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【対談】リアルだからこそできる顧客体験を。[abundantism 樋口雄太×パナドーム藤井伸昌]

パナドーム代表 藤井伸昌が、“今、気になる人”に話を伺う対談企画。記念すべき初回のゲストは、愛知県岡崎市でアパレルの企画・販売を行う「abundantism(アバンダンティズム)」オーナーの樋口雄太さん。

abundantismがあるのは岡崎の中心市街地であり、個性あるお店が揃う康生地区。実は、弊社が運営する複合施設「NEKKO OKAZAKI」のすぐ側にあるんです。お店としてはもちろん、物腰柔らかな接客とこだわり溢れる世界観づくりに樋口さん個人のファンも多数。「彼の活動に以前から注目していた」と語る藤井が、アバン流のお店づくりに迫りました。

-Profile-
(左)株式会社パナドーム 代表 藤井伸昌
愛知県岡崎市出身。幼少期から小さな電気屋を営んでいた両親の姿を見て育ち、「自分も人の役に立つ仕事に就きたい」と薬剤師の道を志す。大学卒業後は大手薬局に就職。その後、地元岡崎に戻り(株)パナドームの代表取締役に就任する。現在は、自身が立ち上げた薬局事業の他に、福祉事業、まちづくり事業と幅広い事業を展開。

(右)abundantism オーナー 樋口雄太さん
愛知県岩倉市出身。高校卒業後、服飾関係の専門学校に進学し、ブランディングやマーケティングなどアパレル経営について学ぶ。卒業後は、愛知県内でアパレルやライフスタイル事業を展開する会社に就職。その後、独立し「abundantism」をオープン。子どもの主体性を軸にした造形教室「岡崎ぎゃざ」も主宰。

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お互いを知ったきっかけ

(藤井)初めてお会いしたのは今年の7月。弊社が運営する「NONOJI」のユニフォームをリニューアルすることになった際、依頼先として最初に浮かんだのがアバンでした。お声がけしたのが5月で完成したのが7月。いま考えても非常にタイトなスケジュールでしたが、最後まで真摯に寄り添ってくださって。完成したユニフォームは、僕はもちろんスタッフもみんな気に入っているんです。

パナドームが運営するカフェ&ベーカリー「NONOJI」のユニフォーム。abundantismが制作。

(樋口)そう言っていただけてすごく嬉しいです!僕たちにとってもユニフォームづくりは初めての挑戦でしたが、担当者の方から丁寧なメールをいただいて、純粋にやってみたいと思ったんです。でも、藤井さんはそのずっと前から僕たちのことを知ってくれていたんですよね。

(藤井)そうですね。インスタのフォローもしてますし、定期的に配信しているインスタライブも拝見しています。僕は岡崎出身なので、この康生というまちが商売をする上で簡単なエリアでないことは知っていて。でも、そこでアバンはアパレルというニッチなビジネスをやっていて、地元はもちろん、遠方にもファンが多い。しかも、オーナーは僕よりずっと若くて、陰からずっと応援していました(笑)。

康生の伝馬通り沿いにある「abundantism」店舗


デジタルの時代だけど、リアルの場にこだわって

(樋口)僕は「abundantism」と「岡崎ぎゃざ」の2拠点を運営していますが、藤井さんは「パナプラス薬局」を6店舗、「NONOJI」「NONOJI THE SCONE」を含めると8つの拠点を運営しているんですよね。最近では、オンライン処方のサービスも増えてきていますが、リアルの場をもつことについてどう考えていますか?

(藤井)薬局の場合はどこで買っても薬は薬なので、売り物で差別化することはできないんですよね。そこで大切になってくるのが体験で。例えば、優しく迎え入れてくれたとか、親身に相談に乗ってくれたとか、笑顔が素敵だったとかもそう。薬局では、コミュニケーションが何よりもの体験になるんです。あと、薬局も地域包括ケアのひとつと捉えているので、相談やサポートのしやすさを考えると、複数の拠点をもつことは自然な選択でした。

(樋口)リアルだからこそ得られる体験ってありますよね。僕もお店を立ち上げる前から…なんなら学生時代から、めちゃくちゃお店に通っていて。そのときの体験が、いまのお店づくりに活きているのかなと思うんです。スマホでも情報は得られるけど、会って話をすることで頭ではなく心に訴えることができる。お店をはじめたのも、自分が服を届けるなら“直接話す”のが一番効果的だと思ったからです。

(藤井)なるほど。ここは、樋口さんの好きと得意が組み合わさってできたお店なんですね。僕はアバン流の独特な空間づくりにも注目していて。今だって、お店の真ん中に畑があるんですから(笑)。ブランドの世界観を、空間全体を使って表現されていますよね。

農家をしながら服づくりをする「mirror may」POP UP。
お店の真ん中には、畑をイメージしたディスプレイを設置。

(樋口)そうですね。お店だからこそできるアプローチをしていきたくて。とはいえ、展示に使うアイテムはほとんどDIY。この畑もホームセンターで材料を揃えました。ちなみに、靴を置いているのは、岡崎のタキコウ縫製さんからいただいた特殊なクッション。ソファーをつくる際に使用する材料でとても丈夫なんです。ハンガーラックはガス管を再利用しました。

(藤井)いや〜、個性があってかっこいいですよね。ここはお店であり、樋口さんの表現の場でもあるんですね。

(樋口)確かにそうかもしれません。服を売る場であり、表現の場であり、自分にとっての豊かさを追求する場でもある。僕にとっては、何よりも大切にしたい場所なんです。

廃材を活用したディスプレイ。
樋口さんいわく「見た目以上に丈夫で座ることもできる」そう。


プレーヤーとしての自分と、経営者としての自分

(樋口)僕からも藤井さんに聞きたいことがあるんです。今後、「岡崎ぎゃざ」は拠点を増やすことも検討しているんですが、他店舗展開する上で気をつけることを伺いたくて。自分がいない現場も出てくるとなるとマニュアルも必要かな…とか。1→2って難しくないですか?

(藤井)今後どうしていきたいかにもよりますが、身はひとつなので然るべきところに時間を使う必要があると思います。僕も薬局の3店舗目ができたタイミングで薬剤師業務からは完全に離れて、今は経営に比重を置いています。みんながみんな樋口さんのようにできるわけではないけど、それこそマニュアルをつくって仕組み化できるといいですよね。

(樋口)薬局の立ち上げ当初は、藤井さんもプレーヤーとして活躍されていたんですね。現場を離れるにあたって葛藤というか、苦労したことってありましたか?

(藤井)それはもう…めちゃくちゃあって。スタッフに仕事を任せたものの、状況が気になってつい介入してしまったり。周りにも自分にも常に100点を求めていたんです。許してあげていいのに、許してあげることができない自分に悩んでいましたね。そこから脱することができたのは、本を読み始めたから。先をいく経営者たちも同じような経験をしていて「自分だけじゃないんだ」と素直に受け入れることができたんです。

(樋口)許しか〜。僕も頭では分かっていても、接客のことになるとつい口うるさくなってしまうんです(笑)。声のトーンとか相手との距離感とか、細かいところまで目がいってしまって。

(藤井)分かりますよ。非言語のコミュニケーションって言語化が難しいから。樋口さんはそれが自然にできるんだから、本当に天職なんですよ。


チームで仕事をしているふたりが、大切にしていること

(藤井)もうひとつ大切にしているのが、会社のカルチャーを定めること。いわゆる“行動指針”のようなもので、パナドームの従業員として大切にしたい考えを弊社ではカルチャーと呼んでいます。「挨拶は、相手に元気になってもらうために誰よりも早く目を見て笑顔で」「店舗の顧客だけでなく全ての事業の顧客は自分の顧客である」など、全部で20のカルチャーを定めています。

(樋口)20個も!すごいですね。それは、社員の目線を合わせるためですか?

(藤井)それももちろんありますが、みんなにある程度自由に仕事してもらうためでもあります。企業として成長するためには、それぞれが創意工夫を凝らして日々の業務に努めていくことが大切ですし、ゴールは一緒でも道のりはきっと一人一人違うはず。とはいえ、自由=好き勝手仕事していいという意味ではありません。従業員としての在り方を理解した上で、自由に楽しく仕事してもらえたら嬉しいですね。人数が増えた今は、その重要性をさらに実感しています。

(樋口)感覚ではなく、きちんと言語化することが大切なんですね。「岡崎ぎゃざ」の場合はチーム内だけでなく、通ってくれている生徒や保護者の方との間にもルールを設けています。「自分のために創作活動をしよう」とか「自分の表現をやりたいならひとの表現も認めよう」とか、最低限のルールです。やっぱり人間同士なので意見が食い違うこともあるんですが、そのときは都度「どう思う?」と対話を繰り返して。
僕、よくチームを“木”に例えるんですが、軸という大きな幹があって、枝分かれするように自由があり、最後は大きな木になるといいなって思っているんです。大きな木になるためにも、幹は太くなきゃいけないなって。

(藤井)確かにそのとおりですね。今、表現や創作という言葉が出ましたが、僕は樋口さんがつくる服に興味があります。今後、自身のブランドを立ち上げる予定はありますか?

(樋口)う〜ん、今はないですね。やっぱりデザイナーってすごいんですよ。次から次へとアイデアが出てきて、創作せずにはいられない。いわばアーティストなんです。デザイナーが創作に集中できるよう、僕は伝え役に徹したいなと。

(藤井)「コム デ ギャルソン」の川久保さんも表にはほとんど出てこないですよね。インタビューもあまり受けないし、話している映像なんてほとんど見たことないですよ。だけど、ギャルソンから影響を受けている人はたくさんいて、川久保さんが生み出したものにみんなが惹きつけられている。そう考えると、樋口さんのようにブランドの思想を伝える存在が大切なんだと思います。

(樋口)ありがとうございます。これからも変わらず、この場所で自分がいいと思う服を届けていきたいです。確か、藤井さんも服がお好きでしたよね。ぜひお店を見ていってください!

■ Information

abundantism
愛知県岡崎市籠田町13
HP:https://abundantism.com/
Instagram:https://www.instagram.com/abundantism_shop/

こども造形教室 岡崎ぎゃざ
愛知県岡崎市市能見通1-57
HP:https://okagyaza.jimdosite.com/
Instagram:https://www.instagram.com/okagyaza/?hl=ja


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