過去が未来になる

おはようございます、Lillyです。
今回の記事は、前回

といった記事を書かせていただいたのですが、ご依頼者様より
続きが金を詰んででも読みてぇ~~~~と言われたので実際に有償記事として執筆させていただくことにしました。
ParfumRoseでは基本、何でも「金」で解決できるという物理で殴るみたいな感じの運営をしております。労力への対価、わかりやすい事ですね。
お金さえ払えば知らないジャンル、或いは読んだことのないジャンルでも喩え長い長い小説でも目を通させていただくっていうのが当店店長のポリシーです。
決して金の亡者という訳ではないのですよ? ただ、店長は労働には対価があって然るべきと考えるタイプの人間だというだけです。
それが普通の人なら、そんなの取らんだろ~~と思うものだとしても実際はその情報には価値があるもの、ってたくさんあると思います。少なくとも店主の場合は店主の生きてきた中での経験や学んできた色々なものがあってこその今ですからね。

さてそんな御託は置いておいて、前回のおさらいと相成りましょう。
ちなみに記事を読む上で前提しておくのが攻め君の事を孫、受け君の事を祖父と表記させていただきます。


今回の依頼について


今回の依頼は、とあるBLCP(同性同士の恋愛・カップルの事です。今更ですが)なのですが、そのCPの某映画パロ二次創作小説の“孫祖父”がその作品内では大人の恋人同士の関係がないものの、実際はあるだろうという依頼者様の想像・解釈を形にしたもの、です。
フェロモンはヒトフェロモンといった科学成分を使用したいわゆるモテ香水成分であり、モーテルはそういった愛を育む場所だったり、行為だったりを表現する当店オリジナルの“ブレンド”香料なのですが、その二つをオプションとして使用する事で、たった一回だけの愛のある孫祖父の時空を創り出すといったご依頼でした。

当店、同じイメージを作っても依頼する人によって香りが全く違うなんてことはザラなので、同じジャンルや同じ推しや推しCP依頼しても同じ香りになることはないです。似たような香りになることはないとは言えませんが、それでも印象は違いますよ。お友達同士でシェアしながら楽しむのもありかもしれませんね。

前回の記事にも書いたのですが、フェロモンとモーテルはセットのオプションにすることも可能ですが(基本は香水1本の依頼なので)今回の場合はフェロモンとモーテルをそれぞれの香水に分離させて、Wプッシュオプションをつける形で二本で一つの世界を表現させていただきました。
ちなみにWプッシュは、もちろんオプションをつけなくてもAとBの香水をかけ合わせればCの香りになりますがAとBを“重ねる”事でCの香りが“その香水の本当の姿”になる様に調整してレシピを構築するオプションです。
今回の場合ですと、仕掛けが面白いのでご依頼の一例として説明いたしますね。

孫 香水(A) と 祖父(B)の香水は独立した香りになっていますので、当然ですがどちらも単品で孫らしい、祖父らしい香水になっています。
Wプッシュオプションをつける事で孫・祖父が同じ空間に居るCの香りが生まれます。ただここで面白いのが、Aを先に吹きかけるか、Bを先に吹きかけるかで印象がまた違うという所です。

香水にはトップ ミドル ラストという時間経過がありますが、トップの印象がC1とC2では異なり、ミドルからラストにかけて少し似通った香りになり、最終的には「あーこの二つの象徴的な香りだ~」になっていくのです。
これは揮発性のある香水というものだから出来る時間経過経験ですね。そうです、一緒に過ごしている時を感じる事が出来ます。
特に当店の場合は自然香料の割合が多いのでより顕著に出ます。

で、今回の場合はWプッシュというオプションは拝読作品と相性が良い訳ですが、そこにフェロモン/モーテルがあるので、なおの事「同じ時間軸に存在しなければそもそもそういう行為も起こりえない、二人そろって初めて甘く切ない夜になる」という状態になる訳です。
孫と祖父を同時に吹きかけることで初めて、時間が重なり合う。

うーんエモーショナルですね。

所で、店主は基本的には自分の主観を入れない事を心掛けてるので基本的なプロフィール以外は敢えて見ない、もしくは知っている場合は情報をいったん忘れて制作するようにしているのですが、孫・祖父の場合はあまりにも有名なのと、私がたまに触ることがあるので、どんな人々かは知っている感じでした。ただ、依頼者さんのタイムラインに流れる固有名詞的な人間関係関連の表記はなにもわかりません……。あくまで孫・祖父を知っているだけなので他の面々は良く分からないし、孫・祖父の活動も極端に詳しいという訳ではないのです。店主の作る香水は、どちらかというと一人一人の人格をあらゆる方面から解釈した上での制作なので“詳しい”訳ではないんですよね。
これ余談なんですが、店主元々人と五分程度話したらだいたいのその人の人と柄を掴むのが得意だったりします。この人こういうの好きそうだな、とかこういう感じの考え方だな、とか色々。本質が見えやすいタイプなので(吃驚されること多々ありますが)それらが制作にとても多いに役立ってるという事です。

まあそれが今回の依頼の仕掛け、骨組みという訳です。今回はレシピを完全公開という事でお話を受けてるので、それも含めて話していきたいと思います。
あ、でもオリジナルブレンドのモーテルの原材料については内緒です。あくまでモーテルと表記させていただきますね。

フェロモン・モーテルを別々に分ける場合、前回記事にも書いたのですがどちらをどうやってレシピ組むか、攻めと受けどっちにどれを配合するのかをイメージに合わせて選んでいる訳ですが
今回の依頼の場合は、肉体関係の上下こそ孫祖父になっているけれど、孫祖父は、精神的には祖父孫であるという話をしました。この表記は誤解を受けるのできっちり説明すると

世間一般の古臭い価値観では、攻めが“惚れさせる側” 受けが“惚れた側”と評される事が多く、告白は惚れた側からするもの(まあ、世の中両片思いよりも片思いの割合の方が多いので必然的にそうなるわけですが)みたいな、そしてそれは受け側である、みたいな考え方多いじゃないですか。
ジェンダー的な話になると、男性が女性に告白するのではなく女性が男性に告白する、みたいな。
それらの凡的価値観に当てはめたら攻めである「孫」が受けである「祖父」に惹かれてやまない、好きでたまらない、みたいな図に思えるからこそ、精神的には祖父孫、肉体的には孫祖父である、という話です。
精神面がそうであったとして、攻め受けが変わる訳じゃあありません。現実だって惚れた受けにゾッコンで愛の奴隷になる攻め、全然居るでしょ。

だから孫が惹き付けられた側(射止められた側)、祖父が惹き付けられた側(射止めた側)という話です。いつの時代でも惚れたら骨抜きになるし、惚れたら負け、ってのはそういうことですね。
最初に好きになった、好きの気持ちが多かった方(重かった方)が相手に対して献身的になる、そして時間経過と共に二人が死を分かつときまで互いが互いを尊重する……もちろん最初の位置関係から反転する事も存分にありますが、それには月日が必要なんですよね。

そこまで考えて、はじめて、この香水は孫がモーテル(居場所・場所・行為・気持ち)で祖父がフェロモンという分担になった訳です。


ここからが書ききれなかった分

孫を「場所」であるモーテルにした理由、そして元記事のタイトルの意味ですが、そもそもモーテルはそういう事をする場所や行為そのものを表現した香りです。上記の理由を前提とした上で、さらに孫の方にこのオプションを入れたのは、この香水の元になった小説が、タイムトラベルものであるからという点です。
まず、そもそもとして祖父が異性婚をし子供を育て、その子供がまた子供を産み孫が産まれ、孫が祖父の若かりし頃の時代にタイムトラベルする事で出会い、孫が祖父を好きになっていくという過程を経ています。
であれば、祖父がスタート位置なのだからモーテルは祖父では? と考えられるかもしれませんが、孫が祖父の近くに行かなければ“そうはならない”所がポイントなのです。だから“居場所”がないから“居場所になる”んですね。
元より二人が若い肉体で揃っている時空は、いつだって孫がタイムトラベルしなければ成立しない訳ですから、“恋人同士としての居場所”が存在するのはあくまで孫が祖父と揃うこのタイミングだけしかないんですよね。といった様子です。
それが今回の元記事タイトルの由来であり、孫にモーテルを入れた理由です。

一方フェロモンをいれた祖父に関しては、相手を射抜くだけの魅力があるからという話でしたが、実は今回二種類のフェロモンをブレンドしております。
フェロモンは女性と男性で使い分けが必要でして、女性のご依頼者さんからの依頼の場合は、本来男性が使う(ことで女性にモテる)ものを使用します。この場合女性受けは非常に良いのですが、男性からは何か好きじゃない香りと言われる事が実際にあったので(過去に依頼者のご家族に試した方がいました)それ以降、香りを嗅ぐ方に合わせて配合するのですが
店主、祖父って男たらしだと思うんですよ。女性モテより男性モテしそうというか、だからユニセックスな方のフェロモン(男女共用)とフェロモン(男性→女性用)の両方を配合しました。正直香りに影響が出るわけではなく体感に影響が出るのがフェロモンなので(香り自体は無臭)感知のしずらい仕掛けではありますが、せっかくならと思った限りです。

あ、ちなみにこのフェロモンやモーテルって実は年齢によって感じ方が違うって話しますね。っていうのも、モーテルもフェロモンも基本的には香料の効能に催淫やホルモンバランスの調整等が含まれているので、使う年齢や性別によって“全く違う感覚”があります。まあ人間の鼻って同一ではないので、感じ方も人それぞれですし、アロマというもの全般における話ですが、芳香成分は好き・嫌いだけで効果の効き幅が違います。当然ですが年配と若者では必要となるバランスが異なります。あと当店の場合は依頼者に合わせて作っているので依頼者以外が嗅いでもしっくり感は出ないかと思います。
あ~わかる、程度に収まってますしね、実際。過去の話ですがモーテルの香り、年配の女性の方からはちょっとキツい感じで苦手、年配男性からはお風呂みたいな落ち着く香り、僕は好きといったようなコメントをもらった(依頼者さんのご家族意見)り、男児(子供)にすごい嫌がられたりなどなどあります。

これに関しては生理があるない、閉経してる・してない、ホルモンバランスが整ってる整ってない等の差異がありそうな気がしています。まぁ精油は植物ですから、薬や漢方と同じってことです。


レシピ


孫のレシピ
ラスト:モーテル/ヒノキ
ミドル:マリン/プリン
トップ:マンダリン
プリン水

祖父のレシピ
ラスト:ヒノキ/プリン
ミドル:クローブ/ミュゲ
トップ:レモン
プリン水/フェロモン

レシピ的には香料少ないように見えますがマリンもプリンもブレンド済み香料なので実際はもっと複雑になってます。ただマリンは合成香料を使用しているため、詳細はありません、マリンノートに使われる香りです。

今回はレシピについても細かく解説していくことで話は通っているので説明をしていきます。
まずモーテルについては上記内容以下省略とします。


孫「辿る糸」

今回ベースの香として使用させてもらったのはヒノキの香りです。ヒノキといったらヒノキ風呂の香りがしますよね。
まずこの香料を選定した理由としては、ヒノキは日本家屋においてはよく使われる木材の一つだったりします、実際ヒノキ風呂があったりしますし、それらを含めないにしても一軒家、木造の香りって想像すると森林系の香りだと思うのです。森林系の香りであれば他にも、マツ系の香りだったりヒバやヒソップなどがあるのですが一番身近で馴染みやすい香りであるヒノキを選びました。
またヒノキの芳香成分による効能は心身共に落ち着いてリラックスする事から自分らしさを取り戻す様な場面でお勧めとされています。ちなみに老化防止等のアンチエイジング的な効能もあったりしますね、まあこれは精油をキャリアオイルで希釈して塗布した場合の効果ですが。
ヒノキの花言葉は“不老・不死・不滅”などがありますが中でも“強い忍耐力”が存在します。それはヒノキという植物が長いと3,000年程生きることから由来された花言葉(樹木言葉?)なんですよね。
今回の孫は何度も何度もタイプループするので、好きな気持ちを抱えながら何度も何度も祖父に会うという忍耐強さを表すのにも丁度良いとしました。

(ところで孫祖父って、孫が祖父のファンで祖父が孫の話すると孫がはしゃぐ等したりしてた時代があったらしいですね、その点含めてもやっぱり孫→→→祖父みたいな気持ちのパラメーターしてそうですよね、あと何気に祖父が孫にたいしてツンな要素ある気がします。)

続いて、マリンノートの香料ですがマリンノートはよくよく嗅ぐとハーブ感(ローズマリー等の)があるのですが、海を思わせる香料の一つです。ダビドフのクールウォーターオードトワレなんかもこのマリンノートの香りがしますね。実はこの香水は、中高生を中心に若い系、ウェイ系かチャラ系のメンズに人気だったりする香水でして、爽やかでスパイシーなのが売りなんですよ。そういうイメージも含めて、尚且つその中でも温かみのある、そんな一面を表現したくてマリンノートの香料を選びました。
若さの象徴の様な感じであって、あと割と運動部系の男子がつけてる香水・コロンの要素としても取り入れたかったという感じです。
この香料がヒノキと合わさった時、深みのある爽やかさが誕生する訳なんですよね。

それからプリン、こちらの香りはフレーバー香料で制作致しました。
フレーバー香料というのは、一番わかりやすいのだとバニラエッセンスですが食品香料の事を言います。精油と異なって香りが強く残らないので、他の香料と合わせた時に強く感じるはずなのに消えていくのが早い状態になるか、逆に他の香料が消えたからこそ出てきてくれる香りになったりします。
今回のプリン、ですがわざわざブレンドして作った特別性です。
このプリンの香りは、カスタード、生クリーム、バニラの三つのフレーバーで構成されていて、まさしくクリームプリンの様な香りになりました。
子の香りをマリンの後に入れることで、マリンに拡散され過ぎないバランスを保っています。

そして最後にマンダリン。マンダリンはみかんの様な香りのする少し酸味のある柑橘類です。ただそれだけではなくマンダリンには花の様な柔らかな香りもあり、またオレンジやレモンの様なとがった酸味ではなく丸みのある柔らかな酸味であることから、孫の内面のふんわりとした、可愛らしさを表現しました。祖父母に好かれそうな柔らかさといったら伝わるかもしれません。

それをエタノールとプリン香料をエタノールで希釈したプリン液で締めくくったのが孫のレシピになります。
最後にプリン液で〆たのは、作中でプリンの描写が出てくることもそうなのですが、この孫にとってプリンは欠かせないものだということを感じたのもあるからです。
なんでしょうね、祖父と孫を繋ぐものの一つとして。思い出って香りと結びつきますからね。
それに最後にエタノールで希釈したプリン液を多く入れることで他の香料が消えた時にもいつまでも残ってくれる筈です。
レシピを考案してもその通りになるとは限らないのが香水作りですが、この試みは成功の様子でした、匂いがふんわりと残りましたね。


ところでマンダリンを選んだ話にはまだ理由がありまして、そもそも孫は表舞台では結構陽キャなイメージのある明るくて騒がしい青年っぽいのですが実際は無口なタイプであるということが色々な人により証言されています。実際学生時代にクラスの中にすっごいハイテンションだけどプライベートで遊んでみたらテンション低めのローテンションな子って居るんですけど、そういう子って結構お年寄りや子供に優しかったり、とっつきにくさに比べて、懐いた相手には純粋すぎる好意を向ける傾向にあるんですよね、マンダリンは色々な人に好かれる柑橘類なのでそういう親しみやすさも表現しています。

香水の名前「辿る糸」は祖父との糸にすがるように、辿る様に掴んでいくような面を表しています。祖父の香水の名前ともシンクロさせてありますが、何よりも孫はタイムトラベルを繰り返してたり等している訳ですから、何度も何度もその糸を辿っては切ない思いをしているのではないか、そういう解釈からこの名前にしました。


祖父「縁結び」

祖父のレシピですが、孫と同じヒノキが入っています。ですがこのヒノキ、入っている濃度が異なり、孫と比べるとより一層森林感が強いです。
基本的に選んだ理由は孫と変わりないですが、そこはやはり血縁を思わせるが故のそれです。

そして実はプリン。このプリンの香りは孫に比べると少ない上にクローブ(強めの香り)の前に入れたので孫程は感じにくい作りになっています。孫にとってプリンは祖父との繋がりを意味しますが、祖父にとってプリンは日常的に好きな物なので、ささやかな香りとして配合を薄めにしております。優しくて丸みのある香りがヒノキの中に合わさる事で、孫よりも祖父の家感を強めに表現しました。

続いてクローブですがクローブは歯科でも歯痛等に使われるハーブの一つで強めの鎮痛効果があります。その為、歯医者の匂いといったらクローブの匂いとかわらないのですが、クローブ自体はカレーのスパイス等にも使われるハーブでもあり、また古く昔から媚薬として使われていたという話もあります。柑橘類との相性がすごくよく
二つ合わさる事で魔除けになると信じられている時代もありました。
同時に冷えによく聞くハーブでもあるので、そのことから祖父の持っているじんわりと体の奥から響く様な温かみと同時に、少しツンツンした角に隠れた芯の強さに近しいほっこり感を表現しようと思い選びました。クセのある香りではありますが、プリンと合わさる事でクセが少し柔らかくなります。

その後に続いてミュゲを使用しているのですがミュゲは鈴蘭の事です。
鈴蘭の花言葉は「純粋」や「幸せの再来」と呼ばれているほか、花そのものには毒があり白く美しい側面もありながら、根や花を口に含むと最悪の場合死に至るレベルの毒性がある、まさに底なし沼の様な一面があります。
優しく優雅な香りなので香水の香料としては欠かせない香料の一つではありますが、祖父を一言で表現するのであれば純粋、ですがそれに比べも物にならない程、底がない……骨抜きにしてしまう程の魅力を持っているという事への表現に選びました。

そして最後にレモン。レモンはフレッシュさを表すのによく使われますが、今回レモンを選んだのはミュゲのかわいらしさを、爽やかにするために使いました。ヤンデレを引き寄せるようなミュゲ(?)、それは一見親切そうで面倒見がよいからこそ好かれるのだと思われがちなのですが、そもそもとしてそういうタイプに好かれる人間というのはもとよりその本人にその要素が少し入っているということでもあります。しかしそれを隠すのが上手とでもいいましょうか、至って爽やかに見えるわけです。
時に残酷な一面を見せるのに、そんなことをつゆほども感じさせない要素、それがレモン。
他の人と結ばれるにも関わらず、それでも一時でも相手の心に爪痕を残すような魅力にピッタリだと思いました。
それでも、ふと恋しくなってしまう……そうレモンの花言葉は呑気、そして心から誰かを恋しく想う、です。孫を消滅させてしまうような道よりも、違える人生を歩むと理解しながらも決別の上で成立する関係性。まさにピッタリじゃないですか?

それらを薄めのプリン液で包んであるのがこの香水のレシピです。


そして香水の名前の縁結び。これは祖父あっての孫である、ということです。祖父が誰か親しい人と結ばれたからこそ、孫が居て、孫はその結ばれた糸を辿ることが出来る。二つで一つのタイトルという訳ですね。

二人の関係性について

今回の香水のテーマは前回にも書きましたが儚さです。刹那的な関係になってしまっても求める事しか出来ない二人の、綱渡りの様な繊細過ぎる心境を表現しました。香水一本、一本のレシピは上記が理由で選びましたが、Wプッシュにしたときに混ざり合うこの香水の香りこそが二人の関係性・過ごした時間を表現しています。


まず二つの香水にはどちらもヒノキが入っており、ラストに残るのは家とプリンの香りのはずです。残された二つの要素、そして香りのバランス的に残るモーテル。最後の方はプリンと家の香りだけが残っているのでそこに二人は居ません。そう、いないのです。いるのは孫だけ。
祖父との全てを残しながら、祖父を象徴する香りをさせながら、祖父はそこにいない。この時の孫の心境はまさしく思い出の中で明日を生きるだと思います。それでも前に進む事が出来る、どちらもヒノキらしい「芯があり前向き」である。二人に継承しているものであり、二人が持って生まれた強さでもあります。切なくても生きていける、それが二人のメンタルの強さだと店主は考えました。

またミドルの部分はけだるくなるような熱い夜のような組み合わせにしています。
単体の時よりもねっとりとした二人の世界、確かに色濃く二人はそこにいる。
爽やかさが抜けきらない内に、どんどんと底から温まる様な構成にしてあるので、それこそ刹那の幻のような香りになるようにしました。
ミドルのテーマは焦がれる、であり、祖父の魅力に孫が呑まれる様な感じです。実際祖父の香りの方が強く出るはずです、むせかえる様な体温のある甘い香りになってるかと
さっきもヤンデレに好かれるのはと書きましたが祖父はこの関係性をたとえどのループでも受け入れたのではないかと解釈しました。刹那だとしても、残酷だったとしても、いつまでも心に残しておいてほしい、気持ちの丈が孫の方が強い様に見えて離してくれないのは祖父の方だということです。
分かりやすい好意を持っているのが孫なのだとしたら、祖父は表面からわかりにくいねっとりとした気持ちを持っているのだと思います。
これは店主の祖父解釈ですが、祖父は自己表現があまり得意なタイプではないのかなと思いました。例えば他人の事はよく見ているし、場の空気を保つのは得意なんですが自分の気持ち、特に本音を隠すタイプといいますが、本当は強い感情があるのに、それを表面上に出すことが出来ないという感じです。照れくささがあるというより、多分なんですけどどこかで自己肯定感が低い要素があるのかなと、それに比べると孫は好意表現においてはストレートです。これは誰かに好かれたり誰かを好いたりすることに幼少期から慣れている人の特徴でもあります。自己表現が苦手な祖父、そして愛される・愛することが体現できる孫。
華やかに見えるのは孫の方ですが、実際もっともっと底知れぬ愛を持っているのは祖父の方だと言えましょう。
作中の方でも結局祖父は孫との破滅を選ばなかったのも、結局のところは自分より相手を取ったということです、ただ別の見方をするのであれば、相手の気持ちや自分の気持ちよりも「保たれるべき距離」を守ったともいえます。保守的な人物像であるということですね、同時にそうだったとしても想いはなくならないというロマンチストな一面もあります。
そういう危うげで、深みのある魅力が祖父の魅力でもあり、そういう所に孫は惹かれたのではないかなと思います。

そしてトップ。最初に感じるべき所はどちらも柑橘系。
丸みのあるマンダリン、角のあるレモン。容器もそうなっていますが、二人の大きく違う所はそこだと思います。
フレッシュでスイート、だからこそ二つが一緒になった時爽やかな一つの風のような香りになるという訳です。だけどくどすぎることなく、いつまでも触れていたい、そんな始まりから熱をもち、最後には儚く消えて行ってしまう。
それが今回のWプッシュで想定した構成の内訳です。


長くなりましたが、普段こうやって色々考えながら香水を作っているので他の方の参考にもなればいいなと思います。
ちなみに基本的に当店はレシピは非公開とさせていただいてますが、このように記事を書いてくれという事であれば公開する事もありあますので、必要な場合は是非ご依頼くださいね。

この度はありがとうございました。
それでは良い推し活を!


Lilly


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?