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年末、石神井で鳥を探す

 先日、鳥の専門家のご案内で三宝寺池を回る機会があった、うるさいだけだったカラスに興味がわき、見慣れた水鳥たちに愛着をわかせたのは、その時の解説のおかげである。カワセミが急ブレーキをかけるような声で鳴くなんて、ほとんどの人が知らないはずだ。

 観察会では三宝寺池側の公園内にカラスの羽根が散っていた。「オオタカ」の仕業かもしれないということ。オオタカは「東京人」(都市出版)特別号の石神井特集でも、りりしい外見の写真が載っている。
 カラスたちが大騒ぎをして池の上空を飛び回る一幕もあった。「オオタカだ!」という歓声があがり、自分の視界の中にも入っていたらしい。暴れ飛ぶ鳥の群れを見て、「インコもいましたね」と言っていた人もいたから、バードウォッチングとは年期がモノをいうのだろう。池の上の水鳥も興奮していたそうだが、気づかなかった。

 東大和市の狭山丘陵に造られた人造の湖・多摩湖(村山貯水池)はとても美しい取水塔で知られ、「多摩湖自転車歩行者道」のゴールにもなっている。ここはオオタカが観察出来るそうだ。石神井公園に比べてもずっと空が広く、時々大きな鳥を見かけるが、自分はトビとタカとの違いが分からない。近年、都心でも大きな公園などでは繁殖があるという。

美しい多摩湖

 観察会以来、年末になっても、「オオタカを見たい!」という気持ちが強くなっている。一方、木の上に佇み、にらみを利かしているような姿の撮影はまず無理だと思う。
 私が好きな自転車レースも同様だが、展開を楽しむより、写真に収めたい人がいる。いきおいレースに集中するよりも、ファインダーをのぞくばかりになるが、プロ並みの機材を揃えたところで、スマホで撮った写真が勝る場合もあって、経験と道具、運との兼ね合いで必ずしも思い通りにならない。

 石神井公園を歩いていると、鳥の写真愛好家たちによく出会うが、服装からして自然に溶け込んでいて、本格的である。レンズの長さは「600ミリは欲しい」そうで、私が持っているような運動会用のものでは歯が立たない。知り合い同士で情報交換をしていて、仲間意識の強さがうかがえる。かといって排他的でもなく、カワセミが見つからずに迷っていると、気持ちよく居場所を教えてくれたりもするのだ。

今の機材の限界

 石神井公園の一角に「鳥獣保護樹林」という名称のエリアがある。フェンスで囲まれたほか、木製の衝立のようなところには小窓が開き、中をのぞけるのだが、特別なものが見えたことはない。しかし、このような形で人が踏み入ることが出来ない場所があること、それを来園者向けに示すことには意味があると思う。自然を大切にしようという気持ちが高まるからだ。耳をすませば、いろいろな鳥の声が聞こえる。こうして歩いて鳥を探すことは、自分でも結構上等な趣味であるような気がして、「デジタルデトックス」というワードが頭に浮かぶ。散策中、スマホを手放すことはないにしても。

散策は楽し

 少し前から、三宝寺池側では池の水位がすっかり下がってしまっている。「水辺観察園」においてはかいぼりを施した意図的なものだが、「ひょうたん池」はまったく枯れてしまっているし、メインの三宝寺池も底が見えて、水鳥たちが行き場を失っていた。公園の関係者に話を聞くと、それぞれ理由に違いがあって、「心配は要らない」とのこと。いずれにしても、紅葉から落葉へと、一気に冬へと向かう景色の中には水辺があって欲しい。徐々に少し前の池の姿を取り戻しているかもしれないが、素人目には心配なことだ。
 なお、年末に向けて空を見上げてはいるものの、未だオオタカの姿は目にしていない。

水位が下がって心配


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