「モテキ」に触発されて”おじさんアイコンのユーザー”に会ったらおじさんが出てきた話

【頭がバグっていた時の話】

「モテキ」をご存じだろうか。
いや、この際ご存じでも存じ上げなくても結構で、かく言う私も原作をみていないので「ご存じだろうか」などと高圧的に詰問する筋合いはない。
もうモテキの概要でもなんでもないが、「この話をするうえで必要なエッセンス」だけを抽出してまとめると、

「こじらせサブカル男子・藤本幸世(森山未來)、twitterで知り合った“おじさんアイコンのユーザー”と話が弾み、二人で飲みに行くことに。『ムサいおっさんがでてくるんだろうな』と思って待ち合わせ場所にいくと、そこにいたのはなんとあの““““長澤まさみ””””だった!!!!!ファファファファーーーン〈レゲエホーン〉」

という話

彼女との出会いを皮切りに、幸世に”モテキ”が訪れ、4人の美女に囲まれ、小鳥たちは歌い、花は咲き乱れる。

そんなことある?
いや、ない。ないのだ。

そうこれはフィクション、観客を沸かせるための「トンデモ展開」。作品としては面白いが、実際に「話の合うおじさんアイコンのユーザー」に会って「”長澤まさみ”もしくはそれに類するもの」が現れる確率は限りなくゼロに近いと言っていい。ましてやそんなことが、自分の身に起こるはずがない。


そう思っていた。あの日までは。


”モテキは突然やってくる。”


twitterのDMに、一通のメッセージが送られてきた。
見ず知らずの人からのDMは、大抵が「妖艶な女から妖艶なURLが送られてくる」ケースなので、今回もその一つであろうと高を括っていた。

しかし、違った。


「初めまして、こんにちは!
カナタさんのプロフィールに情報工学科とあって、興味が沸き連絡しました!」


なに?プロフィールを見て?情報工学科としか書いていないプロフィールのどこに興味が沸いたんだ?てか誰?なにお前誰?名乗r


”話の合う、おじさんアイコンのユーザー”


はっとした。まさに「それ」だった。

「ITベンチャー、開発好き」
プロフィールに一言だけを添えたそのアカウント、名をば「たつんご」

僕は「たつんご」に、すぐさま返信した。


「ご連絡ありがとうございます。

僕も、興味が沸きました」


弾む会話、高鳴る鼓動。そうなることが約束されていたかのように、「たつんご」は僕に言った。

「カナタさんの話、直接聞いてみたいです!近いうちに一度、会いませんか!?」

そうして僕と「たつんご」は、とうとう落ち合うことになった。

ーー

19時、池袋。
「たつんご」は駅前の一角にある老舗のカフェを指定してきた。

勢いで「会いましょう」と快諾してしまったが、冷静に考えればそんなことあるはずがない。というか純粋に不安だった。待ち合わせ場所にいるのは、長澤まさみはおろか、得体のしれない”組織の人間”かもしれない。コーヒーには「APTX4869」が混ぜられていて、目が覚めると子供になってしまうのかもしれない。はたまた、「誰もいない」のかもしれない。何?なにそれ何目的?やだもうこわい

ただ、内心どこかで期待をしている自分がいる。おじさんアイコンのそれは、「タイムラインで生態系を崩さず”おじさん”を観測したいが故におじさんに扮した『長澤まさみ(あるいはそれに類するもの)』」なのかもしれない。

そのとき「たつんご」から連絡がきた。

「二階の手前の席にいます!」

期待と不安が入り混じる中、僕はカフェの二階へと上がった。


”モテキは突然やってくる。”


二階につき、店内に広く目を遣った。
ドリンクを運ぶ店員、勉強をする学生、談笑する老婦人。

そのとき僕は、一人の人物を捉えた。

手前から二番目のテーブル、アイスコーヒーを片手にパソコンを叩く人物。

そこにいたのは



「たつんご」だった



「組織の人間」でもなく「長澤まさみ」でもなく、「たつんご」がいた

アイコン画像の通りの、「おじさん」が出てきた。


僕はおそるおそる、声をかけた。

「あの…もしかして、『たつんご』さんですか?」

「あっ...!そう...です」

「たつんご」だった


いや、もちろん何もおかしくはない。
「然るべき場所」に「然るべき人物」がいる。
「たつんご」が来ると言って、「たつんご」が来た。

何もおかしくはない。そして「たつんご」は何も悪くない。むしろ正直だ。「たつんご」とはとても正直者なのだ


ただ一言いわせてくれ

ものすごくがっかりした


「あ...『たつんご』さん、改めましてこんばんは、ヤマギシです」

「あっ...あのこちらこそよろしくお願いします、"立川"です」


「たつんご」は、Macから目を離さない。Siriとでも話しているのかと思ったが違った。
「たつんご」は、コミュ障だった。

「たつんご」との話は、まるで盛り上がらなかった。
結局何に興味を持ったのかも、何の目的があって話したがっていたのかもわからなかったし、そもそも「たつんご」が何者かもよくわからなかった。DMの、「感嘆符のついた言葉」を発する前のめりな印象とはうって変わって、実際に会った時の「尻すぼみな話し方」は、正直よく聞き取れなかった

ただ、変なものを押し付けるわけでもなくマルチ商法を勧めてくるわけでもなく、なにかをもごもごしゃべっている「たつんご」は、まぎれもなく「いいヤツ」だった。


2時間ほど話し、喫茶店をあとにした僕と「たつんご」。

何気なく、僕は「たつんご」に聞いた。

「なんかこのへんで、おいしいお店、ありますかね?」

その時だった!
突然「たつんご」の目が輝きだした!!

「カナタさん!!いいこと聞きましたね!!
僕めちゃくちゃ食通なんですよ!!」

ここか!!!たつんごのツボはここにあったのか!!今までの時間とはこの瞬間のための前振りだったのか!!!

「えっそうなんですか!!わっ、なおさら気になります!!僕池袋来るの2回目とかで!!まだよくわかってないんです!!」

「いやー、この辺いいお店いっぱいありますよ!!僕結構この辺開拓してまわるのが好きなんですよね!!」

「っそうなんですか!!うっわ~!東京のおいしいお店って気になります!!え、いま気分的にラーメンが食べたいんですけど、立川さんが今まででいっちばんおいしいって思ったお店教えてくださいよ!!」

「一番かーっ!!決めづらいな~、

うーん...あっ、

結構こってりしたラーメンを出すお店なんですけど


『なりたけ』っていうところが



やばい



知ってる



ごめんなさい、そのラーメン屋、地元でめっちゃ店舗展開してるしてるんです....高校の時よく行ってたんです...しかしここで「たつんご」の気を悪くしてはいけない、せっかく輝きを見せた「たつんご」に陰りを見せてはいけない、ここは...


「あっ...なりたけ...実は僕、一回池袋きた時、なりたけ行ったんですよね、いや、でも本当においしいですよね!なりたけ...」

「あっ、そう...でしたか...」


ああっ!!「たつんご」!!気を悪くしないでくれ「たつんご」!!

「あっ、そしたら、立川さんがもう、ジャンルとか一切関係なくおいしいと思うお店、教えてください!!なんかラーメンとかよりむしろ、いっちばんのお店が気になります!!!」

すると「たつんご」の目に再び光が!!


「そうですね!そしたら、僕がお勧めしたいのはパスタのお店なんですけど!

このお店、一風変わったパスタが楽しめるお店なんですよ!」

「えっ!!なにそれ気になります!!!」


洋麺屋五右衛門っていうんですけど!!」



ごえもん




ごえもん



ごえもん



ごえもんは



日本全国にあります



みなさん、お近くの五右衛門へ是非

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