石の本。そして、雨の本。2

会場にはもうすでに参加者が本を並べていた。私はメールで送られてきた。番号を探しながらキャリーバッグをガラガラと引きずった。

「あっ、ありました。ここです」

田所さんがいち早く番号を見つけた。よかった。やっとこの思いキャリーバッグから解放される。

私はキャリーバッグを開けた。中には本が一冊だけ入っていた。……なんで?私は本を持ち上げようとしたが、ずしりと重くて持ち上がらない。

「なんだ、これ。凄くお・も・い」

「これは通称、石の本と呼ばれている本です。その昔、サハラ砂漠を旅した。旅行家が旅行中に書いていた日誌なのですが旅行家が遭難してしまい長い間、砂漠に埋もれている内に石のように重くなったと言われています」

田所さんは胸を張って答えた。私は唖然としながら説明を聞いた。この一冊の本のために私は汗水垂らしてキャリーバッグを引いてきたのかと思うとなんだかバカバカしくもなった。

「値札はこれです。本の前に置いてください」

私は渡された値札を見て驚いた。ゼロが3つくらい多い気がする。

「へ、こんな高値で売れるんですか?」

「うーん、どうでしょう。こういう場所で商いするのは初めてなので…でも、この本の価値がわかる人ならきっと安いと考えると思いますよ!」

「売れなきゃ当然、持ち帰り…」

「そうですね。残念ですが」

それは困る。本当に困る。何としても売らねばならぬと私は心に誓った。

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