声を上げることは、自分を大切にすること 山本和奈が考える"政治"

「週刊SPA!」による「ヤレる女子大生RANKING」に抗議して署名活動を開始した山本和奈さん。彼女はその後VoiceUpJapanという団体を立ち上げ、多くの人が声を上げられる社会を作るための活動を続けている。彼女の署名活動開始のスピード感と、その後編集者との対話へと展開する力に、私は大きく刺激を受けた。

実は彼女はこのVoiceUpJapanの他にも、南米の教育問題に取り組むNGO、エシカルファッションや環境に配慮した竹の歯ブラシのプロジェクトの代表をつとめるなど、様々な社会問題に対するアクションをリードしている。さらには性暴力や選挙に関する活動など、彼女は活動のフィールドをどんどん広げ、そして仲間の輪も大きく広げている。いったい何が彼女を駆り立てるのか、その理由を聞きたい!そんな思いで私は企画書を送った。

すると企画書を送った直後「今日は比較的時間が空いてますが、どうですか?」という返事が。私は「今日?!」と驚きつつも、その2時間後にはオフィスでインタビューが始まっていたのだ。彼女のスピード感とエネルギーをインタビュー前から体感し、やや圧倒されながらインタビューを始めることになった。

(インタビュー:伊藤まり

まり:今日は忙しいなかありがとうございます!突然ですけど、和奈さんは4つのプロジェクトを同時に進めて、講演もして、ダンスもして、尋常じゃない活動量ですよね。ちゃんと寝てますか?(笑)。

和奈:あんまり寝てないですね(笑)。1日だいたい3−4時間睡眠です。少し前はもっと忙しかったんですけど、でもこうやって突っ走れるのは20代のうちかなって思うので全力でやっています。

まり:そのエネルギーもすごいし、スピード感も驚きだけど、取り組んでいる社会問題のジャンルが本当に幅広いですよね。ジェンダーや政治から、環境問題、国際協力まで取り組んでいて、すごいです。関心を持つきっかけが何かあったんでしょうか?

和奈:もともと私が通っていた学校では小学生の頃から社会問題について考えさせる授業が多かったんです。国を選んでリサーチしたり、気になる社会問題についてのプロジェクトを作ったり。だから、社会問題に対してはすごく自然に関心を持つようになりました。でも実は大学に入って2年生くらいまで、政治についてはちょっと遠いことだと感じていたんですよ。

まり:え、そうなんだ!それは意外でした。政治にも関心を持ち始めたきっかけは何かあったのでしょうか?

和奈:一番大きなきっかけは、留学でチリに行ったことかな。チリは90年代まで独裁政権だったということもあって、みんなの政治意識がすごく高いんです。私がいる間にも政治的に大きな変化が常に起きていました。だから普段からみんな政治について話しています。そんななかで友達から「日本はどうなの?」って聞かれたときに、私はそこまで深く語れるほど知らないと気づいて恥ずかしくなったんですよね。

まり:日本だと確かに政治がどうやって身近な生活と関わるのか知る機会ってなかなかないですよね。

和奈:ちょうど私が大学2年生の頃って、SEALDsの人たちがたくさん活動していた時期。でも自分は全然関わっていなくて、バイトとダンスばかりやっていたから、今は「当時の自分!ちゃんとして!」って思います。

まり:その分のエネルギーが今爆発している感じだよね。そんな今の和奈さんが、今の政治について一番思うことは何ですか?

和奈多様性の少なさです。今の内閣の平均年齢って64.2歳なんですよ。それに21人中女性はたった1人だけ。政治をリードしている集団が、ある特定のバックグラウンドに偏っているんですよね。だから金銭感覚とかも偏っちゃってるんだと思います。カップラーメンの値段を400円と思ってる人とか、主婦がパートで月25万円稼げると思っている人とか…。

まり:明らかに私たちの生活の実情をわかっていない人ばかりが政治をリードしているんですね。

和奈:そう。同じ価値観を持つ人だけで話し合えば議論はスムーズに進むけど、それだとマイノリティは無視されてしまう。逆に多様な人で話し合えばいろんな意見が出るから、正直議論するのはめんどくさいんです。でも、だからこそ多様なバックグラウンドを持った人たちで話し合わなきゃいけないと思います。そういうのが日本の政治には欠けていますよね。

まり:"多様性のめんどくささ"が必要なんですね。そういう考え方は「週刊SPA!」のときのアクションにも共通していると感じました。

和奈:「新潮45」が休刊になったとき、そういう解決の仕方はおかしいなって思ったんです。だってそれって、根本の問題はなにも解決されていないじゃないですか。ただバッシングされたから謝罪して休刊にしておしまいにするだけでは何も変わらない。本当に大切なのは、向こうがどういう経緯でそれを書いたのか、そのどこに問題があったのかを知ることだと思うんです。

まり:確かにそこがわからないままだと、また同じようなことが繰り返されて傷つく人が出てしまいますね。

和奈:だから私たちが「週刊SPA!」の方と話し合ったときは「何が問題だと思いますか?もし問題だと思っていなかったらそれでいいんです。そこから話し合いましょう」って言いました。大切なのは問題だと思っていない人に届けることだから、向こうの価値観を理解しないと始まらないんです。

まり:でもやっぱり、価値観の違う人と話し続けるって疲れませんか?政治とかジェンダーの問題について声を上げるとバッシングとかも多いと思いますが…。

和奈:Twitterとかでくる誹謗中傷とかはミュートしてますよ(笑)。そういう意味で"セルフケア"、自分の心を大切にすることはすごく大事だと思います。だから、匿名で誹謗中傷してくる人はミュートするし、仲のいい友達とご飯食べに行ったりしてバランスとってます。

まり:声を上げ続けるためにはそうやって自分の心のケアをすることは本当に大切なことですよね。

和奈それにそもそも私は、社会問題に声を上げること自体が自分を大切にすることだと思うんです。

まり:それはどういう意味ですか?

和奈:たとえば年金問題。自分は年金払い続けているのに老後もらえないかもしれない。それって自分がすごく困るから声を上げる。今元気な人は、自分がその分一生懸命稼げば大丈夫って思えるかもしれないけど、いつ怪我をしたり病気になるかわからないですよね。誰でも将来困る可能性はあるわけです。自分が安心して暮らしていける社会を作るってことは、自分を大切にするってことだと思うんですよ。

まり:なるほど、確かにそうですね。

和奈それに、政治について声を上げたら何かが変わると信じるってことは、自分の力を信じるっていうことでもありますよね。だから社会問題に声を上げるって、いろんな意味で自分を大切にすることなんです。

まり:確かに、自分が声を上げても何も変わらないって諦めてしまっている人は多いかもしれない。そうじゃないってことを、一つ一つ積み重ねていきたいですね。

和奈:そういう意味で「週刊SPA!」の方ときちんと話せて、こちらの話も聞いてもらえたっていうことはすごく自信になりました。今の社会では正直、声を上げても無視されて挫けそうになることは多いけど、でも最近はたくさんの声を上げる仲間がたくさんいるので頑張れています。

まり:私も和奈さんはじめ、いろんな世代で声を上げている仲間と繋がることができてすごく心強いです。

和奈:声を上げたくても誰も周りにいなくて1人で声を上げられないって人は多いと思うんですよ。でも、もしその人が1人仲間を作ったら、それはもうチームになる。大勢の前でスピーチすることももちろん難しいけど、本当は1人の親しい人に話すのが一番難しかったりしますよね。でも、そこを乗り越えられたらどんどん仲間が増えるんです。だから今度の選挙についても、勇気を持って周りの人に話してみる。そうやって仲間ができていったら、社会を変えていけるかもしれないって思ってます。

若い世代は政治に無関心だと言われる。確かに、まだまだ自分の生活がどのように政治と関わっているのかイメージのつかない人は多いかもしれない。それでも多くの若者が連帯し、声を上げ、社会を変え始めているのも事実だ。

「社会問題について声を上げることは、自分を大切にすること」

私は彼女の言葉にハッとさせられた。社会を変えたい、みんなが生きやすい社会にしたい、そういう思いは全て自分を大切にすること。そのように捉えると、政治の問題は一気に私たち自身の問題だと感じられるのではないだろうか。


Voice Up Japanが立ち上げたアパレルブランド公式サイトはこちらから。

Instagramでも力強いメッセージの込められたグッズが紹介されている。


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