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上石神井の模型屋さん

 石神井公園駅南口の商店街の中に、以前「大成堂 玩具店」があった。一度調べたことがあったが、閉店したのは2015年だったようだ。二階建てで、純粋に子ども向けのものから、カード類、プラモ、エアーガン、一般的なものからマニアックなものまで、「街のおもちゃ屋さん」と呼ぶには、はるかに充実したお店だった記憶がある。大人が入っても十分面白かったのだ。

 その大成堂は閉まってからずいぶんそのままだった。いつの間にか工事が始まって、2022年の秋ごろになって「杉玉 SUGIDAMA」という居酒屋がオープン、今にいたっている。  
 これを居抜きとは呼べないが、開店してくれたお陰で再び建物の中に入ることも出来た。当たり前のことだが、内装はすっかり変わっている。以前は確か、階段を上がる途中に模型が並べられていた。今も二階は営業しているが、料理を運ぶ度にその階段を上がったり下がったりするのが大変そうで、そちらの方が気になる。
 おもちゃでも置かれていれば当時の様子を思い出せるが、チェーンのお店だし難しいだろう。いずれにせよ、かつて玩具店だったところでチューハイを飲み、寿司をつまむのは不思議な気分であった。

向かって左手に階段がある

 一方、西武新宿線の上石神井駅近くで営業を続けているのが「若葉模型店」だ。線路の北側で、少し歩いた路地の先にある。
 若葉模型店の表のショーウィンドウには、精密に塗装されたプラモデルがディスプレイされている。引き戸を開けて入ると、中は積み上げられた模型の箱でいっぱいだ。店主にうかがうと、お店を開かれてから、今年で54年になるという。

 最近の子どももパテを盛ってヤスリをかけるということはするのだろうか。ある程度年齢を重ねた男性であれば、「ガンプラ」を作った経験はあると思うが、同じガンダムのプラモデルでも、ずいぶん前から「接着剤不要」「塗装済み」の優れたキットが売られている。「時代だなぁ」とは感じるが、製品を作ったのも同じ日本人なのだから、これもひとつの進歩だと思う。海外でも人気があるようだ。
 若葉模型店には、何十年も昔、総合ホビー雑誌「ホビージャパン」の連載で読んだキットが販売されていた。量販店では見たことがない。一度無くなると次にいつ入るか分からないだろうし、思い切って購入した。本来は彩色や改造までするのだろうが、お店に飾られている作品は見事な出来ばえで、参考にするのさえ、おこがましい。

正直、そのまま売って頂きたい

 JR荻窪駅の北口に「タウンセブン」という商業ビルがあるが、ここにも「喜屋(KIYAだったかも)」という玩具店があった。閉店後、近くに移転した気がするが、今どうなっているか分からない。
 老舗の喫茶店や書店が幕を下ろすとテレビのニュースになるのに、街のおもちゃ屋さんが閉まっても、ほとんど報じられない。量販店かネットショッピングで肩代わり出来るという理解なのだろう。若葉模型店に行って分かることは、そんなことはないということだ。子ども向けだろうと、大人向けだろうと、ワクワク感が違う。
 再開発の進む石神井公園駅界隈と同様、上石神井駅でも線路の高架化と「南北道路」の開通が控えている。この先が心配なこともあって、個人経営の玩具店、模型店にはエールを送り続けたい。

今の荻窪駅前


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