は約1億kWhで一般家庭約2万4千戸分の消費電力量に相当します。

細江太陽光発電所の特徴はその広大な敷地です。敷地面積は約100haにも上ります。広大な敷地に降る雨を場内で貯めるために敷地面積約7ha、容量27万m3もの大きな防災調整池を設置しています。

この防災調整池とは急な雨が外部にいっきに流れ出すことを防止する目的で設置されるため、晴れた日は干上がってしまう性質があります。当社はこのエリアに多様な動植物が戻りやすくなるように、この防災調整池の真ん中をさらに1mほど浅く掘りこんで常時水が貯まるような遊水地を作り、池の周辺の勾配を緩くすることによって動物が水を飲みやすくなるようにしています。

細江太陽光発電所の第一調整池設計図。水色の部分が遊水地。

当社では除草剤や農薬の使用を行っておらず、人力で草刈りを行っています。そのため太陽光発電所内では568種もの多様な植物が確認されています。また遊水地周辺の水辺では湿地を好む様々な植物種が新たな植生を形成しており、91種の植物が確認されてました。その中には準絶滅危惧種に選定されているタコノアシやミゾコウジュも確認されています。

細江太陽光発電所の第1調整池。20万m3の水を貯える容量を備える。中心が遊水池がある。
細江太陽光発電所の第2調整池。中心に遊水池がある。
第1調整池の遊水池で確認された準絶滅危惧種のタコノアシ
第1調整池の水辺で発見された準絶滅危惧種のミゾコウジュ

発電所内では狩猟は禁止されています。そのため訪れる野鳥たちにとっては静かで安全な環境が維持されています。遊水池を訪れる渡り鳥も毎年数が増えています。

昨年行った調査では秋から春にかけて遊水池に48種の鳥類が確認されました。マガモ、オナガガモ、ホシハジロなどのカモ類10種の他、カワウ、ダイサギ、バン、オオバン等多数の水鳥が確認され、渡り移動を行う水鳥の休憩の場所となっていることが分かりました。水底の水草を食べている様子も見られます。

冬に飛来したヨシガモ(緑の頭)
冬に飛来したホシハジロ
秋に飛来したマガモ
カルガモ、マガモ、オナガガモ、ホシハジロ。手前は採餌行動中。
農業用水の取水筏にとまるカルガモの群れ
悠々と泳ぐカルガモ
カイツブリと巣
冬の遊水池の風景。カモ類で混雑?
水辺の調査の様子

以上に見てきたように下流域の人の生活を守る目的設置された防災調整池は元々干上がる性質のものでしたが、野生動植物の営みに配慮して用意した遊水池には多くの鳥が立ち寄る飛来地となりました。これからも自然環境に配慮しこういった工夫を凝らすことによって、工事によって消失した自然が早期に回復しより多様な生態系が形成されるように努力していきたいと思っています。

今後もこの静かで安全な環境を維持し、毎年渡り鳥の飛来が増えることを楽しみにしています。

パシフィコ・エナジーは自社にて開発した発電所に関する記事をシリーズ化してお伝えしています。関連するこちらの記事も是非ご覧下さい。


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