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血の呪縛、心の呪縛

嫌いなタイプの会話がある。

「親戚の○○おばちゃんだよー、まーくん覚えてるかなぁ?」
「ちょっとー、まだおばちゃんはやめてよー。まーくん小さかったから覚えてないかなー?」
(母の後ろに隠れるまーくん)
「ほらぁ、まーくん恥ずかしいって」
「そろそろお昼食べに行くわよー」
「やったー!アイス食べていい?」
「ちゃんとご飯食べたらね」

……

この前、うっかり偶然、駅前でこんなやり取りを目の当たりにして、反吐がでそうになった。隠せない、嫌悪感。

……

年を重ねれば重ねるほど、家族親戚という血の縛りに息苦しさを感じていく。

自分が家族を持ちたいとも思わない。友人知人が自分の家庭を築いて、ごく一般的に家族の歩みや記録を残していく様子は、微笑ましいとも羨ましいともなんとも感じず、強いて言えば、目の前を通り過ぎる猩猩蠅のように目障り。私には「鬱陶しい邪魔なもの」としか感じられないようだ。だから当然、FBからは距離を置いている。

また、家族を持ってないことを「いい年して」「大人なのに」「人として不完全」という思考を持っている人の感覚が分からない。先日、同世代で独身の女性の「友人だと思っていた人」と食事をしていたとき、その言葉を言われてハッキリ不快に思い、その考えはおかしいと伝えた上で、そこからとにかく帰りたくてしょうがなくて理由をつけて帰る、ということがあった。
その人と今後、会いたいと思えるか自信がない。

なぜ結婚する必要があるのか、結婚しないと人として認められないのか。
なぜ子供を持って育てなくてはいけないのか、いい年して子供を育てた経験がないと大人として認められないのか。

それは誰が決めたのか?誰が判断するのか?

お前のことじゃないんだから、ほっとけよ。なんで人の生き方に口出しする権利があるんだ?

お前の幸せはお前で勝手にやってろよ。人に押し付けないでくれ。

なんとなく、世間、常識、普通、みたいな範囲にある「みんなそう思っているから」「みんなそうしているから」なんてもので線引きされてるんだろうなぁなんて思う。

昔から、子供を育てる自分とか、親になることに、憧れも実感も希望も持てたことがない。自分の思春期の頃が傷だらけだからだと思う。実際に体に付いた傷ではなくて、心に強い負荷を負い、盛大に傷が出来た。
不思議なもので、あの頃と似たようなことが起きそうになると、無意識に猛烈な拒絶の気持ちが生まれる。それは大体、「ちょっとした予告をされて、その予告にそぐわない重い内容が隠れてそうなとき」にその気持ちになる。ちょっとカッコいい言い方をするなら、トラウマというのでしょうかね。散々につけられた傷は治ることなくずっと心の中でジュクジュクとしている。

例えば、部下に「すみません、あとで相談があるんです…」と言われたとする。これが予告にあたる部分。身に覚えがなくとも、大した内容でなくても、問題はその「言い方」「話の進め方」なので、その後に何か最悪が隠れてそうな気配を感じて猛烈に嫌になる。
最悪、というのは、身に覚えがないのに自分が否定されるような物言いの気配。
そんな言い方をされるくらいなら、予告はせずにストレートに言えばいい。「○○のことで相談があります。」と言ってくれたら怖くない。

実際はそんな風なことを言われることはほぼ無いし、問題は私の心にあるので相手は悪くない。悪くないが私は耐えられない。

あの頃は、そんな言われ方で、何度もビルの縁から蹴落とされるような気持ちを味わった。そんな日の夜は、長かった。怖かった。寝て起きたら忘れられているかどうか、起きたら世界が一変してないか、寝ることも起きていることも怖かった。自分の部屋に踏み入れられるのが怖かった。耳を澄ませて、足音に緊張しながら意識を失うように眠る。そんな夜が何度もあった。あぁ本当に辛かったなあと今になってやっと冷静に思える。どうして、血の縛りだけでここに居てそんなことを言われなくてはいけないのか、私が悪者なのか…そんな気持ちになるなら家族なんて無い方がいい。1人のほうがいい。心が縛られていた。

それが根底にあると思う。

人の辛さとか経験したこととか、当事者の受け取り方が全てだから、比べられるものではない。私に心無いことや、悪意が無くとも不愉快なことを言ってしまう相手にもまた、深い深い傷があるのかもしれない。

だが、だからと言って人の心にズカズカと足を踏み入れて良いわけないし、何も知らないのに、家族の良さやら子供の良さやら、滔々と語るのは勘弁してほしい。あなたの幸せが私の幸せとイコールではない。

息苦しさが増えたのはきっと、年数を経て、幸せな家庭を築いて、その幸せがテンプレだと思って、そうじゃない人の心に土足で立ち入ってくる人が多くなったからなのだろう。

遠ざかる、という手段を選んだ私のことは放っといていいじゃない。関わらなければいいじゃない。

生きにくいことを生きにくいといえる、生きやすい世の中だといいんだけどなぁ。うまく生きてる風は結構大変だ。

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