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東京と心地よいぶらつき
東京に住み始めて10年以上が経った。
信号機すら無い田舎町で生まれ育ったこの身には、大学生活を過ごした京都市内すら大都会だった。コンビニ、レンタルビデオ店、何より書店が徒歩圏内にあることの嬉しさは、一人暮らしの不安や寂しさをこともなく吹き飛ばした。
京都ですっかり都会の人間になったつもりだったのに、東京の人の多さには面食らった。辟易したと言ったほうが正確だろうか。上京したばかりの週末、オール後
北海道オールスターズ
「言わなきゃいけないことがあるの」
言葉そのものより、絞り出すように声を発した彼女のこわばった表情が、何より事態の深刻さを物語っていた。最高潮に盛り上がっていた気分と下半身は、瞬く間に萎えていく。甘い言葉はもう十分に交わしたはずなのに、これ以上何を伝えるというのか。急なショックで停止した脳が再び動き出し、最悪のシナリオを描き始める。心臓は、嫌なリズムで鼓動を早める。
時計は24時間巻き戻る。
酒で隠れるもの、見つかるもの
両親ともに下戸の家庭に育ち、人生最初の約20年間をシラフで過ごした。微かに残る幼少時代のアルコールの記憶は、何の仕事をしているか分からない、いつもステテコでうろうろしていた叔父の千鳥足くらいなものだ。
今ではもう、大学入学直後の初めての合コンで飲んだカシスソーダの味を思い出すことはできない。女の顔すらまともに見られなかった情けなさと、荒波に揺られる船上にいるような気持ちの悪さだけが、記憶の片隅に
捨てること、そばに置いておくこと
捨てるのが苦手だ。
読み終わった本、着なくなった服、空になったペットボトルがいつの間にか部屋の少なからぬ部分を侵食している。
モノに執着しているわけではない。一度興味のレーダーから外れたモノは視界に入ることもなく、邪魔であることにすら気が付かない。そうして、死角はいつしかモノであふれかえる。
ところが、アウトオブ眼中のモノたちもいつしか積み重なり、閾値を超える。死角から視界へと再登場する。そ