日韓カップル

フィルター通して判断するの、やめよ。 日本でデモを目撃した、日韓カップルが思うこと

ここ最近ニュースやSNSで流れる、日韓関係の悪化を伝えるニュース。

「なんとなく韓国って怖い」
「なんとなく、韓国人って日本人のこと嫌いなんでしょ?」

そんな風に感じている人も多いかもしれない。

一方SNSには、"反日"という言葉やヘイトコメントが溢れ、テレビでは"嫌韓"コンテンツが次から次へと問題になる。

なんとなく流れる不穏な空気に、皆さんは日々どんな思いを抱くだろうか?

"日韓関係の悪化"のニュースを読むたびに、筆者の私の心によぎるのは、日本で暮らす韓国人や、朝鮮半島にルーツを持つ方々の思い、もしくは韓国で暮らす日本人の思い、そして、その方達の大切な人の思い。

ところで、終戦記念日の前日である8月14日に、大阪でデモが開かれた。日韓関係の悪化を危惧して、日韓の連帯や、現在の日本の政治に対する抗議の集会だ。

そして、このデモの様子を取り上げた、ある1本のYouTube動画が公開された。

タイトルは、「日本で日韓デモを目撃した韓国人の反応は…」というもの。

動画を作ったのは、YouTubeチャンネル「まよTV」を運営する、まいさんとスンヨンさんのお2人。韓国出身のスンヨンさんと、日本出身のまいさんは、日韓カップルYouTuberだ。

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双方の国に住んだことのある2人は、文化の違いや韓国語に役立つ動画を、日本語・韓国語の字幕両方をつけて発信している。

現在、2人は大阪に暮らしており、その日偶然デモを見かけたという。

その動画がこちら。

双方の国に住んだことがある日韓カップルのお2人は、このデモを見て、そして最近の日韓情勢について、どのような思いを抱いているのだろう。

(文章:伊藤まり

まい:スンヨンが韓国大使館に用事があって、2人で難波駅に向かっているとき大きな声が聞こえたんです。「デモが開かれてるな」っていうのはわかったんですけど、日本語だけでなく韓国語のプラカードも見えたんです。それで「お、何だろう?」って思って。近づいてみたら、今の政権に反対するデモでした。

伊藤:どんな雰囲気だったんですか?

まい:「日韓の連帯」、「差別やヘイトではなくて友好を作っていこう」というメッセージが中心でした。国会議員の人だけではなくて、一般の市民の方たちが飛び入りで参加していたのが印象的でしたね。それと、韓国の演歌も流れていて笑ってしまったよね(笑)。

スンヨン:うん、まさか難波のど真ん中でいきなり韓国の演歌を聞くことになるとは思っていなかったから、びっくりした(笑)。

伊藤:スンヨンさんは動画のなかで、デモを開いていた団体に寄付をされたとおっしゃっていましたね。

スンヨン:はい。こういう寄付をするのは初めてでした。でも暑いなか、日韓関係のために一人一人一生懸命スピーチをされている姿を見て、純粋に「お疲れ様です」という気持ちを伝えたいと思いました。

伊藤:今回、この経験を動画で紹介しようと思ったのは、どうしてだったんですか?

まいメディアのフィルターを通さずに、自分自身で直接、見て聞いて感じることの大切さを伝えたかったんです。

伊藤:直接感じることの大切さ?

まい:1年前、私はソウルに住んでいました。ちょうどその頃って、日本のメディアでは「日韓関係が史上最悪に〜」とか「反日感情の高まりが〜」というニュースが溢れていた時期で…。でも、実際に生活していると、「え?誰が反日?どこでそんなこと起きてるの?」っていう感じで。日本人だからといって態度を変えられたことは一度もなかったです。

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伊藤:マスコミというフィルターがかかった情報と、直接現地で感じることは全く違った、ということですね。

まい:はい。実は私も、中国の人に対して「うるさくてルールを守らない」みたいな偏見を持ってしまっていた時期がありました。でも、韓国留学に行って初めて中国の友達と出会い、彼らとたくさん会話をする中でそういう偏見をなくすことができたんですよね。と同時に、中国語も話せず、知り合いの1人もいないくせに、中国の人を一括りにして、あたかも全部知っているかのように思っていた昔の自分をとても恥ずかしく思いました。

伊藤:だからこそ、直接自分で見て経験することの大切さを伝えたかったのですね。とは言え、こういう動画を紹介するというのは少しハードルが高かったんじゃないかな、と思いますが…。

まい:もちろん、ネガティブな反応はたくさんありましたが、韓国の方や日韓夫婦の方、韓国に住んでいる日本の方からは「こういう動画をあげてくれてありがとう、救われました」というコメントがありました。韓国に住んでいるスンヨンのお母さんからは「こういう方も日本にいるんだ、安心した」というメッセージをもらいました。

スンヨン:母は、韓国のメディアを真に受けて心配してしまうタイプでもあるので、一部の反韓デモのニュースを見て、「大丈夫?」って連絡がきたりしていました。

伊藤:そうですよね…ご家族も心配されていたと思います。

スンヨン:でも動画を通して、こういう方が日本にいると知ってもらえたし、まいのご両親が色々お世話してくれるので、今は両親もすごく安心していますよ。

まい:何よりも嬉しかったのは、「なんとなく韓国嫌い、日本嫌いって思っている人が多いのは問題ですよね」とか、「お2人のように、自分の足で、見て聞いてくることが大事ですよね」というコメントをもらえたこと。「まだ未成年だけど選挙権を持ったらきちんと考えて行動したいと思います」という若い人の感想もありました。

伊藤:メディアの情報だけで決めつけるのやめよう、というメッセージが伝わったのですね。

まい:はい。やっぱりメディアの影響は、いい意味でも悪い意味でも強いと思います。たとえば、日本の若者の間で"日韓カップル"という言葉だけが一人歩きしているところとか。あたかも韓国男子をブランドのように扱って、「韓国男子と付き合いたい!」「韓国人彼氏に憧れます」といった言葉をよく聞きます。

スンヨン:正直、韓国のなかでも、日本人女性は「配慮ができて男性を後ろからそっと支える」みたいなイメージがあります。最近は韓国でフェミニズムが盛り上がってる反動もあって、「優しい日本人女性と付き合う方が"勝ち組"」ってコメントも見かけます。

伊藤:日本人/韓国人だからどうこう、なんてないはずなのに…。

スンヨン僕も周りに「気の強い韓国人女性よりも、優しい日本人女性が羨ましい。俺にも日本人女性を紹介して」って言われたこともあるけど、僕はまいが日本人だから付き合ったわけではないので、そうやって誤解されるのは不快なときがあります。

まい:私も、そう。たとえスンヨンが日本人でも、アメリカ人でも、南アフリカ人でも、"彼だったら"付き合っていたと思います。

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伊藤:本当にその通りですね。

まい:逆に、「韓国人男子は結婚したらDVするらしいよ」とか言ってくる人もいますけど、そうやって何かを決めつける人って基本的に、実は自分で経験したことがないんですよ。だから何の参考にもならない。

伊藤:何人かどうかでまとめられるほど、人と付き合うって単純じゃないはずですよね。

まい:はい。もちろん私たちは第一言語が違うので、特に付き合いたてのころは、伝えたいことがうまく伝えられなくてもどかしかったこともあります。ケンカするときもうまく表現できず悔しい思いをしたり、逆にやんわり伝えることが難しくて傷つけちゃったり。

伊藤:文化や言語の違いでぶつかる壁はあるかもしれないけど、私の周りの国際カップルも、いつも相手と真摯にコミュニケーションを取ろうとしているように感じます。

まい:そうですね。だからこそ、お互いへの理解や配慮が深まっている、と感じます。

スンヨン:僕たち2人だけの間ではなくて、お互いの家族も言語の壁を超えて、"何人だから"とか関係なく接してくれるよね。

まい:私たち2人は韓国語で会話できても、お互いの家族は話せません。それでもどうにか意思疎通しようとしてくれる。それに、家族の誰かが相手の国を訪れるときは、向こうの家族が私たち以上に気にかけれくれるんです。

スンヨン:純粋に受け入れてくれる周りの人たちにとても感謝しています。

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伊藤:それは素敵ですね。

まい:そういう、直接自分で感じるいろんな経験があって、目の前の相手を国で判断せずに、個人で向き合うことの大切さを痛感しました。

スンヨン:僕たちは、その国から出ない限り、メディアを通してしか外の情報を得られないですよね。ネガティブな内容だとなおさらです。でも、仮にその内容が事実だったとしても、個人個人に過ちがあるわけではない。だから、日本人や韓国人だ、という理由だけでお互いに見下したり、憎しみ合わないことを願っています。


なんとなく、私たちが自分と違う国で生まれ育った人に、ついつい抱いてしまうイメージたち。
それは、たとえば「○○人って△△人のこと嫌いなんでしょ?」というようなネガティブなものから、「××人は優しい、付き合いたい」というような一見ポジティブなものまでたくさんある。

しかし本当は、何人だからどうこう、などと簡単に決めつけるなどできないはずだ。国際カップルだって、それぞれが違った人間同士、違った文脈のなかで関係性を築いている。

もちろん、文化や言語の違いでぶつかる困難はあるだろう。逆に「国際カップルだから幸せ」ということでもない。もしそのカップルが幸せな関係性を築いているとしたら、それは彼らがお互いを"1人の人間として"尊重し、理解し合おうと努力しているからこそ。

人間というのは、人種や国籍、民族といった大きな括り方で表せるほど、単純なものではないのだ。そして人と人の関わりも。だからこそ、フィルターを通さず、ラベルを剥がして、人と向き合うことが大切なのだ。

ある1組の日韓カップルのお話を伺って、あらためてその大切さが胸に響いた。

お二人のYouTubeチャンネルはこちらから



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