森口博子が結婚を選ばないワケ

「結婚しないの?」「女の幸せは、やっぱり家庭だよね」なんて、女として生きていれば、まだまだそんな風に言われることもある。

それでも、結婚を選ばなかったひとりの女性がいる。17歳でデビューし、歌手・タレントとして活躍する森口博子だ。彼女は現在50歳。

決して結婚のチャンスがなかったわけではない彼女は、どうしてその道を選ばなかったのか。

今回Palette事業部は、森口さんへのインタビューを通して彼女の"結婚観"について詳しく聞いてみることにした。

(インタビュアー:合田 文)

仕事を辞めるっていう選択肢はなかった

合田:森口さんといえば独身キャラみたいなところがありますけど、結婚したいという気持ちは持っていらっしゃるんでしょうか?

森口:正直、今が楽なんですよね。大切な仕事が自由にできて。

合田:ほうほう。

森口:お付き合いした方もいたんですけれど、最初は仕事を応援してくれていても、いざ結婚ってなったときに「やっぱり、仕事をやめて家庭に入ってほしい」って言われたんですよ。

合田そっか…特に森口さんと同世代の男性だと、そういう人は多いのかもしれませんね。

森口:4歳のときから歌手になりたくて、17歳でデビューさせていただいて。あれから33年経った今でも、たくさんの歌手の方の中から私を選んで好きでいてくれて、ライブに足を運んでくれるファンの人たちがいて下さる。音楽でエネルギー交換ができた瞬間、最高の居場所を実感するんです。そう思うと、仕事を辞めるっていう選択肢は私には絶対にないんですよ。だったら今のままでいいなって。

合田:じゃあ、結婚したくないというわけではなく…

森口:そう。私とご縁のあった方々が、結婚しても仕事を許してくれる人たちではなかった、ということなんですよ。

合田:"女性が仕事をするのを許す"という感覚も「仕事は男のものだ」とか「男が養ってあげるものだ」というニュアンスが強いように感じますよね。家族で暮らすにあたって、収入を得ることと家事をすることは両方絶対に必要だけれど、完全に性別では分けずに得意不得意やタイミング等で分担してやろうという考えを持っているカップルも多くなってきているのが、私たちの世代かも。

森口:ああ、そういう人には好かれて来なかったかなぁ(笑)。そういう感覚を持って素敵だなぁと思った人はすでに既婚者だったりね(笑)。

ライブを中心とした生活

森口:私の生活はとにかくライブを中心に組まれていてこだわりが多いので、もし結婚するならそういうのをめんどくさいと思われないかな、とも思います。

合田:と、言いますと?

森口:喉を大切にするので、たとえばレストランに入ったら暖房の風向きが気になるんですよ。風が直撃じゃないかなって。たとえば一度着席したとしても暖房があたりすぎていたら「もしほかの席が空いてたら、別の席に移動したい」ってお店の人に言いますね。

合田:うんうん、声のプロですものね。でも、森口さんのように"こだわり"や"好き"を大切にできる人が増えたら素敵だな、と私は思っています。自分を大切にしながら相手と理解し合うことが障壁にならない、むしろプラスになるような人がいれば、それこそ良いマッチングだなって。

森口:そうですね。ちゃんとお互いのこだわりや大切にしたいところを話し合うことができて、柔軟性のある男性がいいな。昔はオレサマが好きだったんだけどね(笑)。

合田:思ったんですけど、どちらかが、特に女性が男性の仕事に合わせる。という感覚の方が森口さんのまわりに多かっただけかもしれないですよね。世代的に。たぶん次世代の男性たちに囲まれていたら、フェアにお互いの仕事やこだわりを大切にできる人と出会えていたのかも。ようやく時代が森口さんに追いついてきたといいますか。

森口:あはは(笑)だったら、年下の方もいいな!

"歌"という、自分らしい方法で誰かを幸せにする

合田:ではご縁があったら、結婚する未来もあるかもしれませんね。

森口:ご縁があれば(笑)。去年50歳をむかえて「ああ、50年間もたくさんの方のおかげで生かされて来たんだな」と思うと同時に、これから独りで最期を迎えるのかなぁ?と寂しさを感じることもあります。でもこれは、自分で選んできたことへの責任と充実感の対価ですね。

合田:何を選択しても、きっとその対価は発生しますよね。逆に仕事を諦めるという対価を払って、家庭に入られた女性もいるだろうし。

森口:そういう生き方は私にはできなかったから、尊敬の気持ちがあります。私は女性として生まれたけれど、これからの社会を担っていく子供を持つということに目を向けなかった。でもそのかわりに私は、歌うことで誰かの生きる力に繋がったり、背中を押したりすることができれば良いなぁと思っています。幸せな使命を感じています!私のやるべき事だって。

合田:誰かを幸せにしたり、支えたりする方法はたくさんありますものね。

森口:4歳なんてまだそんなに意識もはっきりしていない時期から「歌手になる」と決めていて、テープを聞き返してみると小さい頃から歌の音程も良いんですよ。これは頂いているというか、預かっているものだと。オーディションに落ちまくって、うまく行かなかったときにも、歌手に「なりたい」ではなく「なる」と疑わなかったんですよね。おかげ様で昨年はNHK「全ガンダム大投票」でデビュー曲が、1位に選ばれたり、新曲もランクインして、音楽のいろいろなジャンルで4つも1位を頂けて、結婚どころではありませんでした(笑)。応援してくださっている全ての方々が、奇跡を起こして下さいました。そして、「KING SUPER LIVE 2018」での東京ドーム、台湾公演も大成功で本当に心から幸せです。この歌声が、誰かの心に届いて、社会のお役に立てばと。生涯発展途上の現役で、歌い続けたいと強く願っています。そう思うとね、結婚がすべてじゃないなと。

合田:結婚はひとつの選択肢だな、と感じたのですが「結婚しなよ!」と言ってくる人たちは多いですよね。森口さんなら何と答えますか?

森口:「幸せだな」と思うところは一人ひとり違うんだっていうことを伝えますね。「結婚できなくてかわいそうに」だなんて、言語道断なんですよ(笑)。何が幸せかなんて、本人にしか感じることができないし、その人自身が決めることですから。

そんな風に話してくれた森口さんの言葉に、私自身がずいぶんエンパワーメントされた。

仕事や結婚、出産、それだけでなく女性がキャリアを描く中で、たくさんの選択肢があるということは理解しているが、学生時代の仲間が結婚するのを聞くたびにざわめき立ち、焦りを見せる友人たちに「それでも、私は私らしく生きたい」と堂々と話すことに、少しだけ勇気が要ると思い始めていたからかもしれない。

誰かの「幸せ」を他人がものさしで測ることはできないし、何を選ぶかはいつも自分の心が決める。もしそれを尊重した先にマッチングする相手がいれば、一緒にいればいい。だから私は私がやるべきと思った方法で、世界に何かを返していく。そんな生き方をする彼女のようなロールモデルを、私はずっと探していたのかもしれない。

(撮影:治)

この記事は、2019.01.31にウェブメディア「Palette」にリリースされたものです。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

Palette(パレット)は、性のあり方や生き方の「こうあるべき」を超えてゆくためのメディアです。いただいたサポートは、コンテンツの制作費に使用させていただきます。宜しくお願い致します。

メンバー一同からの感謝を送ります!
40

Palette(パレット)多様性×インタビューメディア

「こうあるべき」を、超えてゆく。をテーマに、LGBTQ+、フェミニズム、多様性について、漫画やインタビューを通して発信しています。セクシュアリティやジェンダーにかかわらず、一人ひとりの選択肢が無限に広がる世界へ。8月の特集テーマは「#グッバイ夏のモヤモヤ」。

わたしの選ぶ未来

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。